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『仲間』

「アメルが帰っていない?」

「うん、帰っていないどころか、ギルドハウスの鍵まで開いていたんだよね。サツキなんか知らない?」


 1時間に及ぶ、死闘の末――

 正気を取り戻したサツキに、私はアメルが帰宅していないことを説明していた。

 暴走の原因であるサレヴィアには社員寮に帰ってもらったので、しばらくサツキが暴走することはないだろう。


「私がメイド集会に行ったのは、アメルの出かける前なんですよね。用事があるとは言っていなかったので、留守を任せていたんですよ」

「そうか……」


 サツキが知らないとなれば、冒険者協会に行くしかない。

 夜になると店は閉まってしまうので、買い物に出かけている可能性はない。そうなると、依頼に出かけているか、散歩していることになる。

 散歩なら心配ないが、依頼になると話が変わってくる。夜は視界が悪いだけでなく、魔物が活発化するので、1人だけで外出するのは危険なのである。

 ムンちゃんを召喚できたら問題は無いのだが、アメルは不意を突かれるとパニック状態に陥ってしまい、ムンちゃんの召喚ができなくなってしまう。


「しかし、戸締りを忘れるとは不用心の極みですね。幸いなことに空き巣には入られていないので、20分の説教で済ませてあげましょう」

「優しいね」

「人間なら誰だって失敗します。私でも、カレンでも、貴族でも、皇帝でも、失敗をしたことのない人間はいませんからね」


 天界では、失敗=死だった。

 任務を遂行できなかった天使兵は、ソフィエルに処刑される。

 私と後輩の部隊に所属している天使兵は守れたが、ソフィエルの部隊になるとそうはいかなかった。拷問が趣味のソフィエルは、自分が満足するまで天使兵を拷問してから殺すのである。それが見ていられなかった私はソフィエルを焼き殺そうとしたが、神の権限でハレスに止められてしまった。


「私の故郷とは、天と地の差があるね」

「カレンの故郷では、失敗したらどうなってしまうのですか?」

「処刑だよ」


 真顔で即答すると、サツキは目を見開く。


「……処刑ですか?」

「任務に失敗したら有無を言わせず独房に連行されて、好き勝手に拷問された挙句、死んだらゴミのように捨てられる。私の故郷では、それが当たり前のことで――」

「もういいです」


 会話の途中で、サツキから優しく抱きしめられた。


「どうしたの……?」

「カレンはよく頑張りました。そのような存在する価値も無いクソみたいな故郷で、カレンは今までよく頑張りました。どうか安心してください。私たちのギルドではそういうことはありませんから。失敗したらみんなで食事でもしながら失敗した理由を考えて、これから失敗しないようにみんなで協力すればいいんです。だから、もう故郷のことは忘れましょう。辛い過去は忘れましょう。頑張ったカレンにはその権利があります」


 優しい声で語りかけてくるサツキ。

 サツキは優しい子だ。他人のために泣いてあげられる本当に優しい子だ。私も天界のことは忘れたい。


 ――忘れたいけど。


「忘れないよ。故郷には仲間がいるから」

「それでは、仲間を救いに行きましょう。私も助太刀します」

「無理だよ。私では天地がひっくり返ってもアイツを殺せない。アイツの前に立った瞬間、今度こそ殺される」

「今度こそ、ですか。勇気を出して、カレンは戦ったんですね」

「太刀打ちできなかったけどね。危うく殺されかけたけど、奇跡的に生き延びたよ」

「よかったです。カレンが死ななくて」

「ありがとう」


 熾天使の私では、神の権限に逆らえない。

 私の知るかぎりで、神であるハレスを殺せるのは魔王と竜王だけ。

 あいつらが手を貸してくれるとは思えないし、領土を守るためとはいえ、数万の命を奪った私には頼む資格すらも無い。


「カレンの実力で歯が立たないとなれば、私では時間稼ぎにもならないようですし、カレンの仲間を救えるように魔法の腕を上げなければいけませんね。カレンの仲間は私の仲間でもありますから。カレン、冒険者協会に行きましょう。大切な仲間であるアメルを捜しに行くために」

「うん」


 私はオーガの素材を抱えると、サツキと冒険者協会に走るのだった。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!

みなさんに楽しんでいただけることが、執筆活動の原動力になっております!!

これからもよろしくお願いします!!

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