『最高の笑顔』
「悪いわね、商業都市まで送ってもらって」
「お気になさらず。オーガの討伐はサレンに任せっきりでしたから。どうか送迎くらいさせてください」
オーガ討伐後――
フローラが通信魔道具で手配した航空サービスで、私たちは商業都市に帰っていた。
航空サービスは、数日前にサコレット森林の調査依頼で利用しているが、今回は内装のレベルが違う。鋼鉄の籠じゃなくて、豪華な部屋である。
高級感のある椅子とテーブル。氷魔法で保冷された箱には飲み物が入っており、バスケットには美味しそうな果実が用意されている。
「うま……」
「気に入ってくれたか。そのリンゲルは王都の果実屋で売られている最高級品だ。気を付けないと、その味を覚えたら戻れなくなるぞ」
私の笑顔を見て、自慢気にするコルテリーゼ。
私が口にした、リンゲルの果実。噛んだ瞬間、甘い果汁が溢れ出してくる。精霊の森で採ったものとは糖度が別物である。
「この果実酒も美味しいわね」
フローラに勧められた果実酒を飲んで、サレヴィアが瞳を輝かせる。
「サレンさんが飲まれているのは、マスカーティアの果実を発酵させたものです。アルコール度数も低くて飲みやすいんですよね」
「うん、気に入ったわ。商業都市の果実屋では見かけないけど、これは王都にしか売られてないのかしら?」
「王都の果実屋にしか売られていません。マスカーティアは希少ですからね」
「それは寂しいわね。来週の休日は、王都に買い物でも行こうかしら」
「ぜひぜひ、いらっしゃってください」
そういえば、私も王都には行ったことがない。王都にも冒険者協会があるようだし、帰ったらアメルとサツキにも教えてあげようか。
「それにしても、カレンとサレンは美味しそうに食べるよな。食事の様子を見ているだけで空腹感を覚えてしまう」
「私達の故郷には、美味しいものが少なかったからね」
「私達ってことは、2人は故郷が同じなのか」
「まあ、そんな感じかな」
天使と悪魔。
食事を必要としない種族が住む世界に、食文化は存在しない。天界に食堂があったのは、私が無理を言ったからである。竜界には食文化があるらしいけどね。
「2人の出身はどこなんだ?」
しばらく会話が止まって――
グラスに4杯目の果実酒を注ぎながら、ほんのりと頬を赤く染めたコルテリーゼが話を切り出してきた。
「ごめんけど、それは教えられない。国から禁止されているんだよね」
「出身地を教えてはいけないなんて、そんな規則あるわけないだろう。ケチなこと言ってないで教えてくれよ」
コルテリーゼが深掘りしたとき、フローラが咳払いする。
その瞬間、我に返るコルテリーゼ。
「コルテリーゼ、素性の詮索はマナー違反ですよ」
「フローラ様、申し訳ありません。酔いで思考能力が鈍っていました。カレンとサレンも悪かったな」
「気にしなくていいよ」
「果実酒に免じて、特別に許してあげるわ」
果実酒を気に入らなかったら、サレヴィアはどんな要求をしていたのか。指を切り落とすとか、片目を抉り取るとか、拷問紛いのことをやりそうである。
「フローラ様、商業都市が見えてきました。御友人の方々は、荷物の準備をお願い致します」
数時間が経過した時、伝声管から運転手の声が聞こえてきた。
到着の知らせを聞いて、フローラが口を開く。
「カーテンを開けたら、商業都市の夜景が見えますよ」
フローラに勧められ――
カーテンを開けると、商業都市の夜景が飛び込んできた。
地上からは見られない景色。人間界に来てからは1度も空を飛んでいないので、なんだか新鮮に思えてくる。飛び方を忘れても困るし、たまには深夜に空の散歩でもしておこうか。
「フローラ、あそこで降りてもいいかな。林の中に1件だけログハウスがあるところ。ログハウスの周りは整備されているから分かりやすいはずだよ。あそこは私のギルドハウスなんだよね」
「じゃあ、アタシもそこで降りようかしら。依頼への同行を知られたら減給されそうだし」
私に続き、荷物の準備を始めるサレヴィア。
商業都市から離れた林にある私達のギルドハウス。最初は木だらけで荒れ放題だったが、色彩の集い総出で周囲を整備したので、空中からでも分かりやすい。
「運転手、2時の方角にある林に着陸してください。林の中にログハウスが見えるはずです」
「あそこのログハウスですね!! 承知致しました!!」
フローラの指示が届いたのか、伝声管から運転手の声が聞こえてくる。
「ギルドハウスに住んでいるということは、カレンはギルドに所属しているんですね」
「設立直後だから、メンバーは3人しかいないけどね」
「ギルドメンバーは、最低でも5人は欲しいですよね。カレンたちがギルド対抗戦に参加するならばの話ですけどね」
軽く拳を撃ち出しながら、フローラが微笑んでくる。
王都で開催されるギルド対抗戦に参加するためには、5人のギルドメンバーが必要である。
アメルとサツキに相談して、増員も視野に入れないとね。
「ギルド名はなんだ?」
ギルドメンバーの増員を考えていると、コルテリーゼが首を傾げてきた。
「色彩の集いだよ。真っ白なギルドに個性という色彩を持ったメンバーが集まってほしい。そんな願いから名付けたんだよね」
「最高の名前だな」
「私も気に入りました」
「アンタにしては、なかなかやるじゃない」
「色彩の集いいぃぃぃぃぃぃっ!!! 俺も気に入りましたぞぉぉぉぉぉっ!!!!」
コルテリーゼ、フローラ、サレヴィアに続き、伝声管から運転手の叫び声が聞こえてきた。
「えへ、えへへ……ありがとう、うれしいなぁ」
「まったく、最高の笑顔を浮かべちゃって……ほんと、みんなにも教えてあげたいわね。アンタは感情の無い殺戮兵器なんかじゃなくて、嬉しいときは笑う、感情のある子だってこと」
満面の笑みを浮かべる私を見て、サレヴィアは残念そうに呟くのだった。
サレヴィア好きいいいいいいいいいっ!!!
すいません、取り乱しました。
皆様が推せるようなキャラは見つかりましたか? まだ見つからないよって方も安心してください。これからどんどん新キャラが出てきます。
遅くなりましたが――
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
みなさんに楽しんでいただけることが、執筆活動の原動力になっております!!
これからもよろしくお願いします!!




