『何をするにしても健康な身体があってこそ』
「ただいま~」
王都。
カラミティスネークの死体を持って、私たちは冒険者協会に帰ってきた。
「ひええっ!! 何事ですかああっ!!」
私たちが帰還して、最初に耳へ飛び込んできたのは悲鳴だった。
依頼掲示板の整理をしていたランが、何百枚もの依頼書の束を床にぶちまける。
「何事って、カラミティスネークを討伐してきたんだよ。これ、提出用の素材ね。床に下ろしてくれるかな、エーテルノ」
「分かったですよ」
重力魔法で浮かせていたカラミティスネークの死体を、床に下ろすエーテルノ。
カラミティスネークの死体。剣と槍で串刺しにされた痕。獣の爪に切り裂かれたような傷。空間ごと抉り取られたような穴。なんとも惨い姿である。カラミティスネークの死体が床に下ろされた瞬間、ぐちゃりという音が響き渡った。
「「「……」」」
賑やかだった建物内が、私たちの登場で静まり返る。
「ラン、依頼完了したよ」
「は、はい。お、おめでとうございます。御無事でなによりです」
「ランがアドバイスをくれたからだよ。ランのおかげで全員無事だったんだよ」
微笑みかける私。
ランのおかげで、毒をくらうこともなく討伐できたのである。
エーテルノの重力魔法で動きを止め、私とサツキとアメルとムンちゃんで総攻撃。カラミティスネークは1歩も動けずに絶命した。
「……」
カラミティスネークの死体を、不思議そうな表情で見つめるラン。
「何か問題でもあった?」
「いえ、問題はありませんが……どんなことをしたら、Bランク最高難易度の魔物であるカラミティスネークを2日で討伐できるのかと。霊峰ファウゲールは猛吹雪のはず。見つけるだけでも1週間は掛かるのでは」
「優秀な案内人がいてね」
「えっへん」
ドヤ顔を浮かべるエーテルノ。
エーテルノがいなかったら、カラミティスネークを見つけることはできなかった。
感謝しかないね。
「これで、私たちはAランク昇級試験を受けられるんだよね」
「はい、カラミティスネークを討伐できましたからね。カレンさん、アメルさん、サツキさんの3人はAランク昇級試験の受験資格が与えられます」
「やったー!!」
喜びを抑えきれないのか、アメルが私に抱き着いてくる。
「仲間外れはいけませんよ。私も抱き着きます」
「私も混ぜるですよ」
アメルに続いて、サツキとエーテルノ。
3人に抱き着かれてしまえば立ったままでいることは難しく、私は押し倒されてしまうのだった。
◇
「「「「いただきます!!」」」」
依頼を終えた私たちは、王城の食堂で夕飯を食べていた。
今日の夕飯はビーフシチューである。時間をかけてコトコトと煮込まれており、ひとくちサイズに切られたお肉はスプーンでほぐれるくらい柔らかくなっている。野菜にも味が染み込んでおり、食欲が止まらない。
「おまえら、すっげえ食欲だな」
おかわりしまくっている私たちを見て、パンをかじりながらララが苦笑する。
私は7杯目。アメルは6杯目。サツキは9杯目。エーテルノは5杯目。山登りでエネルギーを使ったので、たくさんご飯を食べなければならないのである。
「ララは1杯だけで足りるの? 体調悪い?」
ガラスのコップに水を注ぎながら、私は質問する。
食べ盛りの若者が、ビーフシチューを1杯しか食べないのはよくない。
「カレンちゃん、ララちゃんは今ダイエット中なんだよ。魔法の勉強ばっかりして運動してなかったから太っちゃってるんだ」
「キルルてめえ!!」
キルルの言葉に、ララが怒りを見せる。
キルルもデリカシーが足りないけど、言っていることは正しい。
「キルルの言っていることは正しいよ。何をするにしても健康な身体があってこそだよ。健康状態は魔法に大きく関係してくるんだ」
「知らなかったぜ」
私に説明され――
ララが興味深そうにしていると、ビーフシチューを食べ終えたフローラが話しかけてくる。
「カレンたちは、明日になったら商業都市へ帰られるのですか」
「うん、お土産を買ったら帰るつもりだよ」
「そうですか、もっと冒険の話などを聞かせてほしかったのですが……王女という立場上、自由気ままに冒険したりできないので」
寂しそうな表情で、フローラが見つめてくる。
「一生の別れみたいに言わないでよ。王都と商業都市はそこまで離れてないんだから。また機会があったら遊びに来るよ」
「約束ですからね」
再会の約束をして、王城での夕飯が終わるのだった。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
エーテルノの重力魔法、めちゃくちゃ便利ですね。
ぐっちゃぐちゃになったカラミティスネークの死体を持ち込まれたら、誰でもびっくりしますよね。そういうところだよ色彩の集い。
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