『わたしの番』
「さあ、殺し合いの続きをしよう」
わたしは手招きをし、ティアレを挑発する。
殺し合いなんていつ以来だろうか。アイツらとの戦いで敗北したわたしは私と入れ替わり、傷ついたわたしは私の中で眠っていた。
――しかし。
私の命の危機を感じ取ったわたしは、強制的に私と入れ替わったのである。
「声も姿も変わっておらん。しかし、この違和感はなんじゃ……?」
「そっちが来ないのなら、わたしから行くよ?」
「むう……!?」
わたしは『銀ノ焔』を起動させ、ぱちんと指を鳴らす。わたしたちが雑魚処理用に利用している『銀ノ焔』は魔法の一部。
何を恐れているのか、私は『銀ノ焔』しか使っていない。せっかくの殺しあいなんだから、出し惜しみせずにぶつかりあわないと楽しくないだろう。
『焔天煌々』
抑揚の無い声でわたしが呟くと――
白銀に煌めく焔で精製された無限の槍がティアレを包囲する。
「なんじゃこれは!?」
魔力を燃やし尽くす白銀の焔槍。
触れれば即死。貫かれれば即死。撃ち落とそうにも魔法は無効化されてしまうので躱すしかない。
「数秒で終わったら面白くないし、これくらい生き残ってほしいな」
「殺す気満々じゃのう、貴様、妾のことは殺したくないのではなかったのか?」
「なんのこと?」
わたしが指を差すと、ティアレを包囲していた白銀の焔槍が動き出す。
絶望的な状況下、どう対処してくるか。
「『瞑目終誘』は攻守ともに優秀でな」
地面を覆う漆黒の闇に、ティアレが飛び込んでしまう。ティアレが飛び込むと同時に闇が消滅し、白銀の焔槍が地面を抉る。
「へえ……」
姿が消えるだけでなく、気配も消えた。
わたしに気配を感じさせないなんて……なるほど、この世界から隔絶された空間を作ったのか。驚異的な魔法である。
――しかし。
そんな魔法、いつまで保つかな。
隔絶された空間を作るなんて、魔力消費量が凄まじいはずである。そろそろ出てこないと戦うための魔力が無くなってしまうよね。
「――『冥闇竜の咆哮』じゃ!!」
「背後からの不意打ち。わたしじゃなかったら殺せていたね」
「ちっ……」
ティアレが撃ち出した闇のブレスを、わたしは白銀の焔槍で燃やし尽くす。
この世界に姿を現すまで、気配は感じなかった。わたしの気配察知能力があったからこそ、攻撃を防ぐことができた。
「楽しいね」
「楽しいわけがないであろう、貴様その豹変ぶりは一体どうしたのじゃ」
「秘密だよ、どうしても知りたいならわたしを戦闘不能にしてよ」
「無茶を言うでないわ」
軽く舌打ちをするティアレ。
それにしても、1つ気になることがある。
どうして、ティアレは逃げないのか。全力を出していないにもかかわらず、力の差は歴然。勝率は皆無。
引き際の分からないやつでもなさそうだし『瞑目終誘』で竜界に逃げればいい。なにか秘策でも隠しているのか。
「ティアレ、なにか狙ってない?」
「なぜ、そう思う?」
「力の差は歴然。勝率は皆無。わたしがティアレの立場だったら『瞑目終誘』で竜界に逃げているよ」
「それで、妾がまだ何かを隠していると」
「うん、出し惜しみしている間に殺されたら元も子もないよ。それとも、秘策の発動に何か条件でもある感じ?」
「……さあ、どちらであろうな」
にやりと笑うティアレ。
飽くまでも出し惜しみを続けるならば、出さざるを得ない状況を作るまでだ。
「いいよ、無理やりにでも出させるから」
わたしは指を差し、白銀の焔槍をティアレに撃ち出す。
白銀の焔槍が迫った時、ティアレは地面に触れて『瞑目終誘』を唱えると、地面を覆う漆黒の闇に飛び込んだ。
わたしに不意打ちなど通じないのだから魔力の無駄にしかならない。ティアレは一体何を考えているのか。
――なんだか、興が覚めてきた。
「『冥闇竜の――』」
「もういいや、飽きたから死んでいいよ」
わたしの頭上に現れたティアレが闇のブレスを撃ち出そうとした瞬間、わたしは白銀の焔槍を握り、ティアレの首を切断しようと――
「カレン!!」
私の背後から、少女の声が響く。
理由は分からない。少女の声を聞いた瞬間、白銀の焔槍がティアレの首を切り裂く寸前で動きを止めた。
「『咆哮』じゃああああああっ!!!」
「しまっ……!!」
ティアレから撃ち出された闇のブレスが、わたしを勢いよく吹き飛ばすのだった。
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