『戦争の兆し』
熾天使カレイアの出現。
アルファード新聞の一面を飾ったのは、熾天使カレイアの出現だった。
――以下は、記事の一部である。
アルファード王国の最東部――港町アクリナに銀色の焔を纏いし熾天使が現れました。
3対6枚の白翼を広げ、黄金に輝く天輪を輝かせ、魔を滅ぼす銀色の焔により世界滅亡の象徴とされる黒竜から我々人間を救ってくださいました。明日の正午、エルシア=アルファード女王陛下により記者会見が行われます。
◇
「カレン、どうするんですか」
「どおおおおおおおおおおおおっっっしよおおおおおおおおおっっっかなああああああああああっ……」
新聞を閉じたサツキに苦笑され、私は頭を抱える。
「この記事、カレンとティアレちゃんのことだよね」
「うん……」
アメルにも苦笑され、私は溜め息を吐く。
私とティアレが戦っていた時、多くの町民から見られていた。顔は見られていないだろうが、白翼・天輪・銀ノ焔の3点セットが揃っている。
みんなが近づいてこないので正体はバレていないようだが、誰かの前で『銀ノ焔』を使ってしまえば即アウトである。
「……アンタ、何しているのよ」
レイン・ドゥクスアの報告をするために――
3人で受付に行くと、制服姿のサレヴィアが真顔で問い詰めてきた。
「サレヴィア、やっちゃった……」
「ちょっ、アンタこのバカ何を考えているの、人間たちの前で本名呼びはやめなさい……」
「ごめん、動揺しすぎて忘れてた。アメルとサツキには私たちの正体バレてるから焦らなくても大丈夫だよ。それよりも、どうしよう助けてお願いどうにかして……」
「アンタ、なんかさらっと今とんでもない発言しなかった? まあ、それは置いといて……アンタなんで人前で天使化してんのよ?」
「相手が相手だから仕方なかったんだよ……」
「ティアレくらい、天使化しなくても殺せるでしょうが。そのクソチート魔法を撃ちさえすれば瞬殺じゃないの」
「いろいろと事情があったんだよ……その後もラードニアが出てきちゃうし……」
「はあっ!?」
サレヴィアの絶叫に、冒険者たちの視線が私たちに集まる。
「なんでもありませんよ。レイン・ドゥクスアの件で怒られているだけですよ」
「うんうん、私が怒られちゃってるんだよ」
気を利かせてくれたのか、サツキとアメルが誤魔化してくれた。
「ラードニアって、あのキンピカよね」
「うん、そのキンピカ。ルヴィエラの命令で私を竜界に引き込もうとしてきたんだよね。それで断ったら殺そうとしてきたんだよ」
「アンタを竜界に引き込む……? どうしてルヴィエラがそんなことをするわけ……?」
「魔界の殲滅だよ。そのためにアズリオンを殺したいんだって。私ならアズリオンの魔法を無効化できるし」
「はっ、ちょっ、待ちなさい、どういうことよそれ。詳しく聞かせてちょうだい。3人分の夕飯を奢ってあげるから酒場で待っていてくれないかしら。あと10分くらいで仕事が終わるから。アメルちゃんのこともリンに反省してるって伝えておくから」
◇
「ハレスのせいね。ハレスのせいで3界戦争の続きが始まろうとしているわ」
酒場の隅っこで、私たちは夕飯を食べていた。
サレヴィアの奢りで、私はハンバーグ定食。アメルはオムライス。サツキはミートソースパスタを食べている。
「どうして、ハレスが関係するの?」
「サコレット森林で言わなかったかしら。アンタが消えたからよ。アンタさえ天界にいなければ魔界殲滅に集中できるもの」
私たちがお土産として買ってきたシュークリームを、紅茶と一緒に食べるサレヴィア。
天界に私。魔界にアズリオン。竜界にルヴィエラ。2界同士が戦ってしまえば余った1界が自由になってしまい、もぬけの殻となった隙を突かれて攻め込まれてしまう。
それを避けるために3界の間では睨み合いが続き、このままでは埒が明かないと3000年前に休戦協定が結ばれた。
――そして。
私が消えたことで、魔界と竜界の一騎打ちとなったのである。
「止める方法はないの?」
アメルの質問に――
サレヴィアは微笑を浮かべると、口元に付いたクリームをぺろりと舐めとり、びしっと私を指差してきた。
「熾天使カレイアが復活すればいいのよ」
「嫌だよ、天界に戻るなんてまっぴらごめんだね。そもそも帰ったら殺されちゃうし」
「こうなっちゃうのよね」
頬杖を突き、溜め息を吐くサレヴィア。
「カレン、魔界に協力してあげたら?」
「私はカレンだよ。熾天使カレイアじゃない。今の私は人間として生きているんだから、3界の事情に首を突っ込む義理はないよ。この魔法だって、敵を殺すためじゃなくて仲間を守るために使いたい」
「まあ、アンタならそう言うと思っていたわ。せっかく手に入れた自由だもの、壊されたくないわよね」
「ごめんねサレン」
「謝らなくていいわ。ルヴィエラの企みを教えてくれただけでも大助かりよ。不意打ちを受けずに済んだのだから。じゃあ、アタシは魔界に帰るわね。アンタから聞いたことを魔王様に伝えないといけないから」
サレヴィアは4人分の代金をテーブルに置くと、酒場から出ていくのだった。
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