『適性試験』
唐揚げ定食を平らげると、私とアメルは建物の奥にある受付に向かった。
受付には長蛇の列ができており、しばらく並んでいると私たちの順番が回ってくる。
「いらっしゃいませ!! 今日はどうなされましたか?」
制服を着た受付の女性が話しかけてきた。
整った顔立ちで、綺麗に揃えられた黒髪ボブが印象的である。名札を見ると、リン=デイアスと書いてあった。
「冒険者になりたいんですが……」
「冒険者登録ですね。適性試験を受けて頂く必要がありますが、よろしいですか?」
「はい!!」
元気よく返事すると、受付の女性――リンから書類を渡された。
「それでは、ここに署名をお願いします」
「「分かりました」」
私とアメルは万年筆で名前を書くと、リンに返却した。
「……どれどれ、カレン=アルジェントさんと、アメル=クラウィスさんですね。これで手続きは完了しました。それでは奥の部屋にどうぞ」
リンに案内され――
奥の部屋に続く木製の扉を開けると、部屋では軍服の女性が待っていた。肩の高さで揃えられた蒼髪と黒色の瞳。片眼鏡を掛けている。
「ランチェル先生、彼女たちをよろしくお願いしますね」
「了解です」
リンは軍服の女性――ランチェルに書類を渡すと、軽く頭を下げて部屋から出て行った。
部屋の中央には巨大な水晶玉が置いてある。適正試験に使うのだろうか。
「私は試験官のランチェル=リコンです。さっそく適性試験を始めましょう!!」
「「よろしくお願いします!!」」
私とアメルが元気よく挨拶すると、ランチェルが水晶玉を指差した。
「そこに設置されている水晶玉は魔力測定器です。水晶玉に触れると魔力保有量と魔法属性が映し出され、魔力保有量が基準値に達していれば適性試験に合格となります。それではアメルさんからお願いします」
「アメル行きます!!」
アメルの手が触れた瞬間、魔力測定器が激しく輝き始めた。表面に文字が刻まれていき、書類を片手にランチェルが確認していく。
「契約魔法ですね。魔力保有量は……基準値を超えています!! 合格です!!」
「やった!!」
合格を言い渡され、嬉しそうに飛び跳ねるアメル。
契約魔法とか初めて聞いたよ。契約という名前からして能力の察しは付くが、詳しく知りたいのでランチェルに訊いてみることにした。
「契約魔法とは、どういう魔法ですか?」
「通常だと、人間は魔物と意思疎通することはできませんが、契約魔法を使うことで可能となりまして、そうすることで契約した魔物と協力して戦うことができます。保有率が低いので、契約魔法は多くのギルドから重宝されているんですよ」
なるほど、魔物と意思疎通することができれば、戦闘が楽になるだけでなく人間では知り得ない情報を魔物から聞くことができるので、依頼を有利に進めたりできる。
「アメルさんに続いて……カレンさん、準備はいいですか?」
「はい」
私の番になった。
私は右肩をぐるんぐるんと回しながら、魔力測定器に向かう。
「カレン頑張ってね!!」
「頑張るよ。それと合格おめでとうアメル」
「ありがと!!」
向かう途中でアメルとハイタッチを交わして、私は魔力測定器の前に立った。
「それでは、魔力を込めてください」
「はい」
ランチェルに促され――
軽く魔力を流し込んだ瞬間、閃光と共に魔力測定器が弾け飛んだ。
「「えっ?」」
私とランチェルの声が重なってしまう。
静まり返った空間で、弾け飛んだ魔力測定器の破片が音を立てて落下する。
「……カレン、なにしちゃったの?」
「知らないから!! 指示されたとおりに魔力を流し込んだら粉々に弾けたんだよ!!」
弁解する私を見て、アメルがニヤニヤと笑ってくる。
「なんですかこれ……? 適性試験で魔力測定器が弾け飛ぶなんて前代未聞ですよ……? 副会長になんて伝えれば……?」
青色の布で片眼鏡を拭きながら、動揺するランチェル。
副会長に報告。前代未聞。ランチェルの口から不穏な言葉が飛び出してくる。
「森で助けられたときから思っていたけど……実はカレンって凄い魔道士だったりする?」
不安を抱く私に、アメルが話しかけてきた。
「そんなことないよ……?」
「ほんと……?」
アメルから訝しげに見つめられ――
私の背中を冷たい汗が垂れているとき、ランチェルが用具箱から掃除用具を取り出しながら言ってくる。
「……カレンさん、誠に申し訳ありません。通常の魔力測定器では貴方の人間離れした魔力に耐えきれないので、高性能な魔力測定器で検査します。準備に少し時間が掛かりますので、しばらくお待ちください」
ランチェルは頭を下げると、部屋に散らばった破片を集めて部屋から出て行った。
はい、さっそくやらかしましたね。
今後どうなることやら。
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