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『証明』

この章からは、アメル視点になります。

 港町アクリナ。

 アルファード王国の最東部に存在している、漁業が盛んな町。

 漁業だけでなく、東大陸との貿易拠点にもなっているため、アルファード王国にとって重要な場所になっている。

 港町アクリナの正門が見えてきたところで、私は商業都市から乗せてきてもらっていたムンちゃんの背中から降りる。

 ムンちゃんは足が速く、馬車では2日も掛かってしまう場所に1日で到着してしまった。長距離移動で疲れているのか、ムンちゃんは疲れた様子。


「ムンちゃん、ここまで乗せてくれてありがとね」


 優しく頭を撫でると――

 召喚術式を起動させて、ムンちゃんを異空間に戻してあげる。

 港町を歩かせてあげたいけど、私とムンちゃんを繋ぎ止めておくには大量の魔力が必要になる。長距離移動で枯渇した魔力が回復するまでは、ムンちゃんには眠っていてもらわなければならない。レイン・ドゥクスアと戦わなければいけないから。図鑑によると、レイン・ドゥクスアは夜行性。魔力回復の時間も計算して、戦闘は今夜ではなく明夜になる。


「お腹空いたし、ごはん食べようかな」


 私はリュックを背負い直すと、正門から続く列に並ぶ。

 貿易の拠点になっているおかげで、港町アクリナには外国の食文化が入り込んでいる。

 私の目的は、北の大陸で愛されているスープ料理。ひとくちサイズに刻んだ肉と野菜をペースト状にしたトマリスの実で煮込んだものである。

 列に並んでいる間に、腹の虫が5回も鳴り響いた。前後に並んでいた人からクスクスと笑われてしまい、すごく恥ずかしかった。


「次の方どうぞ」


 15分ほどして、私の順番が回ってきた。

 衛兵による身分証明である。私は冒険者カードを取り出して、衛兵に渡す。


「中級冒険者のアメルです」

「港町アクリナには、どういった目的で来ましたか?」

「冒険者協会から、レイン・ドゥクスアの討伐を受けてきました。依頼書の写しはリュックの中にあります」


 私が目的を告げた瞬間、衛兵の表情が変わる。


「あなたが?」

「はい」

「1人で?」

「1人じゃないです。仲間と待ち合わせしています。明日には到着すると思います」


 私の虚言に――

 衛兵は「そうですか……」と呟くと、私に冒険者カードを返してきた。


「冒険者協会が認めたのですし、問題はないでしょう。仲間の方が来られたら、アメルさんのことを伝えておきますね。通っていいですよ」

「ありがとうございます」


 軽く会釈すると、私は門を潜っていく。

 レイン・ドゥクスアは、私の力だけで討伐してみせる。私はカレンとサツキちゃんに守られてばかりの足手纏いなんかじゃない。


 ――冒険者協会を歩いていたとき、女性冒険者に言われた。


 アメルちゃんは、カレンさんとサツキさんに守ってもらえて羨ましいね。

 その言葉で、私は気づいてしまう。私は守られてばかりであることに。他人任せの卑怯者であることに。


 ――私だって『色彩の集い』のメンバーだ。


 カレンとサツキちゃんが危険なときは、私が助けないといけない。カレンとサツキちゃんに頼ってもらうためには、私の強さを証明しなければならない。

 そのために、Bランク最高難易度――レイン・ドゥクスアを1人で討伐するのである。それくらいできないと、私は『色彩の集い』を名乗れない。


 ――ぎゅるるん。

 

 覚悟を決めていてもお腹は空く。宿を取って、美味しいスープを食べよう。生きて帰ることができたら、カレンとサツキちゃんも連れてこよう。



 宿を予約して――

 食堂のドアを開けた瞬間、美味しそうなスープの香りが漂ってきた。


「いらっしゃい!! おひとりさんだね!! カウンター席にどうぞ!!」

 

 店員に案内され、私はカウンター席に行く。

 注文する料理は決まっているので、私は献立表を開かずに声を上げる。


「「トマリスープ!!」」

「あいよー!! トマリスープ2つ!!」


 注文の声が、隣の客と重なってしまった。

 和服を着た少女。揺れる黒髪ツインテール。燃え盛る炎を連想させる紅色の瞳。頭部には渦巻く黒角が生えている。


「奇遇だね」

「そうじゃのう。席に着き即注文とは、おぬし常連か?」

「ううん、今日が初めてだよ」

「そうかそうか、妾も初めてじゃ。クハッ、気が合うのう。おぬし、名はなんと?」


 水を飲みながら、和服の少女が名前を聞いてくる。

 人に名を尋ねる時は自分から名乗るのがマナーだけど、せっかく友好的に接してくれているので気にしないでおこう。


「アメルだよ。君はなんていうの?」

「妾はティアレ。アメルと呼ばせてもらうが、構わんか?」

「うん、私もティアレちゃんって呼んじゃうね」


 ティアレちゃん。

 渦巻く黒角からして、人間ではないだろう。角があるのならドラゴニュートだろうけど、旅の途中で出会ったドラゴニュートとは異なる点が多すぎる。鱗も無い。翼も無い。戦闘種族とは思えない華奢な体格。


「どうした、物珍しげに妾を見つめおって」

「ティアレちゃんの角、すっごくかっこいいなって。ティアレちゃんさえよかったら、少しだけ触らせてほしいな」

「そうかそうか、精神が崩壊しても構わんのなら触ってよいぞ。なに、その時は苦しまないように殺してやる」

「え?」


 精神崩壊。殺す。

 ティアレちゃん、さらっと物騒なことを言ったよね。

新キャラ来ましたね!!

ティアレちゃん。角があるってことは、人間ではないはずだよね。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!

みなさんに楽しんでいただけることが、執筆活動の原動力になっております!!

これからもよろしくお願いします!!

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