『私の番』
「「えっ?」」
身体を撃ち抜かれ、光の粒子となって消滅するネプシーを目の当たりにし、桜色の少女とサツキが間抜けな声を上げる。
ネプシーの圧倒的な力により、この戦いはティアレの敗北で終わるだろうと、この場にいる全員が思っていた。
――しかし。
ネプシーがとどめを刺そうとした瞬間、天空から撃ち出された光の槍。
それによって、戦況がひっくりかえる。
「ここで来るか……」
わたしの呟きに、2人が反応する。
「カレイアちゃん、今のなに……? 空が光ったと思ったら、ネプシーちゃんが消えちゃったよ……?」
「カレン、今の光はまさか……」
桜色の少女は何が起こったのか分からないようだが、サツキは勘付いている様子。
どこかで『彼女』と会ったことがあるのか。
「うっし、どんぴしゃキタコレ。あたし天才じゃね」
悪い予感が当たった。
月を背にわたしたちを見下ろすは、金髪ツインテールの少女。
前髪に入れられた桃色のメッシュ。胸元には赤チェックのリボン。白いワイシャツの上には桃色のパーカー。紺色のプリーツスカート。彼女こそ、竜界の序列2位――『裁光竜』ラードニアである。
「ラードニア!!」
「彼女が!?」
名を叫んだ瞬間、サツキが驚愕の声を上げる。
「誰だし、あたしのこと呼んだん? あたしは今カレっち仕留めて上機嫌なんだっつーの」
「わたしだよ、ラードニア」
「は?」
わたしの顔を見た瞬間、ラードニアが驚愕の表情を浮かべる。
「なに、その顔」
「ちょいまてし、なんでカレっち生きてるわけ?」
「その反応……もしかして、わたしを狙ったつもりだった?」
「え、カレっちじゃないってことは、あたし部外者を殺っちゃった感じ?」
地面に降りてくると――
両手を両頬に強く押し付け、ティアレの傍にできた大穴に視線を送るラードニア。
「おまえが殺したのは、ネプシーだよ」
「ネプシー?」
「雷神ネプシーだよ。三叉の槍でぶっぱなしてくるやつ」
「え、それってネプちんのこと? あはは、冗談はやめてよカレっち、あたしなんかが神様を殺れるわけないじゃんか……え、まじ?」
「うん」
わたしの表情を見て、苦笑を浮かべるラードニア。
「まじかまじか!! あたし神殺しってこと!?」
「ネプシーちゃんは死んでないよ」
はしゃぐラードニアに、桜色の少女が近づいていく。
「誰だし」
「私はアメル。カレンの親友だよ」
「いや、アメルとか知らねーし。てか、そもそもカレンって誰だよ。いきなり話しかけてくんなよどっか行けよ殺されてーのかおめえ」
桜色の少女のおでこを、人差し指で弾くラードニア。
勢いよく後方に吹き飛ばされていく桜色の少女を、わたしは無意識のうちに追いかけて優しく受け止めていた。
「あれ、わたしなんで……」
「カ、カレ……」
わたしの腕の中で、静かに目を閉じる桜色の少女。
その瞬間、わたしの全身が燃えるように熱くなってくる。この感情はなんだ。今まで味わったことのない感情。
――そうか、これは怒りだ。
意識が遠くなっていく。
暗闇の中から、ゆっくりと銀髪の少女が歩いてくる。ゆらゆらと髪を揺らし、わたしの眼前で足を止める。
「交代だよ」
「あはは、ティアレ如きに殺されそうになったおまえが何言って……はいはい、そんな顔で見つめないでよ、変わればいいんでしょう。ひええ、怖い怖い」
「ごめんね」
「気にしなくていいよ。まだまだ遊びたかったけど、そんな顔をされちゃあ意地悪は言えないね。交代を断ったら顔面とか殴られそうだし……」
「ありがとう、わたしが変わってくれなかったら顔面パンチ100連発していたよ」
「暴力女~」
「うそうそ、そんなことしないって。わたしが頷いてくれるまで、土下座したり足を舐めたりしていたかな」
「それもそれで嫌だなぁ」
わたしは苦笑すると、銀髪の少女に拳を突き出す。
わたしの行動に銀髪の少女は一瞬だけ動きを止めると、にっこりと白い歯を見せてわたしの拳に自分の拳を合わせてきた。
「それじゃあ、ラードニアを殺してくる」
「よし、殺る気十分!! さっさと行ってこい!! どうせみんなにも正体バレてるし、全力の私を見せてやれ!! ティアレ戦の時みたいに魔法を出し惜しみするなよ!! 相手はラードニアだからな!!」
「待って、アメルにもバレてるの?」
「うん、わたしやっちった~」
「まあいいや。どうせ商業都市に帰ったら正体をバラすつもりだったし。こうなったら最初から思いっきりやっちゃうか~!!」
「今度またわたしと交代するようなことになったら、もう一生変わってあげないからな!!」
くるりと背後に回り込んだわたしは、出口に向かって私の背中を蹴り飛ばすのだった。
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