『腹が減っては戦ができぬ』
「あそこが怪しいですね」
視界良好となった、霊峰ファウゲール。
3時間くらい山道を歩いていると、カラミティスネークが隠れるにはもってこいの洞窟を発見した。
「いかにもって感じだよね。私がもしカラミティスネークだったら、間違いなくあの洞窟に隠れちゃうよ。はあ、私もうくたくただよ」
手ごろな大きさの岩に腰掛けると、水筒に入れてきた熱いお茶を飲みだすアメル。
「私も疲れました。メイドは山登りが苦手なのです。洞窟は目の前ですし、少しだけ休憩しませんか」
リュックを下ろし、地面に座り込むサツキ。
霊峰ファウゲールは標高が高い。平地に比べて空気が薄いので、身体の中に取り込む酸素の量が低下する。無理をすれば、頭痛や吐き気などの症状が出てくると図書館の医学本に書いてあった。
「うん、休もうか。お弁当もまだ食べてなかったよね」
「あはは、おなかぺこぺこなのはそのせいか。頭が回っていなくてお弁当の存在を忘れていたよ」
お腹を摩りながら、アメルが笑みを浮かべる。
アメルがお弁当の存在を忘れるなんて、相当疲れているのだろう。
「私が丹精を込めて作ったスペシャルランチですよ。王城の厨房を借りました。体力回復は間違いありませんよ」
サツキは地面に座ると、リュックからお弁当箱を取り出した。
高級感のある3段弁当箱。ふたを開けると、美味しそうな匂いが漂ってくる。
「唐揚げ、卵焼き、ハンバーグ、トンカツ、エビフライ、ミートボール、ポテトサラダもあるじゃねえですか。1・2段目がおかずってことは、3段目はやっぱりあれですか」
「はい、おにぎりです」
「そうこなくっちゃですよ!!」
お弁当の中身を見て、エーテルノが笑顔を浮かべる。
「サツキの料理は3ツ星レストラン超えだからね。これを食べたら普通の料理には戻れなくなるよ、エーテルノ」
「カレンのお墨付きとは、期待できそうですよ」
「さあ、食べましょうか。皆さま、手を合わせてください」
「「「「いただきます!!」」」」
サツキの号令で、私たちはお弁当に手を伸ばす。
「なんですかこれ!! うますぎるですよ!!」
唐揚げをぱくり。
飲み込んだ瞬間、エーテルノが声を上げる。
「ハンバーグもどうぞ」
「ハンバーグも美味すぎるですよ!! 王城の食事とはレベルが違いすぎるですよ!! 神の領域といっていいほどの味付けですよ!!」
「神の領域なんて、言いすぎですよ」
「お世辞じゃねえですよ。574年生きてきたですが、こんなにうめえ料理は初めてですよ。カレンが人間界を滅ぼさない理由が分かったですよ」
「理由の1つではあるね」
「「えっ」」」
全員の視線が、私に集まってくる。
「……ウソだよ」
「いや、ウソじゃねえですよこれ。その間はガチですよ」
「あはは」
「あははじゃねえですよ。サツキ、殺されても死ぬんじゃねえですよ。熾天使カレイアをコントロールできるのはてめえしかいねえですよ」
「カレンの監視任務、任されました」
エーテルノに言われ――
サツキが微笑を浮かべた時、洞窟の中から魔物の気配を感じた。
「どうやら、お弁当の匂いに釣られてきたようですね」
「あっちから来てくれるなんて、探す手間が省けたね。ささっと片付けちゃおうか」
洞窟から出てきたのは、緑色の鱗を纏いし三頭三首の蛇――カラミティスネークである。
私はおにぎりを片手に立ち上がり、焼き殺そうと右手を構える。
「カレン、待ってください。カラミティスネークは私たちに任せてください。カレンの『銀ノ焔』では塵1つ残りませんから」
「え~」
サツキに止められ、私は頬を膨らませる。
「おにぎりでも食べておくですよ」
「私も戦いたいのに……そうだ、どうせもう私の生存は天界にバレているわけだし、久しぶりにアレを使おうかな」
「「「アレ?」」」
3人が首を傾げた時、私は天に向かって右手を伸ばす。
「聖槍アルジェーレ」
私が告げた瞬間――
天が割れ、霊峰ファウゲールの遥か上空に超巨大な槍が降臨した。
銀と青の2色、二重螺旋の槍。
「なにあれ」
「私の相棒――聖槍アルジェーレだよ」
「あれをどうするつもりなの」
「カラミティスネークにごっつんこさせようかなって」
「うん、可愛く言ってもダメだね。霊峰ファウゲールごと消し飛んじゃうね」
微笑むアメル。
ただし、目は笑っていない。
「大丈夫だよ、サイズは変えられるから」
私が指を鳴らすと、超巨大サイズの槍が一般的なサイズに変わった。
「カレン、聖槍アルジェーレって言いましたか」
「うん」
サツキに質問され、私は頷く。
「私の記憶が正しければ……熾天使カレイア伝説には世界の終わりを告げる聖槍と書かれていましたが」
「魔力を流し込みさえしなければ、ちょっと頑丈なだけで普通の槍とあんまり変わらないから」
「もし流し込めば」
「聖槍アルジェーレには3つの能力があってね。私の意思で自由に使い分けられるんだよ。1つ目は流し込む魔力量に応じて大きさが変えられて――」
「やっぱりいいです。カレン、なにがあっても魔力は流し込まないでくださいね。さあ、寒いのでぱぱっと片付けて帰りましょう」
「「「了解!!」」」
サツキの号令で、私たちは戦闘態勢に入るのだった。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
サツキのお弁当食べたい。
絶対に美味しいやつじゃないですか。
なんか世界の終わりを告げる槍とか出てきましたけど、そんなの気にしない。
カレイアだけでなくエーテルノの胃袋すらも握ってしまうとは、サツキが1番やべえやつかもしれないですね。
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