『入れ食いメイドスペシャル』
「てめえら、バーベキューは戦いですよ!! はらぺこ天使が戻ってくる前に準備を終わらせておくですよ!!」
「「仰せのままに!! 我らがバーベキューマスター!!」」
エーテルノの掛け声で、バーベキューの準備が始まった。
バーベキューの道具は、エーテルノが重力操作で作り出した特別空間に保管してあり、10分くらいでセッティングが終わる。
ビーチから冒険者協会のテントまでは片道20分。飲み物などが売っている店に行くなら10分くらい追加されるだろう。
3人に与えられた時間は40分。4人揃ってすぐにバーベキューが始められるよう、スピーディに行わなければならない。
「アメル!! コンロに炭をぶちこむですよ!! サツキはクラーケンの解体ですよ!!」
「「任されました!! 我らがバーベキューマスター!!」」
指揮を執るのはエーテルノ。頭にはねじり鉢巻き。その姿は数多の戦場を潜り抜けてきた戦士の風格。
「おりゃあああああっ!!!!」
喚声を上げながら炭をコンロに入れていくアメルを見て、表情を変えるエーテルノ。
「アメル!! 炭はたくさん入れればいいってもんじゃねえですよ!! 空気の通り道を作るのがコツですよ!!」
「申し訳ありません!! 我らがバーベキューマスター!!」
「ぶちこんだら、火をつけるですよ!! 火付けの魔道具と着火剤がリュックに入っているですよ!! 火を付けたら、風を送って火を広げるですよ!!」
「任されました!! 我らがバーベキューマスター!!」
リュックから素早く火付けの魔道具を取り出し、着火剤に点火する。
その後、火吹き棒で風を送り出す。
「サツキ!! 解体はどうですか!!」
「終わっております!!」
「さすがですよ!! クソ優秀ですよ!!」
「感謝の極み!!」
火起こし・クラーケンの解体が終わり、3人はタオルで汗を拭う。
火力が安定してきたので、コンロに炭を加えるエーテルノ。サツキは具材をトレイに乗せ、アメルは折り畳み式テーブルに食器を並べて準備完了である。
――掛かった時間は30分。
カレンの到着予定まで、残り10分くらいである。
「10分ですか、クラーケンの肉は火が通りにくいので今から焼けばちょうどいいですね。カレンが帰ってきたらすぐに食べられるですよ」
クラーケンの肉を、エーテルノがコンロに乗せる。
「ムンちゃんも呼んでいいかな。クラーケンのお肉を食べさせてあげたいし」
「もちろんですよ」
エーテルノに許可をもらうと、アメルは契約魔法を唱える。
紫色の魔法陣から現れる白銀の狼。天界の神獣であるシルバーウルフのムンちゃん。クラーケンの肉を見つけると、舌舐めずりをする。
「まだ食べちゃダメだよ。カレンが帰ってきてからだからねえ」
つまみぐいしようとしたムンちゃんを、優しく注意するアメル。
「10分って、何かしているとすぐなのに、何もしてねえとすっげえ長いですよね」
「暇なら釣りでもしませんか。ちょうどここに入れ食いメイドスペシャルがあるので貸してあげますよ。魚を釣って昼食の足しにしましょう」
「私の腕前を見せてやるですよ」
サツキに釣竿を借りると、エーテルノは海に向かって勢いよく投げる。
餌はクラーケンの肉片。ちゃぽんと水の音が鳴り、メイドの形をした可愛いウキが浮く。
「……」
数分経って――
耳に入ってくるのは波の音。
海面を見つめながら、眠そうに欠伸をするエーテルノ。
「食いつかねえですよ。この踊り食いメロンスムージー」
「入れ食いメイドスペシャルです。勝手に美味しそうな名前にしないでください」
「むにい……」
名前を間違えたエーテルノのほっぺたを、お餅のように引っ張るサツキ。
それを見て、大爆笑するアメル。
「あはは!! エーテルノちゃんほっぺたやわやわ!!」
「むにに……ひゃ、ひゃめるれすよ……むにょにょむいいぃぃぃぃぃぃ。ひゃめるもふぁらっへらいへはふへるでふよ……」
「私にはどうにもできないかな。私までやられそうだし」
「ひょ、ひょの……」
ふにょんふにょんと、ほっぺたを揉まれていると――
エーテルノの握っていた入れ食いメイドスペシャルが、ぴくっと反応した。
「エーテルノちゃん!!」
「それ見たことですか!! 私の入れ食いメイドスペシャルは最強です!!」
獲物が食いついたことで、テンションが上がるアメルとサツキ。
引きが強く、無理やり引き上げてしまえば釣竿が折れてしまいそうなくらい。釣り糸が切れるのを防ぐため、エーテルノは重力魔法を流し込んでから思いっきり引き上げる。
「おりゃあああああああああああああああっ!!!!」
エーテルノの叫び声と共に、海からバーベキューの食材が顔を見せる。
濃い紫色のリボンで束ねられた、肩まで届く紫色のツインテール。水に濡れた白いワンピースを着ており、頭部には黄金に輝く天輪。背中には3対6枚の白翼。
「「「……」」」
ずしゃあっと音を立て、バーベキューの食材が砂浜に叩きつけられる。
生死は不明。ぴくりとも動かない。
「え、えっと……? なんかどこかで見たことあるような輪っかと翼だよね……?」
「……」
生死を確認しようとしたアメルの腕を、エーテルノは無言で掴んでくる。
凄い速度で首を振り、何かを訴えている。
「あ、あの、だいじょう――」
「死にたくなかったら、そいつを起こすんじゃねえですよ」
声を掛けようとしたサツキの口を塞ぐと、エーテルノは耳元で囁く。
「どういうことですか、この方は熾天使ですよね。カレンの仲間ではないのですか」
「こいつはやべえ。天界で1番やべえやつですよ。2人とも、抜き足差し足でカレンを呼びに行くですよ」
怯えた表情のエーテルノを見て、サツキは質問する。
「貴方がそこまで怯えますか、この方は一体……?」
「カレイアに害を成す者は皆殺し。天界の初見殺し担当。超が付くほどのヤンデレ後輩。天界の序列6位――『天花』クレアですよ」
エーテルノの言葉を聞いて、サツキとアメルは苦笑を浮かべるのだった。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
なんかすっげえの釣れた!!
カレイアに害を成す者は皆殺し。天界の初見殺し担当。超が付くほどのヤンデレ後輩。天界の序列6位――『天花』クレア。これだけでヤバさが分かってしまいますね。
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