『色彩の集い』
「リンさん!! ギルドを作りにきたよ!!」
「ギルド設立ですね!! それでは、こちらの書類に必要事項の記入をお願いします!!」
受付に行き――
アメルが元気よくギルド設立を申し出ると、リンから書類と万年筆を渡された。アメルは万年筆を握ると、指定された通りに書き進めていく。
それにしても、アメルは字が綺麗だな。サツキも同じことを思っているのか、興味深そうな表情を浮かべている。
「サツキちゃん、家名を教えて?」
メンバーの名前を書く欄で、アメルが万年筆の動きを止めた。私とアメルの名前は記入されているが、サツキのところは空白になっている。
「そういえば、名前しか言っていませんでしたね。私はサツキ=サイオンジです」
「珍しい家名だね」
「東大陸の出身ですからね」
「東大陸って、古代遺跡と海鮮料理が有名なんだよね!! 冒険者になったら仲間と行きたかったんだよね!!」
東大陸の話を聞いた瞬間、アメルが瞳を輝かせた。
古代遺跡と海鮮料理か。私が好きな単語が並んでいるじゃないか。冒険者に慣れてきたら行ってみるのも悪くない。
「それでは、資金に余裕ができたら3人で行きましょうか。私が案内しますよ」
「「賛成!!」」
計画が決まると、アメルが記入を再開した。
「ギルドマスターは私で良いよね?」
「大丈夫だよ」
「私も問題ありません」
ギルドマスターはアメルに決まった。
天真爛漫なアメルがギルドマスターになったほうが、他のギルドと友好関係を結びやすいし、新規メンバーを集めるときにも活躍してくれそう。
「ギルド名はどうする?」
万年筆を置き、アメルが訊いてくる。
こだわりとか無いし、ギルドマスターのアメルに決めてもらうか。
「アメルが決めていいよ。ギルドマスターだし」
「右に同じです」
アメルなら、適度にそれっぽい名前を決めてくれるだろうと、私とサツキが油断していた時、アメルの桜色の唇からとんでもないギルド名が飛び出してきた――
「ハンバーグ大好き3姉妹にしよう!!」
「「却下!!」」
私とサツキの声が重なった。
「だって、私たち全員ハンバーグ好きじゃん? 祝勝会の時、サツキちゃんもハンバーグばっかり皿に乗せてたし……」
「好きですけど!! 大将のハンバーグは美味しくて好きですけど!! それだけは絶対に却下です!!」
必死に否定するサツキ。
クールなサツキが悲鳴を上げるくらい、アメルのネーミングセンスは壊れていた。
「私はハンバーグ大好き3姉妹が良いと思うんだけどな……それにしても、私の記憶違いかな。2人に名前の案を訊いたとき、私の独断で決めていいって……」
「言いました!! 間違いなく言いました!! 反省します!! 土下座でもなんでも致しますので、ハンバーグ大好き3姉妹だけは辞めてください!!」
悲しそうな表情を浮かべるアメルに、本気の眼差しで改名を要求するサツキ。
サツキの想いを理解したのか、アメルは笑みを浮かべると――
「それじゃあ、唐揚げ大好き3姉妹――」
「アメル、少し3人で話し合いましょうか。受付の方、申し訳ありませんが、あちらの席でギルド名を話し合っても?」
「ぷくく……混み合って……ぷくく……いますので……ぷくく……10分以内で……ぷくくく……お願いします……」
リンは両手で顔を覆いながら、笑いを堪えようと必死になっていた。
◇
3人でテーブルを囲みながら、緊急会議が行われていた。
緊張が走るテーブル。なぜならここで良い案を出さなければ、アメルの提案したハンバーグ大好き3姉妹。もしくは唐揚げ大好き3姉妹。運が悪ければ、それよりも酷い名前になってしまうからである。
――なんとしても、それだけは避けなければならない。
「10分よぉぉん♡ それじゃあ、ギルド名を聞いちゃうわよぉぉぉぉん♡」
会議終了を告げたのは、話を聞きつけて厨房から抜け出してきた酒場の大将である。
テーブルの周りには暇を持て余した冒険者たちが集まっており、ワイワイと賑わっている。
「最初はアメルちゃんよぉぉぉぉん♡ ステキな名前を聞かせてちょうだぁぁぁぁい♡」
酒場の大将が指名すると、全員の視線がアメルに集中した。緊張しているのか、アメルは真剣な表情を浮かべている。
「ムンちゃんもふもふパラダイスで良いと思います!!!」
「「「だはははははは!!!!」」」
アメルの発言が酒場に響き渡ると、空間が笑いで包まれた。
「やっぱりアメルちゃんは期待を裏切らねえ!!」
「俺は好きだぜ!!」
「私もムンちゃん触りたーい!! 私もギルド入っていい?」
「ムンちゃんも良いけど、私はアメルちゃんのおっぱいを触りたいわ……誰よ、アンタたち、アタシをどこに連れて行くわけ? それはダメよ……それしたら死んじゃう……痛ぁぁああぁぁぁああい!!!!!」
女性が黒いローブを着た集団に連れて行かれたけど、気にしないでおこう。
「クソが……汚ねえババア如きにアメルちゃんのふにふにおっぱいを触らせるわけねえだろうが……はあぁぁぁい♡ 次はカレンちゃんよおぉぉぉん♡」
気のせいだろうか。
酒場の大将が、とんでもないことを言っていた気がする。
「私は、色彩の集いを提案するよ」
「「「普通だ」」」
冒険者たちの声が重なった。
「名付けの理由は、まだ何も無くて真っ白なギルドに個性という色彩を持ったメンバーが集まってほしい。そんな感じだね」
「「「普通だ」」」
「アタシは好きよぉぉぉん♡」
酒場の大将、死んだら天国行きを約束しよう。
そして、声を揃えて普通とか言ってきた奴等、おまえらは地獄行きだよ。
「最後は私ですね」
地獄行きメンバーの顔を覚えていると、ようやく順番が回ってきたサツキが口を開いた。
「ステキな名前をお願いねぇぇぇぇん♡」
「私は、メイドのメイドによるメイドのためのメイドハウスを提案します。ギルドメンバーはメイド服を着用して――」
「そ・れ・で・は~~~♡ みんなドキドキ~~♡ 結果発表に入るわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん♡」
「おい」
雑に扱われ、怒りを露わにするサツキ。
「こ・れ・か・ら♡ みんなで多数決を開始するわぁぁぁぁん♡ み・ん・な♡ そこにある紙に番号を書いて、終わったら折り曲げてアタシに渡してちょうだぁぁぁぁぁい♡ アメルちゃんなら1番でぇ♡ カレンちゃんなら2番でぇ♡ サツキちゃんなら3番よぉぉぉぉぉん♡」
数分後――
全ての投票用紙が集まって、最終結果が出た。
――『色彩の集い』
1票差で、ムンちゃんもふもふパラダイスに勝利したらしい。
本当に危なかった。
カレンたちのギルド名は、メイドのメイドによるメイドのためのメイドハウスに決定しました。
あれ、違うって?
色彩の集いでしたか。大変失礼いたしました。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
みなさんに楽しんでいただけることが、執筆活動の原動力になっております!!
これからもよろしくお願いします!!




