『劫火』
石造りの立派な城。豪華なシャンデリアで照らされた部屋。
私たちは、魔王城に到着した。
「ふう、転移成功」
「ありがとうね、アルバティンちゃん」
ふうっと息を吐くアルバティンに、ルーワカは笑顔でお礼を言う。
「すっごい、一瞬で景色が変わっちゃった」
「これが空間魔法……」
ポカンと口を開け、信じられないといった表情を浮かべるアメルとサツキ。
そんな2人を見て、嬉しそうにするアルンフィード。
「これで、アルルンの凄さが分かったよね。転移可能範囲は世界全体。魔力操作技術だけならカレイアたちにも負けてないんだ」
「アルバティン、魔界を出て私たちのギルドに入ってくれないかな……空間転移、超便利。ウチに入れば、世界最高クラスの朝昼晩3食と手作りお菓子。ふかふかのベッドで昼寝も付いてくるよ。どんな危険からも私が守ってあげるよ」
「ごくり」
「こら、そこ引き抜こうとしない」
「うひー」
アルバティンを勧誘していると、サレヴィアに冷気を浴びせられた。
私の反応を見て、アルバティンが心配そうにする。
「うわ、サレちゃんすっげえ。あのカレイアに魔法を撃っちゃうなんて……焼き殺されたりしない?」
「心配いらないわ。アタシとカレイアはごはん友達だから」
「うん、ごはん友達は殺さないよ。ちなみに、ごはん友達じゃなかったら焼き殺していたよ」
「ひっ」
私の笑顔に、身体をビクッとさせるサレヴィア。
「サレヴィアが人間界から持ち帰ってきたお菓子を食べてから、食文化への興味が出てきた。シュークリームが好き」
「シュークリームなら得意ですよ。王家御用達の超有名スイーツ店のパティシェにお菓子作りを教えたのは私ですから」
「ごくり」
サツキに言われ、ごくりと唾を飲み込むアルバティン。
食欲に負けそうになっているアルバティンを見て、危機感を抱いたのだろう。冷気を纏うサレヴィア。
「カレイアを落とした時点で、天使と悪魔にとって最も警戒すべきなのはアンタかもしれないわね。変態メイド。今のうちに凍らせておくべきかしら」
「ありがとうございます!!」
「そうだったわね。アンタはただのメイドじゃなくて世界最高レベルの変態メイドだったわね」
「おおっふうぅ……!! その目ですよその目ぇえぇ……!! ぐふ、ぐふふふふふふふふふふふふふふふふぅぅぅぅぅっひゃあぁぁっ……!!」
「こいつもうダメだわ」
サツキのことを、ゴミを見るような目で見つめるサレヴィア。
正直、私もきつい。サレヴィアと関わりさえしなければ、サツキはクールビューティで最高のメイドさんなんだけどね。
――変な動きをするサツキを見て、私が苦笑したときである。
魔力感知が反応した。
私は天輪と白翼を顕現させ、ルーワカに叫ぶ。
「ルーワカ!! いきなりだけど、3秒以内に超本気の時間魔法で今から飛んでくるクソみたいな炎ブレスを止めてくれないかな!! やってくれないと全員死ぬ!!」
「えっ!?」
ルーワカの返事を待つことなく、私は聖槍アルジェーレを握る。
「私が『銀ノ焔』で焼き尽くせるのは魔法だけだから!! ルヴィエラの劫火は無理!!」
「ルヴィって、ちょっ、まっ」
「早く!!」
ルーワカが指を鳴らすために、親指と中指をはじく動作。
その間、僅か1秒。
魔王城の壁が融解し、紅色の炎が見えた。
「『終告ノ魔時計』!!」
ルーワカの背後に、巨大な時計が現れた。
ルーワカの魔法――『終告ノ魔時計』は、時を奪う魔法である。時を奪われたものは身動きひとつ取れなくなってしまう。
「なにこれえええ!?」
「魔力で覆われた壁が一瞬でドロドロに!?」
炎の動きが止まったことで、私以外のメンバーたちが炎の存在に気づく。
「魔力の差がありすぎる……!! 4秒が限界だわ……!!」
「優秀で助かる」
「カ、カレイアちゃん……!!」
私は微笑むと、聖槍アルジェーレに魔力を流し込む。
そして、勢いよく床に突き刺した。
「聖槍アルジェーレ、第2形態――『聖銀ノ加護』」
聖槍アルジェーレを中心に、銀色の結界が私たちを包み込む。
時間停止が破られ、動き出す劫火。
「ごめんなさい!! 後はお願い!!」
「うっく……」
私が使える、唯一の守護魔法。
少しでも気を抜いたら、結界もろとも塵も残さず焼き尽くされてしまう。
魔王城がドロドロになっていく。魔界の悪魔たちは一瞬で焼き殺されてしまったのだろう、悲鳴すらも聞こえない。
「アルバティンちゃん!! どこでもいいから空間転移!!」
「さっきからやってる!! やってるんだけど!! そのワケの分からない炎のせいで魔粒子の流れが不安定!! 20秒は欲しい!!」
魔粒子の流れが不安定なせいで、私の守護魔法も長くは続かない。
まさかの不意打ち。
「ぐっ……!!」
ぴしり。
結界が嫌な音を立てる。
マズい。このままでは全員死ぬ。
最後の手段。出来ることなら使いたくはないが、ここで全滅するよりはマシだ。その時はエーテルノがどうにかしてくれる。
――と。
私が決断しようとした時、アメルがぱちんと手を合わせる。
「この状況で代償がなんだとか言ってられないよね。5つの封印、解除開始。第1の結界解除、成功。第2の封印解除、成功。第3の封印解除、成功。第4の封印解除、失敗。超高度召喚術式――起動、ネプシーちゃんおいで!!」
アメルの声が響くと同時、宝石の埋め込まれた三叉の槍を握る女神が現れたのだった。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
大変お待たせしました。
更新に時間が掛かってしまい、申し訳ございません。
モチベーションが低下していたので、少しだけ休憩させていただきましたが、ふとしたきっかけで小説のモチベーションが爆上がりしてきたのでなんとか最新話の投稿が出来ました。
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