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『レイン・ドゥクスア』

「リン、眠そうなところ悪いけど、アメル見てない?」


 冒険者協会に駆け込むと――

 私とサツキは受付に行き、こっくりこっくりと舟を漕ぐリンに話しかけた。


「むふ、むふふ……おかーさん、こんなに食べられないよ。むふ、むふふ、むひゃあっ!! 寝ていませんから!! 私は寝ていませんから!!」

「うん、お母さん思いの娘は見なかったことにしておくから……それよりも、うちのアメル見てない?」


 私が訊くと――

 リンはハンカチで涎を拭き、きょとんとした表情で首を傾げてくる。


「昼前から見ていませんけど……あれ、サツキさん? どうして、サツキさんが商業都市にいるんですか? アメルさんと依頼に出かけられたのでは?」

「はい?」


 リンの言葉に、サツキが間抜けな声を上げる。


「Bランクの最高難易度――『レイン・ドゥクスア』の討伐に行かれたのですよね?」

「何の話ですか?」

「「えっ?」」


 サツキとリンの声が重なってしまう。


「昼前なら、私はメイド集会に行っていましたよ。帰宅したのも先程です」

「そんなっ!!」


 サツキの言葉を聞いた瞬間、リンの表情が変わった。

 カウンターの引き出しから紺色のファイルを取り出して、急いでページを捲り始める。


 ――そして、1枚の依頼書を見せてくるのだった。


 レイン・ドゥクスアの討伐。

 アルファード王国の最東部――港町アクリナの沖合にて、レイン・ドゥクスアの幼体が確認されました。本来であれば、レイン・ドゥクスアは東大陸の海にしか生息しませんが、何らかの原因により迷い込んできたようです。

 レイン・ドゥクスアは縄張り意識が強く、貨物船や漁船が襲われるなどの被害が相次いでいます。至急、討伐をお願いします。


「レイン・ドゥクスア……!?」


 依頼書を見て、サツキが声を洩らす。

 反応からして、レイン・ドゥクスアを知っているようである。そういえば、サツキは東大陸の出身だったか。


「サツキ、レイン・ドゥクスアを知っているの?」

「レイン・ドゥクスアは、成体になると全長30メートルを超える巨大魔物です。全身が硬い鱗に覆われており、口から放たれるアクアブレスはダイヤモンドの鎧すらも貫通するので、アメルはドーナツになりますね」

「ドーナツどころか、粉々になっちゃうよね?」

「アメル粉ですね」

「「あはは」」

「笑っている場合ですか!!! アメルさんの命が危ないんですよ!! 幼体とはいえ、たった1人でレイン・ドゥクスアに挑むなんて無謀にも程があります!!」


 サツキと冗談を言い合っていた時、リンが大声を出した。

 リンの眼差しは真剣で、先程までの眠そうな表情はどこにも存在していない。


「リンの言う通り、笑っている場合じゃないよね。大急ぎで助けに行かないとアメルの命が危ないよね」

「大切な仲間ですからね。今すぐギルドハウスに帰宅して睡眠を取り、夜が明け次第、準備を済ませて救助に向かいましょう。リン、馬車の手配をお願いしても?」

「もちろんです。夜明け前に予約しておきますね」

「ありがとうございます」


 リンを騙してまで、どうしてアメルはレイン・ドゥクスアに挑んだのか。ムンちゃんに海上戦闘は厳しい。これでは死地に向かうようなものである。

 アメルの考えていることが分からない。レイン・ドゥクスアを倒したいのなら、私かサツキに相談すればいいのに――


「どうして、アメルはレイン・ドゥクスアに挑んだんだろう」

「それを聞くために、私たちはアメルを助けなければいけないんです。無事に助けることができたら、美味しい料理でも食べながら話し合いましょう」

「うん」


 私とサツキは冒険者協会を飛び出すと、ギルドハウスに戻るのだった。


レイン・ドゥクスア。

明らかにやばそうな名前が出てきましたね。

どんな理由で、アメルは1人だけでレイン・ドゥクスアの討伐に行ったんでしょうね。


――遅くなりましたが。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!

みなさんに楽しんでいただけることが、執筆活動の原動力になっております!!

これからもよろしくお願いします!!

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