『覚悟を決めろ』
「満腹、満腹、腹も満たされ、身体も温まり、妾は上機嫌じゃ!!」
食堂を出ると――
からんころんと下駄を鳴らしながら上機嫌な様子でぽんぽんと腹部を叩くティアレちゃんと、私は港町アクリナの煉瓦道を歩いていた。
トマリスープは量が多くて私は2杯で満足したのに、なんとティアレちゃんは私以上の大食いで、おかわりを5杯もしていた。人のことを言える立場ではないが、小さい身体のどこに入るのだろうか。
「1皿の量も多かったのに、まさか5杯も食べちゃうんだもん。驚いちゃったよ。ティアレちゃんは食欲旺盛なんだね」
「長旅で腹が空いておったからな。匙が言うことを聞いてくれなかったのじゃ。うぷ、うぷぷ、満腹状態で歩くのはちときついのう。アメル、そこの公園で休んでいかぬか」
「いいよ」
ティアレちゃんの提案で、公園に行くことになった。夜の公園。誰も遊んでいないので、私たちの貸し切り状態。公園に入ると、私たちはベンチに腰掛ける。
「おぬしは、この町に住んでおるのか?」
夜空を見上げながら、ティアレちゃんが話しかけてくる。
「ううん、私が住んでいるのは、ここから西に進んだところにある商業都市だよ。この町には仕事で来たの」
「相変わらず、おぬしと妾は気が合うのう。妾も仕事じゃ」
偶然は重なるもので、ティアレちゃんも仕事らしい。
身長からして、私と同じで15歳くらいか。2度あることは3度ある。ティアレちゃんも冒険者だったりしないだろうか。
「ティアレちゃんは、どんな仕事しているの?」
「主人から、人捜しを頼まれておる」
「どんな人を捜しているの? 私は冒険者をやっているからさ、どこかで会っているかもしれないよ?」
「なんと、冒険者をやっておるのか。そうかそうか、各地を回っておるのならば、顔も広かろう」
「まあ、1カ月と少しだけどね」
肩を竦める私に――
ティアレちゃんは、真剣な表情で言ってくるのだった。
「銀色の焔を操る、銀髪の少女を知らぬか。紅色の眼をしておるのだが……」
「えっ」
銀色の焔・銀髪・紅色の眼と聞いて、私は声を洩らしてしまう。ティアレちゃんが教えてくれた捜し人の特徴と、カレンの特徴が一致しているからだ。
「おぬし、知っておるのか!?」
ティアレちゃんが、私の両肩を掴んできた。
凄い力である。
「ティアレちゃんの主人は、その娘にどんな用事があるの?」
「その娘と妾の主人は古い仲でな、久々に会いたいと言っておるのじゃ」
「主人の名前は?」
「ルヴィエラといえば、その娘も分かるはずじゃ」
ルヴィエラさんか。
サレンさんといい、ルヴィエラさんといい、カレンは友達が多いな。友達が会いたがっているのなら、教えてあげるべきだよね。
「その娘って、カレンのことだよね」
「カレン」
「カレンは、私の親友だよ。私と同じ冒険者でギルドも組んでいるんだよね」
「冒険者……!? あの殺戮天使が……!?」
私の言葉に、驚愕の表情を浮かべるティアレちゃん。
「殺戮天使?」
「おぬしは気にしなくてよい。こちらの話じゃ」
殺戮天使と聞いて、私は思い出す。
あそこの森林で私が悪徳ギルドに襲われていたとき、黄金の鎖に巻かれた状態で空から落ちてきたカレンは天使の仮装をしていた。
カレンは言っていた。天使の仮装をして、身体に鎖を巻き付けて遊んでいたら崖から落ちてしまったと。冷静に考えれば、咄嗟の言い訳にしか聞こえない。
――いや、まさかね。
天使なんて、神話だけの存在だよ。もし天使だったら、私なんかと冒険者なんてやらないし、輪と翼だって生えているはずである。
カレンのことだし、天使の仮装しながら魔物を倒していたから、殺戮天使なんて呼ばれているんだよ。
「寒くなってきたし、休憩はこれくらいにしようか。ティアレちゃん、カレンに用事があるのなら、私が依頼を終わらせるまで待っててよ。商業都市に帰ったら、カレンと会わせてあげるから」
「それならば、妾も依頼を手伝おうではないか。1人より2人でやったほうが依頼も早く終わるであろう」
ティアレちゃんの言う通り、1人より2人のほうが依頼を早く終わらせることができる。
しかし、そうはいかない。
「気持ちはありがたいけど、今回の依頼は私だけの力で成功させないといけないんだよね。そうじゃないと、私はカレンとサツキちゃんの隣に立てないから」
「ふむ、どうやら事情があるようじゃ。よかろう、妾は遠くから見守っておくことにしよう」
「ありがとう」
私の力を示すだけでなく――
ティアレちゃんとの約束も果たすべく、私はなんとしてもレイン・ドゥクスアを討伐しないといけない。
――覚悟を決めろ。
ぎゅっと拳を握り締めて――
私が宿に帰ろうとした時、港の方から爆音が響いてくるのだった。
明かされた、ティアレの目的。
アメルに芽生える、カレンへの不信感。
ティアレの主人である、ルヴィエラとは何者なのか。
――そして。
アメルは、レイン・ドゥクスアを討伐できるのか。
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