『お風呂に入ったら身体洗いっこだよね』
「「やりすぎました」」
おとなしくなったディスカとキルルは、女王陛下とフローラの前に正座をしていた。
2人の魔力圧により王城中の窓ガラスが割れてしまっており、玉座の間に衛兵が押しかけてくるほどの大騒ぎ。
「城内での戦闘は禁止。私は言いましたよね」
「「はい」」
「王女である私の命令を拒否するだけでは飽き足らず、王城に働く全ての者たち、カレンたちにも迷惑をかけて」
「「はい」」
「エーテルノ不在の今、カレンがいなかったらどうなっていたんですかね。2人だけで傷つけあうのならいいんですよ。2人だけなら。しかし、今回は見過ごせません。王城全体を巻き込んだ大喧嘩。怪我人だけならまだしも死人が出たらどうするんですかってことですよ。その歳でやっていい事と悪い事の区別すらできないんですか」
「「すいません」」
少し前までにっこりとしていたフローラが厳しい表情。
ボロクソに言われ、落ち込むキルルとディスカ。私から受けた打撃が痛むのだろう、2人とも腹部を摩っている。手加減したはずなんだけど、そんなに痛かったのかな。内臓とかやられてないよね。
「フローレス、2人とも反省しているのですから、そろそろ許してあげてはどうですか」
説教が続いて――
30分くらい経った時、ずっと黙っていた女王陛下が口を開く。
「お母様はもう少し厳しく――」
「フローレス、少し勘違いしているようなので言わせてもらいますが、貴方はキルルとディスカに説教できる立場ではありませんよ。2人の喧嘩は、貴方が式典を台無しにさえしなければ起きなかったかもしれないのですから」
「うっ」
女王陛下の言うとおり、フローラが四聖将たちを自由に動かしさえしなければ大喧嘩は起こらなかっただろう。何も言い返せないのか、黙り込むフローラ。
「ディスカ、キルル、これからは気を付けてくださいね。喧嘩をするときは他人の迷惑にならない場所でしてください」
「「申し訳ありませんでした」」
「よろしい」
キルルとディスカの謝罪で、この一件は丸く収まるのだった。
◇
式典が終わり――
今日泊まることになる客室に荷物を置くと、私たちは王城の大浴場に案内された。
更衣室で服を脱ぎ、あらかじめ用意されていたタオルを握ると、私たちは大浴場の扉を開ける。
「すごーい!! ひろーい!!」
全裸のアメルが、タオルを振り回しながらぴょんぴょんと跳ね回る。
水獣くらいなら飼えるであろう、見渡すかぎりの大浴場。ギルドハウスにはシャワールームしか無いので、アメルのテンションは爆上がりである。
「アメル、あんまり跳ね回ると滑っちゃうよ」
「そうはいってもねえ、こんなに広いお風呂を目の前にしたらテンションを抑えきれないよ!! 今すぐ湯船に入りたい!! カレン、サツキちゃん、3人で身体洗いっこしよううあああああああああああああああっ!!」
床に落ちていた石鹸で足を滑らせ、尻餅をつくアメル。
お尻が打ち付けられるバチンという音。大浴場に響き渡る絶叫がその痛みを教えてくれる。
「ほら、言わんこっちゃない」
「頭は打たなかったようですね。お尻が赤くなっているだけなので心配ありませんね」
「ぐすん、なんでこんなところに石鹸があるの……? お城のメイドさんたちが掃除してるんじゃないの……?」
アメルの言うとおり、客人が来るとなればフローラが掃除をさせているはず。
そうなると、この大浴場には――
「なんですかもう、風呂場でわーわーとうるせえですよ」
湯気ではっきりとは見えないが、少女らしき人影が1つ。
「ごめん、うちのアメルがはしゃいじゃって」
「小さい子の手は握っとかねえと危ねえですよ。予測できねえ行動をするですから」
「気を付けるよ」
人影に向かって軽く頭を下げると、私たちは身体を洗いにいく。
「むふふ、1度でいいから3人で洗いっこしてみたかったんだよね。サツキちゃんの身体は私が洗ってあげるねえ」
「じゃあ、私はカレンを洗います」
「私はアメルだね」
タオルを泡立たせ、3人で洗いっこする。
傷1つ無いアメルの背中。真っ白ですべすべで白いキャンバスのようである。
「ひゃあん!!」
「あは、くすぐったかった?」
