遠くで雷が鳴った
「わたし、結婚することになりました。」
何でもない、いつも通りのやり取りをしていた。
帰宅しながら、クスッと思わず笑ってしまうやり取りもあった。
だから、その話題は私にとって突然だった。
突然雷に打たれた、とか、そんな感覚ではない。
どこか遠いところで鳴った雷が、じわじわと近づいてきて、足元から上がってくるような、精神的に追い詰めてくるような、そんな感じだった。
おめでたい……のだけれど、素直に喜べず、心がざらついている。
だって、その相手は。
いやいや、その前に返事返さないと。
おめでとう、って伝えないと。
「はあ……」
かすかに、思いを寄せたことのあるひと。
私とは真反対だから、正反対だから、生まれてくる前に、消しちゃった気持ち。
なんかうまくいかないし、気持ちも整理できない。
あの人とあの子が………。
並ぶ姿を想像して、笑い合うシーンを描いて、みんなに祝福される瞬間をイメージして。
繋がらないし、繋ぎたくない。
私にとって大事なものが、一度になくなってしまった感じだ。
あの子と笑い合った日々とか、これまでが急に色褪せて、すべて雷が連れ去ってしまう。
あの日々は、一体なんだったんだろう。
あの子とのやりとりは、なんだったんだろう。
全部が虚しくなって、俯きながら夜道を帰るけど、わたしの隣りには当たり前だけど誰もいないし、涙くらい流してやろうかと思っても何も流れない。
強情な自分が憎らしい。
少し時間が経てば、心の底から祝福できるのかな。
また、昔のようにあの子と笑い会えるのかな。