『天銀VS裁光竜』
ただいま人間界、おかえりカレン。
私が帰ってきましたよ。
意識を取り戻した瞬間、私の全身にかかるアメルの体重。それに加え、身体中が傷だらけで抉られた脇腹も痛い。
「アメル!!」
目を閉じたアメルを地面に下ろし、胸に耳を当てる。
どくん、どくん、一定のリズムで脈打つ心臓。よかった、気絶しているだけでアメルは生きていた。
「カレン……?」
「サツキ、意味が分からないとは思うけど、しばらく留守にしてごめんね。わたしが酷いこと言ったりしてない?」
駆け寄ってきたサツキに、私は声を掛ける。
私とわたしは人格が違うだけで、姿と声は同じ。サツキからしたら何を言っているんだって感じだろう。
――そう、思っていたが。
「カレン、おかえりなさい。私とアメルは、あなたの帰りを待っていましたよ」
私に返ってきたのは、予想外の反応だった。
その言い方だと、サツキとアメルは人格の変化に気づいているのか。いやいや、私とわたしを見分けるには神クラスの魔力感知が必要なんだけども――
「サツキ、その言い方だと……」
「あなたの自称お姉さまが教えてくださいましたよ。クソデブ変態神とやらのせいで人格が分かれてしまったとか」
「自称お姉さまって……?」
「雷神ネプシーと名乗っていましたね。青緑色の髪をした少女でした」
「ええっ!?」
私が入れ替わっていた間に、人間界では何が起こっていたのか。
雷神ネプシーとか、1万年くらい前から行方不明になっていなかったっけ。どうして今、しかも人間界でその名前が出てくるのか。
「それで、ネプシーは?」
「ラードニアに殺されました。1発で光の粒子となりました」
「あのネプシーが!?」
雷神ネプシーといえば、私と互角の強さを持っていた。そのネプシーを、ラードニアは1発で殺したっていうのか。
「カレっち、人間なんか助けてどうしたん?」
「ラードニア、おまえかアメルを怪我させたのは。おでこから血が出てるじゃん」
「アメル……? あーそいつのことね。うん、あたしだよ。なんか意味わかんねえこと言いながら近寄ってきたからさ、邪魔だしデコピンしたよ~」
「は?」
冷たい眼差しで、私はラードニアを睨みつける。
ネプシーを殺したともなれば、手加減をしている余裕はない。3対6枚の白翼。黄金に輝く天輪。最初から熾天使モードである。
「うわ、ちょまちょま、なにいきなり戦闘モードになってんの!? あたしなんか癪に障ることした!?」
「自覚なしか~」
「だって、マジでなんもしてないじゃん!? やったとしたら、カレっちと間違えてネプちんを殺したくらいで……あ、やば」
言い終わった直後に、両手で口を覆うラードニア。
「ネプシーを殺したり私を殺そうとしたのは、正直どうでもいいんだよね」
「じゃあ、なんで怒ってんの?」
「おまえが私の親友に手を出したからだよ、ラードニア。アメルは私の親友で、サツキは家族だ、このクソ野郎」
私の言葉に――
ラードニアは目を丸くし、ぷぷっと吹き出す。
「あははは!! カレっち面白すぎ!! 人間が親友? 人間が家族? 奴隷とかなら分かるけど、親友とか家族なんて――」
「ちょっとうるさいかな」
私の発言が冗談では無いことに気づいたのか、ラードニアから笑顔が消える。
「カレっちは創造神の最高傑作。いつもなら逃げてるけどね。今のカレっちは手負い。あたしは無傷。勝てる要素しか見つかんない。あんまうざいこと言っちゃうと、いくらカレっちでも許さないよ」
「それは好都合、私も許すつもりはないよ。おまえみたいなピカピカ光ることしか能のない発光トカゲ、重傷の足枷あってトントンだよ」
「カレっち、今のはさすがにイラっとしたわ。ルーちゃんには悪いけど、跡形も残らないくらいに殺しちゃうわ。カレっちを殺したら、そこにいる親友と家族も殺しちゃうわ」
「やってみなよ」
人間界の港町から、少し離れた場所にある草原で――
天界の序列3位――『天銀』カレイアと、竜界の序列2位――『裁光竜』ラードニアの殺し合いが始まるのだった。
――そして。
この時はまだ知る由もなかった。この事件が、人間界だけでなく天界・魔界・竜界の3界にも大きな影響を与えることを。
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