「するるっと指でなぞらないでよ!! くすぐったくて変な声出ちゃったじゃん!! サツキちゃん協力プレイだよ!! カレンをこちょこちょしちゃおう!!」
「お任せあれ」
手をわきわきさせながら、アメルとサツキが襲い掛かってきた。
私は成す術なく押し倒され、抵抗できなくなる。
「あっ、あんっ……んんっ、んっ……んはっ」
「ほらほら、我慢しないで笑っちゃえ~!! こちょこちょこちょお~!!」
「必笑、サツキスベシャルです」
「待って、サツキさすがにそれはダメだって、あははははははははっ!!!!」
サツキが繰り出してきた異次元レベルのくすぐりに、私は我慢できずに爆笑してしまう。
大浴場に響き渡る笑い声。
「てめえら!! 王城でえっちなことするんじゃねえですよ!!」
先客の少女が、湯船から出てくる。
神秘的な虹色の目。グラデーションの掛かった虹色セミロングの少女。前髪は綺麗に切り揃えてあり、私と同じくらいの体型である。
「たすけて」
「すっげえことになってんじゃねえですか」
涙と涎でぐちゃぐちゃになった私を見て、虹色髪の少女が動きを止める。
「貴方も混ざりますか」
「楽しいよ、強くてかっこいいカレンをめちゃくちゃにするの」
「鬼ですかてめえら……ほら、手を貸してやるですよ、立てるですか」
「ありがと……」
虹色髪の少女に手を貸してもらい、私はなんとか立つことができた。
「私はエーテルノっていうですよ。てめえはなんていうですか」
「私はカレン。ドSクソ鬼畜な2人から助けてくれてありがとう、エーテルノって呼んでいいかな」
「じゃあ、私もカレンって呼ばせてもらうですよ……あれ、てめえどこかで私と出会ったことあるですか。その銀髪どこかで」
「いや、初対面のはずだけど……あれ、その喋り方どこかで」
しばらく見つめ合う、私とエーテルノ。
虹色髪ぱっつんで、その丁寧なのか雑なのか分からない喋り方。どこかで出会ったような気がするんだけど――
「「あっ」」
見つめ合うこと10秒。
私とエーテルノの声が、大浴場に響き渡る。
「熾天使カレイアアァァァァァァァァァァァァ!?」
「天界に喧嘩を売りに来て私にこてんぱんにされたやつだあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ようやく思い出した。
250年前、天界に喧嘩を売りに来た少女にそっくりなのである。いや、そっくりというか本人じゃないかこれ。私のことをカレイアって言ったし。
「ど、どどどどど、どうしてここにカレイアがああぁっ!? わわわ、わかったですよ、人間界を滅ぼしに来やがったんですね!?」
「いや、そんなことしない――」
「そうはさせねえですよ――『重力弾』ですよ!!」
「落ち着け!! そんなやばいもんこんな場所で撃ってくるな!!」
エーテルノの撃ち出してきた重力の塊を、私は『天銀ノ裁秤』で消滅させる。
ボールくらいの大きさをしている重力の塊。それに触れてしまえばごっそりと身体が削り取られてしまう。大浴場でそんな恐ろしい魔法を撃ってくるとかやばいでしょう。
「魔法が使えねえです!! これじゃあ、カレイアと戦えねえです!!」
「どうせ戦っても勝てないんだから、湯船にでも浸かりながら話し合おうよ。ここをどこだと思ってんのさ」
焦り出すエーテルノに、私は軽くデコピンするのだった。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。
更新が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。更新速度は遅いですが、牧田のプライドにかけて絶対に完結させますので、どうかご安心ください。
お風呂回ですよ!! お風呂回!!
女の子同士のきゃっきゃうふふは世界を救いますよね!! 大浴場の壁になりたい!!
最後の最後にまさかのエーテルノ登場!!
なんと、正体は250年前に天界へ喧嘩を売りに来た命知らずでした!!
物語が動いてきましたよ!!
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これからもよろしくお願いします!!




