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職業ガチャでSSレアを引いたら死神になりました。  作者: 柚木
五章 支配の魔王
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繋がるモノ

 戦闘が始まり二日目の朝、ハイネス軍は壊滅状態に陥っていた。

 魔王軍の数は一時期三十まで減っていたが、今では百まで数を戻していた。

 その上、一昼夜戦闘を繰り返して来たハイネス軍は疲労困憊のまま、抗う術も無く城下まで追い込まれ、現状は城壁に魔法を重ね掛けし、辛うじて生き残っている状態だった。


「リグレス、この戦はもはや負け戦だな」


「申し訳ありません」


「謝る必要はない。もとより勝てるはずの無い戦だ。お前達はよくやってくれた。今すぐ若い兵士たちを連れ、西に逃げろ」


 国王に呼ばれ、突撃を命じられるかと身構えていたが、全くの逆でレグレスは驚いた。


「お前の指示で逃げれば逃げ切れる」


「それなら国王様も共に逃げるべきです」


「所詮はガチャで決まった王だ。偶然決まった王よりも実力で信頼を勝ち取ったお前の方が民も言うことを聞く」


「しかし……」


「王としての矜持だ。王と決まったのなら国と命を共にする覚悟は決めている。早く行け。そして必ず魔王を撃ち滅ぼせ」


「わかりました。必ず魔王を討ちハイネスを再興いたします」


 あの目に何も言えなかった。

 覚悟を決め自分の道を決めた目、私も囮を申し出てくれた兵士達も同じ目をしていた。


「シス、子供と若い兵士たちを集めろ。裏から西に逃げる」


「わかった」


 何も言わないのか、恨み言くらい言われると思っていたんだけどな。


 それから十分ほどで準備は整った。

 総勢で二百程度の小さな集団は、裏口から真直ぐにガノマノフ山脈に向かう。

 さっきまで聞こえていた流星弓の音も消え、今は城壁を魔王軍が叩く音しか聞こえない。

 それからほどなくして大きな音が幾度も鳴り響く。


 さっきまでと音が違う、城壁が突破されたのか……。


 振り向きたい衝動を抑えガノマノフ山脈を登ると、前方から足音が聞こえてきた。

 すぐに隠れるように指示を出すが、西から聞こえる足元に絶望した。


 西もすでに魔王の手に落ちたか……。

 ウォルとシャル達は今西にもいないのか?


「只人の匂いがする。リグレス・アスフィールド殿は居られるか? 我らはハイネスからの使いに呼ばれた援軍だ。現状を伺いたい」


 大きな体躯の犬の獣人が呼びかけるが、すぐにリグレスは姿を見せはしない。


 援軍? 西からの?

 いや、それが本当だという根拠はどこにもない。

 魔王達なら嘘も平気で吐く。


 茂みから出たのは小さな子供だった。


「助けてくれるの?」


「もちろんだ。そのために俺達はここに来た」


 駆け寄る子供達を握りつぶせそうな大きな手で、彼は優しく子供の頭を撫でる。


「私がリグレス・アスフィールドだ」


 そこまで優しい顔ができる者なら信じよう。

 それで騙されたなら私に誰かを従える器が無かっただけだ。


「俺の名前はルード。東西の境界に住むものだ」


 ルード、確かウォル達が世話になった獣人だったはずだ。


「事情は移動しながら話す」


 子供達を獣人達に任せ、リグレス達は獣人の背に乗り城に戻る。


 すでに獣人、森人、地人の亜人連合は戦場に向かっているらしく、さっき聞こえた音も亜人達が戦闘を始めた音らしい。


「翼人に魔王の大軍か。そちらは囮で間違いないな。連絡が取れない場所に隔離し、その間に人間を滅ぼす」


「町長もそこまで考えておかしいと言っていました」


「私も同意見だな。ウォル達を雲の上に送ったとして問題を先送りしているだけだ。倒せる手段がないのなら魔王が倒されて終わるだけだ」


「全ての長も同じ考えです」


 そうなると何が目的なんだ?



 リグレス達が裏口からガノマノフ山脈に向かった直後、ゼログラフは憤っていた。


「遅い。『英雄』のいない城を落とすのにどれだけかかっている」


「申し訳ありません。向こうの魔法が思いのほか厚く突破に時間がかかっています」


 向こうの作戦で遅れが出たのは仕方がない。

 城まで押し込み力比べになればこちらが有利なはずだ。

 力も魔力も圧倒的にこちらが上にも関わらずこの体たらくとは、やはり急造の魔王達では役に立たないな。


「どけ、残りは俺が一気に壊してやる」


 魔王が立ち上がると、城壁までの道が真直ぐ開く。

 開けた道を進み、ゼログラフが魔法のかけられた壁に触れる。

 魔力は霧散し、意志を持たないレンガの壁が魔王を受け入れるように崩れる。


「中に入ればお前達でも倒せるだろう?」


 弱いとは言え魔王が束になっても突破できなかった城壁は、ゼログラフが触れただけでいともたやすく突破された。


 あの『英雄』はシコメの元に向かっているのか。

 それならば急がないといけないな。

 あいつには時間を稼ぐように言っているが、それがいつまで持つかもわからん。


「俺は城を潰す。お前達は人間を一人残らず殺せ。それくらいならできるだろ」


「それは無理だと思うぞ。お前達はここで足止めだ」


「獣と木、それに土か。お前達作り物には興味はない」


 三種族の長を前にして魔王は侮蔑の目を向ける。


「何言ってんだ?」


「グリノワール、こいつの言うことに耳を傾けても仕方ないだろ」


「そうか、知らないならそれでいいさ。俺は人を滅ぼすので忙しい。お前達はこれと遊んでいろ」


 ゼログラフがレンガに触れると、そのレンガは周囲の土や家を飲み込み、巨大な人の形にまとまる。


「そうだぞ、今はこの土人形を壊すのが先だぞ獣人の長」


 獣人の長は体を爪を、森人の長は杖を、地人の長はハンマーを構え土の巨人を迎え撃つ。


 土の巨人が振り下ろす拳を、地人の長コウテツが真正面からハンマーで受け止める。

 肉体の差などないと拳を打ち砕きバランスを崩すと、グリノワールが足を崩す。


「これで終わりだ。裁きの一撃(ジャッジメント)


 ガルバの杖から放たれた球体が土の巨人に触れると、球体は巨人の全てを飲み込み消滅した。


「次はお前の番だ」


 三種族の長はゼログラフに武器を向ける。


「調子に乗るなよ作り物」

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