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『はらぺこちょろてんし』

「そういうわけで、私は自由気ままに冒険者生活を送っているだけなんだよ」


 私が天界を追い出されたことから今に至るまで――

 アメルとサツキに協力してもらって事情を説明すると、エーテルノは深く溜め息をついた。


「ここに証人がいなかったら、私は絶対に信じなかったですよ。熾天使カレイアは冒険者になってやがりますし、絶対零度のサレヴィアは冒険者協会で働いてやがりますし」

「そして、港町アクリナの一件だよね」

「てめえのせいで、アンゲリナ教会がやべえんですよ。熾天使カレイア降臨の地となった港町アクリナに教会本部を移すとか言ってやがりますし、聖女ルルセリカとエルシアが現在進行形でバチバチになってやがりますし。てめえのチート魔法だったら、ラードニアは仕方ねえとしてティアレなら1秒で殺せるじゃねえですか。なんで熾天使化しやがったんですか」

「いろいろとあってね……」


 その場の流れというか、あそこは正体を明かさなければならなかった。あのタイミングで熾天使化しなかったら、今の『色彩の集い』は存在していないだろう。


「しっかしまあ、てめえのせいで3界も荒れまくってるじゃねえですか。でこすけとヤンデレは生きてんですか?」

「アリアとクレアのこと?」

「でこすけは心配いらねえだろうですが……ヤンデレだったら暴走してハレスを殺しにいきそうじゃねえですか」


 エーテルノの言うとおり、クレアだったらやりかねない。

 クレアはなんというか、狂気を感じるくらい私への好意が凄まじい。

 私がアズリオンとの戦闘で傷を負った時は1人で魔界に攻め込もうとしたり、ソフィエルが私に嫌味を言ってきた時は殺しにかかろうとしていた。


「不安になってきた」

「まあ、でこすけがなんとかするんじゃねえですか。アホそうな顔してますが、やるときはやるやつじゃねえですか。マジでやばくなったらヤンデレを引きずって逃げるですよ」

「そうだといいけど」


 なんだかんだいって、クレアの暴走を止めていたのはアリアである。喧嘩ばっかりしていたけど、2人が組んだ時は敵なしだった。


「あの、お話し中すいませんが」


 会話の途中で、サツキが挙手する。


「どうしたですか」

「ずっと気になっていたのですが……エーテルノ様、250年以上も生きていらっしゃるのにどうして子供のままなのですか……いや、どうして生きているのですか。もしかして、人間ではなかったりするのですか」

「いや、私は人間ですよ。ただ、14歳の時にフェニックスの血を飲んで死ねない身体にはなってやがりますがね」

「えっ」


 エーテルノの発言に、驚きを隠せないサツキ。


「天界に来た時、ルフィアたちが殺しまくっても死ななかったもんね。頭を潰しても心臓を抉り取っても生きてるんだもん」

「死なねえけど、痛みは感じたですよ。生きたまま身体を引き裂かれる痛みを想像したことはあるですか」

「このままじゃあ埒が明かないってことで、私が呼ばれたんだよね。私の『銀ノ焔ぎんのほむら』なら不老不死なんて関係ないから」

「てめえが現れた瞬間、本能的にやべえって思ったですよ。全身から変な汗が吹き出してきやがりますし」

「エーテルノ様、よく生き残れましたね……」


 思い出話を聞いて、苦笑するサツキ。


「私が殺されずに済んだのは、アレのおかげだったですよね」

「あれは笑ったよホント。そうだ、ここで問題だよサツキ、私がとどめを刺そうとした時、エーテルノはなんて言ったでしょうか」

「えっと、なんでもしますから見逃してくださいとか」

「お弁当に持ってきた手作りサンドイッチをあげるから許してください。焼き殺される直前にリュックから取り出しながら言ってきたんだよ」

「……」


 真顔になるサツキ。


「ほんと、あのサンドイッチは美味しかったな……久しぶりに食べたいよ。あんなに美味しいサンドイッチ作れる人を殺しちゃうのはもったいないよね」

「食べたんですか。追いつめられた敵が出したサンドイッチを食べたんですか」

「お昼ごはん食べてなかったからね。サンドイッチに満足した私はエーテルノを客人として招いたんだ」

「殺戮天使から、はらぺこちょろてんしに改名したほうがいいんじゃないですか」


 呆れた表情を浮かべるサツキ。


「カレイアの客人になった瞬間、天使兵たちの態度が一変しやがるんですよ。ぺこぺこ頭下げてきやがりますし。天界入りする前にサンドイッチ食べなくてよかったですよ」

「念のために言っておくけど、あそこでサンドイッチを出していなかったら焼き殺していたよ」

「「あっはっは!!」」


 爆笑する私とエーテルノに対し――

 サツキは溜め息を吐くと、水飛沫が上がらないようにゆっくりと立ち上がる。


「ツッコミに疲れたので、私は部屋に戻らせていただきます。それにしても、珍しくアメルがおとなしいですね」

「確かに、さっきまであんなに騒いでいたのにね」


 気になったので、視線を送ると――

 そこには顔を真っ赤にしたアメルがぶくぶくと沈みかけていた。


「アメルが沈んでる~!!」

「早く湯船から出しましょう!! 湯あたりを舐めてはいけません!!」

「私の重力魔法が活躍するですね!! カレイアは服を運ぶです!! サツキはフローラを呼んでくるですよ!! あいつは回復魔導士ですから!!」

 

 長風呂でのぼせてしまったアメルを、私たちは大急ぎで運び出すのだった。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!


戦闘には負けないが、サンドイッチには負けちゃうはらぺこちょろてんし。

不老不死の身体を持ちながら、カレイアの半分くらいの魔力を持つ重力魔法使いとか、さてはエーテルノもしかしてやばいやつか。 

カレイアがいなかったら、天界ヤバかったかもしれませんね。


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これからもよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 二人どもいい感じにズレてますね
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