『泣くなら胸の中で』
「うん、やっぱり泳ぐときは水着だよね。みんな可愛いんだから、もっとファッションに気を使ったほうがいいよ」
私たちの水着姿を見て、アメルが笑みを浮かべる。
私は黒いフリルが付いている大人っぽい水着。サツキは赤いリボンの付いている白い水着。アメルは水色と白の縞模様の水着。エーテルノは紫色のワンピースタイプの水着。
「カレンの水着、大人っぽくてお似合いですよ」
「サツキこそ、清楚な感じでいいじゃん」
「私の水着はワンピースタイプです。てめえらみたいなえっちいやつじゃねえですよ」
私たちはファッションの知識が乏しいので、アメルに選んでもらった。
誰に見せるわけでもないし、サイズの合っている一番安い水着を買おうとしていたところ、鬼のような形相でアメルに怒られた。
「みんな着替えたことだし、さっそく海に入ろうか」
「その件で、1つ疑問があるのですが……カレンとエーテルノはクラーケンを海から引きずり出すとおっしゃっていましたが……ちなみに、その方法とは?」
軽く準備体操をしていると、サツキに質問された。
何を言うかと思えば。海から引きずり出すのだから、方法は1つしか無いだろうに。
「もちろん、力比べに決まっているじゃん」
「右に同じですよ」
「馬鹿じゃないんですか?」
自信満々に言う私とエーテルノを、真顔で罵倒してくるサツキ。
「馬鹿って……じゃあ、他にどんな方法があるの」
「これです」
私に問いかけられ――
サツキはリュックを漁ると、1本の釣竿を取り出した。
「それは?」
「私の相棒、入れ食いメイドスペシャルです。クラーケンの1本釣りは全釣り人の憧れです」
「「馬鹿じゃないの?」」
釣竿を構えるサツキを、真顔で罵倒する私とエーテルノ。
「馬鹿ではありません。2人は世界中の釣り人を敵に回しましたよ」
「いや、クラーケンは漁船を沈めるくらい大きいんだよ。そもそもこんなに小さい針に引っかからないし」
「それなら力比べもできないですよね」
サツキの反論に――
私とエーテルノは、きょとんとした表情を浮かべるのである。
「天輪と白翼を顕現させれば、クラーケンなんか指1本で投げ飛ばせるよ。この状態だと無理だけどね」
「重力魔法を使えば、指1本で投げ飛ばせるですよ」
「2人に常識が通じないことを忘れていました。私の負けです」
「「勝った」」
サツキに完全勝利した私とエーテルノは、満面の笑顔でハイタッチする。
「サツキちゃん、泣くなら私の胸を貸してあげるよ」
「いえ、メイドは泣きません」
「よしよし、サツキちゃんは偉いねえ」
「えへへ」
アメルの包容力に負けたのか、幼児退行するサツキ。
年齢は1歳差しかないが、アメルよりも20センチほど身長の高いサツキ。この絵面だと、大人が子供に甘えているようにしか見えない。
「さて、冗談はこれくらいにして……クラーケンを倒しに行くですよ。人がいないとはいえカレンが熾天使化するのはマズいです。そういうわけで、私が重力魔法でクラーケンを陸に打ち上げさせるですよ」
「えっ」
エーテルノに言われ、間抜けな声を出す私。
「海の中とはいえ、万が一のことがあるですよ。カレンはおとなしく待っておくですよ」
「えっ」
エーテルノは悪戯っぽく笑うと、1人で海に飛び込んでいった。
置き去りにされてポカンと口を開けたままの私を見て、満面の笑みを浮かべたサツキが近づいてくる。
――そして、勝ち誇ったような表情で言ってくるのである。
「カレン、泣くなら私の胸を貸してあげますよ」
「とどめを刺しに来たか」
「お返しです。やられたらやり返すのがメイドです。さて、エーテルノの魔力が上がりましたよ。戦闘の準備をしましょう」
エーテルノの魔力上昇を感じ――
私たちが戦闘態勢に入った瞬間、凄まじい水飛沫が立ち上がる。
海中から飛び出してきたのは、超巨大なクラーケン。うねうねとした触手。岩のようにゴツゴツとした肌。ぎょろりとした目で私たちを睨みつけてくる。
「カレン、お願いがあります」
クラーケンを焼き殺そうと私が右手を構えた瞬間、サツキに止められてしまう。
「サツキ、どうしたの」
「カレン、クラーケンの討伐は私にやらせていただけませんか。カレンとエーテルノに頼ってばかりでは私の存在価値が無くなってしまいます」
真剣な表情で、サツキが頼み込んでくる。
Aランクの依頼を受けるようになれば、クラーケンよりも危険な魔物と戦うことになる。私とエーテルノが戦ってしまえば、何の苦労もなく倒せるだろう。
――しかし、それではサツキの成長の機会を奪ってしまう。
10年という短い期間でラードニアと戦えるくらいまでサツキを育てなければならないのだ。強くなるには実戦経験あるのみ。
「わかった、サツキに任せるよ」
「その意気や良し!! その言葉を待っていたですよ!!」
海から出てきたエーテルノが、空中に浮かせていたクラーケンを地面に落とす。
自由の身となったクラーケンは、怒りの矛先を私たちに向けてくる。
「篤とご覧あれ。串刺しの御時間でございます」
クラーケンの咆哮が響き渡ると、サツキの戦いが始まるのだった。
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