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『ギルド依頼』

「んあ……?」


 目を覚まして、視界に入ってきたのは板張りの天井だった。カーテンの隙間から射し込む陽光。洗い立てのシーツの匂い。周囲を見渡すと家具が置いてあり、生活感に満ち溢れている。起床直後で頭が回らなかった私は見慣れない風景に困惑していたが、時間が経過するに連れて段々と思い出していく。


 ――そうか、私達のギルドハウスか。


 中級冒険者になったことで、私達――『色彩の集い』はギルドハウスを手に入れたのである。

 家賃半額という、破格の条件で。

 ぴょこんと跳ねた寝癖を押さえ、欠伸をしながらリビングに続く階段を下りると、サツキがキッチンで朝食を作っていた。


「おはよう、サツキは早起きだね……」

「メイドは早起きが鉄則ですからね。目覚ましにシャワーでも浴びられてはどうですか? 上がられる頃には朝食も完成していますので」

「うん、そうする……」


 自分の部屋に戻ると、着替えとタオルを手にして浴室に向かう。

 浴室に入って、水玉模様のパジャマを脱ぐと、火属性と水属性の魔法が封じ込められた魔道具に自分の魔力を流し込んで、シャワーからお湯を出す。


「あったか……」


 お湯を浴びながら、私は思う。

 人間界に来て、そろそろ2週間くらい。落下地点の森林でアメルと出会ってから、毎日が最高だった。熾天使という立場上、仲間と冒険することなんて無かったし、楽しく食事をする機会も無かったし――


 ――ほんと、アメルには感謝しかないよ。


「おはよ……」


 シャワーを浴び終え――

 リビングに戻ると、着ぐるみ姿のアメルが朝食を取っていた。生活必需品を買うときに商業都市で購入した、火竜を模した着ぐるみ。綿が詰められており、もこもこして着心地が良さそうである。


「おはよう、しっかり眠れた?」

「眠れたけど、朝からサツキちゃんに殺されかけたよ……」

「なにやったの……?」


 アメルの発言を聞いて、私はサツキに視線を送る。


「朝食が完成したので、軽く身体を揺らして起こそうとしたら、寝惚けたアメルに飛び掛かられましたので、反射的に蹴り飛ばしてしまいました。なんとか蹴る直前で威力を落としましたので、怪我は無いと思いますが……」

「うわ、おでこ赤くなってる……」


 着ぐるみのフードを取ると、アメルのおでこが赤くなっていた。

 たんこぶは無いので、放置しても問題ないだろう。


「ぐすん……」

「よしよし、寝惚けていたとはいえ、飛び掛かったアメルも悪いから、今度は蹴られないように自分で起きようね」

「カレンは、アメルの扱いに慣れているんですね」


 アメルのおでこを撫でていると、サツキが興味深そうに見つめてきた。


「2週間の付き合いだからね……」

「なるほど……」


 私の言葉に、サツキは納得したように頷いた。



「ギルドハウスの片付けも済んだようですし、『色彩の集い』でギルド依頼を受けてみませんか?」


 朝食を食べ終え――

 3人で冒険者協会に行くと、唐突にリンから提案された。


「「「ギルド依頼?」」」

「3人同時に首を傾げるなんて、息ぴったりですね……ギルド依頼とは、個人ではなくギルドで受ける依頼のことです」


 3人同時に首を傾げる私達に、リンが苦笑しながら言ってくる。


「個人依頼と異なる点は?」

「そうですね。大勢で受けることを前提とした依頼なので、個人依頼よりも難易度が高く、報酬の額も多いです。皆さん、あちらを見てください」


 サツキの質問に答えると、リンが2階に続く階段を指差した。


「まだ皆さんには教えていませんでしたが、ギルド依頼が貼り出されている掲示板は冒険者協会の2階にあるんですよ」

「初めて知ったよ……」


 リンの言葉を聞いて、アメルが照れくさそうに笑っている。

 そういえば、私も冒険者協会の2階には行ったことなかった。どうなっているのか気になってはいたが、多忙で行く機会が無かったのである。


「私から話を聞くよりも、実際に見てきたほうが理解しやすいと思うので……大切な用事とか無ければ、これから行ってみてください」


 リンに促され、私達は2階に向かうことにした。


最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!

みなさんに楽しんでいただけることが、執筆活動の原動力になっております!!

これからもよろしくお願いします!!

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