『冒険者登録』
受付に戻って――
リンに合格印の押された書類を渡すと、私達の冒険者登録が始まった。
「それでは、冒険者登録を始めましょうか」
リンは書類に目を通すと、鍵付きの引き出しから薄い金属板を取り出した。
金属板がカウンターに置かれると、アメルが反応する。
「冒険者カードだ!!」
「正解です。アメルさんの言うとおり、これは冒険者カードです。これから貴方たちの身分証になります。手に取られて、魔力を流し込んでください」
リンに促され――
冒険者カードに魔力を流し込んでみると、私の名前が刻まれた。熾天使カレイアではなく、冒険者カレンとして、世界に認められたのである。
「やった……!!」
「あは、カレン嬉しそうだね」
「アメルだって、嬉しさで口元が緩んじゃってるよ?」
「むふふ……」
喜びを隠せない私とアメルを見て、リンは優しく微笑むと、カウンターの引き出しから書類を取り出して、冒険者についての説明を開始した。
「それでは、冒険者について説明しますね。冒険者とは、人類に害を成す魔物の討伐を請け負う人のことです。それ以外にも危険地帯にある植物の採集。未開拓地域の探索。重要人物の護衛依頼など、数多くの依頼を行ったりします」
「ほええ、何でもするんだね……なんだかわくわくしてきたよ。カレンは?」
「うん、凄く楽しみだよ」
気分が高揚しているのか、アメルの頭頂部にある髪の毛がぴょこぴょこと動いている。
「続いて、依頼書について説明するのですが……こちらを見てください。とある依頼書のサンプルです」
リンが、1枚の依頼書を取りだした。
依頼書には『キックラビットの討伐』と書かれている。
「こちらは駆け出し冒険者向けの依頼となっております。右下に『E』と書かれていますね? これは依頼の難易度を表しています。依頼の難易度は『E』『D』『C』『B』『A』『S』の6段階に分けられています。報酬金は少ないですが、駆け出しの冒険者であるアメルさんとカレンさんはEランクから始めていくことを推奨します。慣れてきたらDランクを受け、Dランクを安定してクリアできるようになったら……えっと、これはまだ説明しなくてもいいですね。その時が来たら、職員の方から言うと思います」
説明を終えたリンが依頼書を折り畳むと、アメルが口を開いた。
「気になったんだけど、Sランクの依頼ってどんな感じなの?」
「見たいですか?」
「見たい!!」
「分かりました。それじゃあ、少しだけ待ってくださいね。掲示板から取ってきますから」
リンは受付から出ると、依頼掲示板に歩いていく。そして、あからさまに危険そうな黒色の依頼書を剥がすと、受付に戻ってきた。
「これは最高難易度――Sランクの依頼書です。依頼内容は、天空塔カエルダに生息しているライトニング・ユニコーンの討伐。報酬金は5000万カレイアになっています」
依頼の説明を聞いた瞬間、私は盛大に吹き出してしまった。
「どうかしました?」
首を傾げるリンに続いて、アメルがニヤニヤと笑いながら訊いてくる。
「ははーん? あまりにも報酬金が多かったから、びっくりしたんだね?」
「そうそう、信じられない額の報酬金に驚いてね……」
「あはは、カレンは可愛いねえ」
クスクスと笑うアメル。
建前上はそういうことにしておいたが、私が驚いた理由はそこじゃない。私が驚いたのは、通貨の単位である。
なんで私の名前が使われているんだよ。お金を使う時、恥ずかしくて堕天しちゃうよ。誰が決めたんだよ。
◇
冒険者登録を済ませると、私とアメルは依頼掲示板に行き、さっそく初めての依頼をどれにしようか迷っていた。
「私とカレンの最初の依頼、どれにしようか?」
アメルが訊いてくる。
熾天使である私の実力ならSランクの依頼を受けても問題ないが、現在の身分は駆け出しの冒険者。冒険者になってすぐ最高難易度であるSランク依頼などを受けたりしたら、周りからおかしい奴だと思われてしまい、今後の冒険者活動に支障をきたしてしまう。ここはおとなしく身分相応の依頼を受けるべきだろう。
「これでいいんじゃない?」
私は掲示板の左下に貼られている依頼書を指差す。
「どれどれ、商業都市から少し離れた場所にある森に生えている『マンイートフラワー』の討伐? 難易度はEランクで、報酬は6000カレイア。うん、難易度も高くないしこれにしようか!」
アメルは笑顔で頷くと、掲示板から依頼書を剥がして受付に持っていった。
通貨の単位、お願いだから変えてくれないかな。
自分の名前が通貨の単位に使われるって、どんな気持ちなんだろう。
最初の犠牲者はマンイートフラワーさんですね。
ご愁傷様です。
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