『遊びの時間は終わり』
「っふうぅ……」
深く切り裂かれたわたしの身体。
お気に入りのパーカーもばっさりいかれており、控えめな胸が露出している。
これはひどい。わたしの血液がぽたぽたと地面に落ちていく。
「それ、致命傷じゃね」
始剣テリエーラを鞘に納め、にやにやと笑うルヴィエラ。
「ふむ、確かにそうだね。これは致命傷だ。早く治さないと私が死んでしまう」
「……ッ!?」
わたしが指を鳴らすと、銀色の焔が深く切り裂かれた傷を燃やし始める。
銀色の焔が消えると、わたしの傷は完全に塞がっていた。その間、僅か5秒。その光景に、双眸を見開くルヴィエラとアズリオン。
「さすがは始まりの剣。傷の塞がりが遅い」
「きゃははっ、いきなり雰囲気変わるじゃん。なになに、久しぶりに死にかけて殺戮天使の本能が呼び起こされた感じ?」
「やはり貴様はそうでなくては」
嬉しそうな表情を浮かべる、ルヴィエラとアズリオン。
「じゃあ、本当に殺戮天使に戻ったのか確かめてみようかな」
ルヴィエラは始剣テリエーラを鞘から抜くと、わたしに切りかかろうとしてくる。
3界戦争の時よりも速度が上がっている。デウスノーヴァを喰ったというのはどうやら事実らしい。
「神の力を手に入れたんだから、確かめるまでもないよね」
「きゃはっ……」
勢いよく振り下ろされた始剣テリエーラを、私は右手だけで掴み取る。
「はあ、よくも可愛い私を痛めつけてくれたね……おまえのせいでわたしが出なきゃいけなくなったじゃん。私が死んだらいろいろヤバいんだからさあ」
「知らねえよ」
「知るんだよ」
わたしはルヴィエラの腕を掴むと、激しく振り回してアズリオンに投げつけた。
「きゃははっ!! 間違いねえ!! 殺戮天使だわこれ!!」
「おい!! 貴様なぜ私の方に投げる!!」
「私を裏切った罪は重い。2体まとめて灰にしてやる――『焔銀ノ天舞』」
2体の距離が近いことを確認し、私は追い打ちをかける。
銀色の焔が渦を巻き、超巨大な竜巻と化す。
「きゃははは!! これアレでしょ!! 魔力の有り無しとか関係ねえやつ!! 魔力を纏ってないのにアッツイもん!!」
「説明をさせてくれアレは裏切ったわけでなく貴様の本気を出させるために――」
「きゃはははははは!! あれは完全に裏切り行為だっての!!」
「ルーワカァ!! カレイアの時を止めろォ!!」
「お断りします。死にたくありませんから。そもそも自業自得では。カレイアちゃんに本気を出させるためとはいえ、あのような方法を」
「ルーワカァ!!」
悲鳴を上げるアズリオン。
「そうそう、そうこなくちゃ。デウスノーヴァの力を手に入れた意味がねえってもんよ」
「……」
大きく膨れ上がるルヴィエラの魔力。
なるほど、遊びの時間は終わりってわけか。
「おまえの焔とあたしの炎。どっちが強えか確かめようぜ」
「……」
全てを焼き尽くすルヴィエラの紅色の炎と、わたしの銀色の焔がぶつかりあう。
当然のことだが、攻撃の威力はルヴィエラが上である。元々から神に匹敵する力を持っているルヴィエラに神の力が加わったともなればその強さは計り知れない。
「私を忘れてはいないか――『世界構築』」
「ちっ、めんどくせえ……」
構築されていく、アズリオンの世界。
アズリオンの世界に悪影響を及ぼさないよう、わたしは銀色の焔を消滅させるとルヴィエラの紅色の炎をひらりと躱した。
「私の世界。重力の世界」
「うっく……」
高重力の世界。
重力に耐えられなくなったのか、ルヴィエラが凄い速度で落下していく。
「厄介極まりないね。アズリオン。てか、君ほんとどっち側なの」
「魔界は貴様と手を組んでいると言っただろう」
「また、あんな真似したら殺すから。身動きが取れない今のうちに仕留めに行こうか。わたしの呼びかけに応じよ――『終銀ノ焔弓』」
「初めて見る武器だな」
わたしの背後に現れた、銀色の焔で生成された巨大な弓。
接近戦があまり得意ではないわたしは、この弓に幾度となく助けられてきた。最後に使用したのは破壊神シーヴァルカさんに稽古をつけてもらった時か。
「聖槍アルジェーレ装填、完了。いや、1台では足りないか」
ぱちんと指を鳴らすわたし。
その直後、聖槍アルジェーレが装填された『終銀ノ焔弓』が増殖していく。
「全て本物か……?」
「うん、魔力消費が激しいから50台までにしておくよ。聖槍アルジェーレを50本撃ち込まれたらさすがのルヴィエラでも死ぬよね」
「……」
顔を引きつらせるアズリオン。
「この形態も長くは保たないし、これで死んでくれたら嬉しいんだけど。いや、死んでくれないと困る」
ルヴィエラへと照準を合わせてわたしは右腕をぱちんと鳴らそうとするが、抵抗する素振りも見せないルヴィエラにわたしは違和感を覚える。
「どうした」
「アズリオン、さっきからおかしいなとは思っていたんだけど、ルヴィエラのやつデウスノーヴァを喰ったにしては弱すぎないかな。そもそもわたしたちがまともに戦えていることがおかしい」
「言われてみれば……何か企んでいるのか」
「少し様子を見てみよう」
わたしは『終銀ノ焔弓』を消滅させると、アズリオン・ルーワカと一緒にルヴィエラを追いかけていく。
「へえ、撃ってこねえのか……神すらも殺しかねない最大火力の一撃。あたしを殺せる唯一の機会だったかもしれねえぜ」
凄まじい勢いで地面に叩きつけられたにもかかわらず、減らず口を叩くルヴィエラ。
随分と余裕のあることで。
「悪いことを企んでいるのはバレバレだよ。つまらないことはやめるんだね。少しは本気を出したらどうかな。竜王ルヴィエラの力も大したことないっぽい?」
「きゃはは、言うじゃねえか。いいぜ、少しだけ見せてやんよ。あたしの新しい力。頑張って力を押さえねえと1発で殺しちゃいそうだからさあ……おまえら気を付けろよ?」
ルヴィエラの気配が変わった。
アズリオンもそれを感じ取ったのか、真剣な表情を浮かべるのだった。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
わたし強い。
聖槍アルジェーレを50本も撃たれたら跡形も残りませんね。
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