『10年』
ラードニアの姿が見えなくなった瞬間――
私は天輪と白翼を消滅させ、両手を広げて仰向けに倒れる。
わたしが受けたのだろう全身には謎の切り傷。ティアレに抉られた脇腹は痛み、じんわりと熱を帯びている。
これ以上の魔力消費を防ぐために『焔銀樹踊』を消滅させると、私はすうっと息を吸い込み、大声で叫ぶのである。
「疲れた~!!」
服や髪に土が付こうが関係ない。
私は偉い。満身創痍の状態でティアレとラードニアを相手に仲間を守り切った。気の抜けない戦いで肉体も精神もクタクタ。お腹いっぱい美味しい料理を食べて、ふかふかのベッドで寝たい。
「お疲れ様です、カレン」
魔剣ドラゴスティアのレプリカを消滅させ、サツキが私の隣に座ってきた。
「サツキもおつかれ。なんとか3人とも生き残ったね」
「カレンが守ってくれましたからね。私はただカレンの背中を見ていただけで何もしていないですよ」
「そんなことないよ、食堂でアメルを守ってくれたじゃん。あそこで人質を取られていたら成す術が無かったもん。それにしても、サツキには驚かされたよ。まさかティアレの部下を殺しちゃうなんてね」
ドラゴン兵1体を倒すには、天使兵2体掛かりで挑まなければならない。
人間の身でありながらドラゴン兵を無傷でしかも単騎で討伐とかいう偉業を成し遂げておきながら、何もしていないとかサツキは自分を謙遜しすぎである。
「アメルを無理やり連れ去ろうとしていたので、背後から気配を消して忍び寄りドラゴスティアで心臓を貫きました」
「こわ~」
「少し掠るだけで致命傷の魔法をポンポン使うカレンには言われたくないですね。なんですかあれ、自動追尾型の必殺兵器とか接触即死&呼吸即死の攻守ともに優れた殺人粉生成魔法とか、カレン1人で国どころか世界を滅ぼせるんじゃないですか」
「あはは~」
「そこ、笑って誤魔化さないでください。できるんですね。できちゃうんですね。その気になればできちゃうんですね。」
「国ならともかく、世界だと1カ月は掛かりそうだな。まあ、余程のことが無いかぎりやらないけどね」
「余程のことがあったらやるんですね」
「あはは~」
私は笑みを浮かべると、満天の夜空を見つめたまま新しい話題を切り出す。
「しっかしまあ、サツキも無茶言うよね。たった10年であのラードニアと戦えるようにしろってさ」
睡眠と食事なしで24時間特訓すること前提で――
1000年に1人の天才滅竜魔導士とはいえ、ラードニアの前に20秒立てるレベルまで鍛えるともなれば、最低でも1000年は欲しいところである。
「魔剣ドラゴスティアの封印さえ解ければいいんですけどね」
「えっと、その魔剣が存在するだけで、ドラゴンは力の大半を失ってしまうんだっけ」
「はい、その魔剣さえあればドラゴンなど雑魚トカゲなのですが……どういうわけか、初代族長が封印してしまいまして」
「いや、なんで……」
「不明です」
人間という種族が、最上位のドラゴンに立ち向かえる唯一の術。
わざわざそれを手放すともなればメリットを捨てざるを得ないほどの恐ろしいデメリットでもあるのだろうか。封印を余儀なくされたデメリットがあるにしても、ラードニアと戦うには魔剣ドラゴスティアの封印解除が必要になってくるので、冒険の目的に魔剣ドラゴスティアの封印解除も追加しよう。
「ううっ……」
重い身体を起こそうとした時、アメルが意識を取り戻す。
「「アメル!!」」
「んあ……カレン、サツキちゃん……あう、頭いたっ……ふらふらする」
起き上がろうとした時、アメルの身体がふらつく。バランスを崩し、地面に倒れようとしたアメルの身体を支える私。
「じっとしてて、頭をやられちゃってるから。アメル、少し休んだらお医者さんに行こうね」
「むふふ……この感じ、いつものカレンだぁ……カレイアちゃんじゃないやぁ」
「その口振りだと、私の正体バレてる感じか~」
「カレンの正体が何であっても関係ないよ。私とカレンは親友なんだから。でも、ずっと隠されていたのは悲しいなぁ。信用されてなかったのかなぁ」
「ごめん、私の正体が熾天使だってバレたら怖がられるかと思って……アメルのことを信用してなかったってわけじゃないよ」
「そっか、私のことを信用してないってわけじゃなかったんだね」
「当たり前じゃん、親友なんだから」
「むふふ、初めてだよねえ。カレンの方から私に親友って言ってくれたの」
「そうだっけ」
「うん」
アメルは笑みを浮かべると、ふらつきながらも自分の力で立ち上がる。
「アメル、無理はダメです」
「このまま外にいても身体が冷えちゃうし……私もカレンもボロボロだし、早くお医者さんのところに行かないと」
「医者なら私が呼んできますので、2人はここで安静にしていてください。いいですか、私が帰ってくるまで動いてはいけないですよ」
「「いや、これくらい大丈夫――」」
「勝手に動いたら、明日から夕飯のおかずを1品減らしますからね」
「「静かに待っています!!」」
サツキの気迫に押され――
私とアメルは仰向けに寝転がると、天体観測しながら待つことにするのだった。
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