『路地裏の少女たち』
「天秤が左に傾くと、全ての魔法が使えなくなる……!?」
説明が終わると――
理解不能といった表情で、私を見つめてくるフローラ。
「うん、そのせいで王都中の魔道具が機能停止したり、スナイパーの魔法が使えなくなったんだ」
「到底信じられません……が、事実なんですよね。実際に目の前で起こりましたし」
「念のためにもっかいしてみようか。サツキ、私に殺すつもりで魔法を撃ってきてよ」
「わかりました」
「えっ」
即答するサツキに、戸惑いを隠せないフローラ。
「私は?」
「ムンちゃんにもしものことがあったらいけないから……ごめんけど、アメルは我慢してくれる?」
「え~」
「今夜は一緒にお風呂入ってあげるから」
「わかった!!」
アメルは元気よく返事すると、私から急いで距離を取る。
アメルが安全地帯に行ったことを確認したサツキは、私に向かって右手を伸ばす。
「――『無限ノ剣舞』」
竜巻のごとく、渦を巻く剣。
狭い路地では回避不可能。閉じ込められてしまえばミンチは免れないだろう。
「カレン!!」
「フローラ、心配いらないよ――『天銀ノ裁秤』」
フローラに微笑みかけると、私は指を鳴らす。
効果範囲を路地裏だけにしているので、銀色の天秤は手のひらサイズ。宙に浮く天秤が左に傾くと、渦を巻く剣が消滅した。
「「「……」」」
路地裏が沈黙に包まれる。
「みんな黙り込まないでよ。私が悪いことをしているみたいじゃん」
「魔導士の存在価値を奪わないでください」
「謝ってください」
「カレンのばか~」
サツキとフローラに真顔で見つめられ、なんだか空気を悪くしてしまったので私は謝っておくことにした。てか、アメルはただの悪口じゃないか。
「ちなみに、その天秤が右に傾いたらどうなるんですか」
天秤なら、左右どちらにも傾く。
2回とも左にしか傾いていないことが、フローラは気になったのだろう。
「世界が終わる」
「えっ」
「冗談だって、右も左も変わらないよ。こんな路地裏にいたら息が詰まっちゃうし、メインストリートに戻ろう。今夜の宿も取らないといけないし」
私が悪戯っぽく笑い――
指を鳴らして天秤を消滅させたとき、フローラが衝撃的な発言をしてくる。
「じゃあ、王城に泊まりませんか」
「えっ」
不意打ちをくらい、間抜けな声を出す私。
フローラの真剣な表情を見るかぎり、嘘を言っているわけではない。
「ギルド活動の話を聞かせてください。王女という立場上、ギルドに入ることができないんですよ。まあ、泊まる泊まらないどちらでも王城には招待しますけどね。貴方たちは暗殺者から私を救ったのですから」
面倒ごとは避けたいが、王女からの誘いを断るのはリスクが高すぎる。最悪の場合、王国を敵に回すことになるだろうし――
「アメル、どうしようか」
「泊まりたい!! 王城で1泊なんて全人類の憧れじゃん!! きっとご飯も豪華なんだろうな~!!」
わくわくを抑えきれないのか、くねくねと身体を揺らすアメル。
「サツキは――」
「私も泊まりたいです。王城で働くメイドの腕前を確かめたいので。あと、女王陛下の顔も見ておきたいですね」
ごはんが目的のアメル。敵情視察がメインで女王への謁見がおまけのサツキ。私とフローラが友達じゃなかったら、不敬罪で捕まっていただろう。
「あははは!! カレンの仲間は面白いですね!!」
大爆笑するフローラ。
護衛がいたら、どんな反応をしていたのか。超絶不敬。最強不敬。剣を抜くのを必死に堪えていたかもしれない。
「じゃあ、泊まっちゃおうかな。こんな機会は2度とないだろうし」
「決まりですね!! さっそく王城へと向かいましょう!! カレン!! アメル!! サツキ!! 今夜は寝かせませんからね!!」
フローラは無邪気な笑顔を浮かべると、子供みたいに走り出すのだった。
ハイヒールでよく走れるよ。
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