エピローグ
支配の魔王襲撃は世界に大きな傷を刻んでから一年。
死者は二十万を超え、ハイネス、プリクト共に町村の八割が損壊しいまだに家がない人たちがたくさんいる。
それでも魔王の襲撃は悲惨なことだけではない。
西との友好関係が築かれたのだ。
東西を結ぶガノマノフ山脈には今現在トンネルが作られているし、貿易も行われている。
資材の提供も亜人達は惜しみなく援助してくれている。
そんな中、俺達は残党狩りをしていた。
「この先に魔王のアジトがあるから、姉さまを中心に包囲、それが完了したらクソ野郎が突っ込んで相打ちで」
「ルゥさんや、クソ野郎って俺のことか?」
「伝わってるなら間違ってない」
「ルゥちゃん、ウォルくんに暴言は吐かないの」
「仕方ないですよ、シャルさんをウォルさんに盗られたんですから」
俺がシャルと結婚してから一ヶ月、ルゥの暴言は日に日に増していった。
あんだけシャルの事が好きなら仕方ないかなとは思うが、せめて作戦中くらいは名前で呼んでもらいたい。
俺達九班は魔王討伐隊として十四人で再編された。
シャルとヴァレンシアの下に五人ずつに俺が一人、その三組をルゥが指揮している。
この九班の班長がこんなでいいのかと思うが、これはこれでうまくいっている。
「せめて作戦中だけでも名前で呼べよ。班長がそんなでいいのか?」
「あんたのことをクソ野郎以外に何て呼べと?」
「ウォルとかノーグルとか色々あるだろ?」
「そろそろ姉さま達が包囲できたから早く殺されてきて」
「酷い言われ方だけど、まあ行ってくるよ」
そのまま敵陣を中央突破し、魔王の討伐が終わる。
その日の夜、シャルに野営地から離れた所へ呼び出された。
「どうかしたのか?」
「ルゥちゃんのことごめんね」
「シャルが謝ることじゃないだろ。それに俺もルゥの気持ちはわからないわけじゃないからな」
「そうなの?」
「もしシャルが俺以外と結婚してたら俺もあんな態度取りそうだし」
それでもあそこまで言ったりはしないだろうけど。
「ルゥちゃんみたいなウォルくんは見てみたいかも」
「俺がやっても可愛くはないだろ」
ルゥは見た目が可愛いからまだ許せるけど、俺みたいな男が同じ対応してたら周りがドン引きだ。
「私は可愛いと思うよ。でも一生見れないね。私がウォルくん以外を好きになるなんてないから」
出会ってから大分経つけど、いまだにシャルの言葉にドキッとさせられる。
「シャル」
「ん?」
シャルの腰に手を回し、優しく自分に抱き寄せる。
吐息が交わる距離まで近づき、唇を近づけるとシャルの指に止められる。
「それは帰ってから。私も我慢してるんだからウォルくんも我慢ね」
「わかったよ」
遠征に出て三日、夫婦らしいことを何もしていないからキスくらいと思ったが、シャルに止められてはしかたない。
そう思った時に頬に暖かい感触が触れた。
「今はこれで我慢して。続きは帰ってから」
「そういうの反則だと思うぞ」
「ヴァレンシアさんから、もし迫られたらこうしてみれば健全だしいいって言われたからね」
「何か言ってやりたいけど、これはこれで満足してしまった」
神官のくせに随分俗世に塗れているらしい。
それじゃあ戻るかと思った瞬間シャルの顔が目の前にやって来た。
「さっきので私が我慢できなくなっちゃった」
シャルを優しく抱きしめ、その生きている温かさに幸せを噛み締める。




