『鎮焔』
「さて、誰からぶっ殺してやろうかな」
わたし・アズリオン・ルーワカに視線を送りながら――
慣れた手つきで、始剣テリエーラをくるくると回転させるルヴィエラ。
「「……」」
ルヴィエラと視線が合うたび、わたしたちはぴくりと反応してしまう。
「カレイア、ルーワカ、私から離れるなよ。誰か1人でも離れたらそいつは死ぬ」
「3界戦争時のルヴィエラが可愛く思えるね。すっげえ殺気」
「ど、どど、どうしましょう。殺気が凄すぎておしっこ出ちゃいます。私ってここにいてもいいんですかね? 明らかに場違いだと思うのですが?」
身体を震わせ、股を手で押さえるルーワカ。
「場違いではない。貴様の時間魔法が無ければ勝率皆無だ。頼りにしているぞ」
「ひいい」
わたしとアズリオンですらビビってしまうほどの殺気を向けられておきながら、気を失わずにいられるとは大したものである。そこらへんの悪魔だったら、ルヴィエラと目が合うだけで意識を失うだろう。
「決めた」
ぽつりと呟く。
その瞬間、ルヴィエラの姿がわたしの視界から消えた。
「ちょまっ……」
「いけないっ――『永永無窮』!!」
ルーワカの魔法――『永永無窮』は、時間の流れを操ることができる。そのおかげで、わたしはルヴィエラの姿を視界に捉えることができた。
「わたしだと思わせて……やっぱり最初に狙うのはルーワカだよね」
「へえ」
ルーワカの首めがけて勢いよく振るわれた始剣テリエーラを、わたしは聖槍アルジェーレで受け止めた。
「時間が遅くなった君なら、わたし1人でも戦える」
「どうかな」
ルヴィエラは聖槍アルジェーレを右手で掴むと、大きく口を開けた。
劫火を撃ち出すつもりである。
「やっべ……」
「そうはさせん――『世界構築』私の世界。海の世界。全てを破壊する大津波よ」
「くっそがぁ……厄介だぜマジでよぉ……」
世界が変わり、海の広がる世界。
超巨大な津波が、ルヴィエラを容赦なく飲み込んでしまう。大津波の前では、ルヴィエラの劫火も存在を保てない。
「チャンス到来!!」
ここが好機と判断したわたしは右手で指を鳴らして聖槍アルジェーレを巨大化させると、水中で動きの遅くなったルヴィエラに撃ち出した。
「ちっ……」
「やった!! 右手を落とせたわ!!」
舌打ちするルヴィエラと、歓喜の声を上げるルーワカ。
ルヴィエラは完全には躱しきれず、聖槍アルジェーレによって右手を失ってしまった。
「カレイア、決めに行け!! 先程のなんとかの弓とやらで!!」
「わたしの呼びかけに応じよ――『終銀ノ焔弓』」
わたしの背後に現れた、銀色の焔で生成された巨大な弓。
神界最強クラスの実力を持つ破壊神シーヴァルカさんに全治3日の怪我を負わせたわたしの最強武器。
「聖槍アルジェーレ装填完了。これで決めてやる。100本撃ち込まれたらさすがの君でも死んでくれるよね」
わたしの全魔力を使った最大火力の一撃。
ルヴィエラは絶体絶命の状況になってもデウスノーヴァから奪い取った生命魔法を使うことはなかった。
使えない理由があるのなら、使えるようになる前に殺しておかなければならない。使われてしまえば万に一つの勝ち目も無い。
「ぐ、ぐう、ここで死ぬわけには……」
「逃がさないわ。あなたにはここで死んでもらう――『終告ノ魔時計』」
「これで終わりだ、竜王ルヴィエラ――『世界消滅』」
「おまえらあぁぁぁぁ!!!」
海の世界が消え、魔界の風景が飛び込んでくる。
ルーワカとルヴィエラには大きな魔力の差があるため、時間を止められるのは精々2秒。
しかし、カレイアにはそれで充分。
「力の出し惜しみは死を招くよ。さようなら」
わたしが指を鳴らすと――
100本の聖槍アルジェーレが一斉に撃ち出され、ルヴィエラを串刺しにしようとする。
ルヴィエラが時間を取り戻したのは、聖槍アルジェーレが目と鼻の先にまで到達したときだった。この状況、誰もがルヴィエラの敗北を確信したことだろう。
――しかし。
「なんちゃって――『生命共有』」
「えっ」
ちらりと舌を出すルヴィエラ。
その言葉によって、わたしは絶望のどん底に落とされる。
「生命魔法って、生命を奪う魔法じゃなくて生命を与える魔法なんだよね。あと、ちょちょいとこんなふうに相手と生命を共有したりね。私が死ねばおまえも死ぬんだわ。まあ、私は生き返れるんだけどね。回数は限られるけど」
「マジかぁ……」
「んじゃ、一緒に死のうぜ」
ルヴィエラの身体を聖槍アルジェーレが串刺しにすると同時、わたしの天輪と白翼が消滅してしまうのだった。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
あ、ええっと。
まさかのまさか、まさかのカレイアちゃんヤバい状況だったり。
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