表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/123

『凍結事件』

 階段を上がって――

 廊下を進んでいくと、ギルド掲示板が設置されている部屋に辿り着いた。


「結構いるね~」


 酒場の常連客だけでなく、普段は依頼に出かけていて商業都市では見かけることのない冒険者たちがギルド掲示板を見に来ている。

 彼等の装備は傷だらけになるまで使い込まれている。装備の傷は、戦場で生き残れたという強者の証明である。


 ――戦ってみたい。


「カレン、どうして魔法を起動させているのですか?」


 サツキに声を掛けられ、私は気づく。

 どういうわけか、私は知らないうちに『銀ノ焔ぎんのほむら』を起動させていたらしい。


「うわ、どうしてだろう……」


 私は慌てて『銀ノ焔ぎんのほむら』を停止させた。冒険者協会の施設内では、魔法戦闘が禁止されている。規則を破ったら3日間の牢獄入り。あそこでサツキが止めてくれなかったら、私は『銀ノ焔ぎんのほむら』をどうしていたのか。


「もしかして、貴方は――」

「カレン!! サツキちゃん!! はやくはやく~!!」


 サツキが物を言いかけたようだが、アメルの声で掻き消されてしまった。


「ごめん、今なんて言った?」

「気にしないでください。なんでもありませんから。アメルが呼んでいますし、他の方々に騒音被害が出ないうちに早く行きましょう」

「う、うん……」


 サツキに手を引かれ、私はアメルの元に向かうのだった。



「初めてのギルド依頼、どれにしようか?」


 隙間なく依頼書が貼られたギルド掲示板で、私達は『色彩の集い』最初のギルド依頼を選んでいた。

 個人依頼と違って、ギルド依頼は種類が豊富である。私達が見ている範囲には、馬車の護衛。盗賊団アジトの殲滅。未開のジャングル探索。異常現象の調査といった、複数人で取り組むことを前提としている依頼が集まっている。


「これは除外だね」

「最初の依頼は難易度が高いですからね。賢明な判断です」


 私とサツキの判断で、盗賊団アジトの殲滅は除外することになった。

 私とサツキならともかく、アメルに人間は殺せないだろう。ムンちゃんの召喚を躊躇したり、仮にできたとしても、とどめを刺せずに殺されてしまう可能性がある。


「それじゃあ、未開のジャングル探索はどうかな? みんなで探検とか楽しそうだよ?」

「おやおや、どうやらアメルさんはマンイートフラワーを忘れたようで……」

「ジャングル中止!!」


 私に笑顔で言われ、アメルが依頼書を掲示板に貼り直す。


「2人とも、マンイートフラワーに苦い経験が?」


 マンイートフラワーを嫌う私とアメルを見て、サツキが首を傾げてきた。

 そういえば、サツキと知り合う前だったか。


「冒険者になって、最初の依頼で受けたんだよ。その頃はマンイートフラワーが植物に擬態しているとか知らなくて、高温多湿の森林で1時間くらい彷徨っていたよ」

「心中お察し致します」


 あれ以来、私達は魔物討伐の前には図鑑を読むようになった。そう考えると、あれは素晴らしい経験かもしれない。ありがとう、今は亡きマンイートフラワー師匠。


「ジャングルが厳しいなら、異常現象の調査にでも行きますか?」


 マンイートフラワー師匠に敬礼していると、サツキが1枚の依頼書を剥がして私達に見せてきた。


「森が凍り付け!?」


 依頼書を見て、アメルが驚愕の声を上げる。

 森が凍り付けなど、通常では起こり得ない現象である。原因を予想するなら、異常気象か、魔物の仕業か、その2択に絞られてくる。


「被害に遭ったのは、王国の西部にあるサコレット森林です。サコレット森林は薬草の宝庫で、回復薬の調合に欠かせない貴重な薬草が生えています。しかし、3日前に起こった異常現象で森林全体が凍り付き、その影響で薬草が枯れてしまい、医療業界が大打撃を受けているそうです」


 サツキは依頼内容を読み終わると、喉が渇いたのか軽く咳払いした。


「秋になったばかりで、森が凍り付くとか異常にも程があるよね」

「そうですね。森林全体が凍り付くなど極寒の冬でも起こり得ないことから、第三者の関与を疑うべきです。しかし、森林全体の凍結など、氷魔法を使える魔道士でも不可能です。そうなると、犯人は氷を操る大型魔物でしょう」

「氷の魔物には炎魔法が有効。炎魔法といったら、私達のギルドに超が付くほどの適任者がいるよね?」


 アメルとサツキが、私に微笑みかけてきた。


「私?」

「うん、カレンの炎魔法なら魔物にも対抗できそうだし、森林を凍らせている氷だって溶かせるんじゃない?」


 瞳を輝かせながら、アメルが見つめてくる。

 アメルの言うとおり、魔力を燃やし尽くす『銀ノ焔ぎんのほむら』なら氷を溶かせるだろう。しかし、そんなことに創造神から授けられた聖なる焔を使うわけには――


「なんとびっくり、報酬金は300万みたいですよ。冬を越すためには資金が必要ですから、これは受けておきたいですね」

「うぐぐ……」


 依頼書を揺らしながら、サツキが微笑んでくる。


「冬になると魔物は冬眠しちゃうから依頼も減っちゃうし、寒い日はあったかいお茶でも飲みながらギルドハウスでのんびりしたいよね?」


 アメルとサツキに詰め寄られ――

 逃げ場が無いことを察した私は、観念してサツキから依頼書を受け取るのだった。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!

みなさんに楽しんでいただけることが、執筆活動の原動力になっております!!

これからもよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