9話
モンスターを狩ること一時間半、全部で3体程狩ることができ、正直想像以上だった。
かなり良いペースで来ているが…
「さ、流石にちょっと疲れたな……。千尋さんは大丈夫?」
「まだ大丈夫だけど、少し体力回復したいから、一回車に戻ろ」
ダメージをそれほど受けていなければ、肉体に戻って軽く休むだけでも結構体力が回復するんだ。
「ついでにミカに結晶浄化してもらおうか」
「そうね」
俺が2つ、千尋さんはまだ1つだが、少しでもスキル効果で千尋さんの足を引っ張らないようにしたい。
まぁどんなスキルか分からないので何とも言えないが…
車に戻り魂を肉体に戻した後、ミカの名前を呼ぶ。
少ししてから、後部座席からミカの声が聞こえた。
「二人とも~! 頑張ってるみたいだね!」
「うおっ!!」
不意に話し掛けられたもんだから、めちゃくちゃオーバーリアクションを取ってしまったじゃないか……。
千尋さんは相変わらず冷めた目で見てるし……。
「み、ミカ、びっくりさせるなよ…」
「えー!! だって珪太が呼んだんじゃん!!」
「そうだけどさ……。それより結晶、浄化してもらいたいんだ」
手に入れた結晶をミカに渡し、あっという間に浄化された結晶を渡された。
「これの効果何?」
「珪太、良かったね! 物理攻撃耐性小があるよ!」
「おぉ! やっとか!」
ずっと欲しかった防御力アップ系。
これで少しは激痛が軽減されるといいんだけどな…。
「もう1つは精神力小だね! うんうん、2つとも当たりみたいだね!」
精神力ってなんだ?
要するに魂自体が強化されるってことか?
まぁミカが当たりと言うなら良いものなのだろう。
「ミカたん、次は私のもお願い」
千尋さんがミカに結晶を手渡し、浄化してもらう。
「ちーちゃん、これはハズレかも…」
ミカがしょんぼりして、千尋に結晶を戻す。
「これはね~、一応強化スキルなんだけど…飛道具の人じゃないと効果発揮出来ないみたい…」
「えー!!! マジ? ハズレとか初めてなんだけど」
ガッカリとして結晶を見つめ、大きなため息をついた。
「千尋さん! あの、これ…好きな方1つ、どうぞ」
「はぁ? なんで?」
「千尋さんのハズレちゃって、俺だけ当たりって言うのも…」
「あのねー!! 珪太は弱いんだから、そんな事気にしないでよ!」
グッと服を引っ張られ、千尋さんの方に俺の顔が近付く。
「分かったの!?」
「わ、わかりましたっ!」
近い近い! 顔が近いって!!
慌てる俺の服を離し、ふんっ! とそっぽを向いてしまった。
千尋さんは怒っているけど、初対面の時よりかは少し心を開いてくれたような気がする。
気だけかもしれないけど……。
それよりも……
「なぁミカ。飛道具なんてあるのか?」
「あるよ~! 君たち二人は剣だけど、弓や銃もあるんだよ」
「へー!! 銃もあるのかよ!」
正直剣よりも銃とかの方が良かったかも。
近距離戦よりも、敵と間合いが取れる分、ダメージを受ける率が低そうだもんな。
「でも~弓矢や弾は魂の体力を削り打つタイプだからね~。なかなかいないよ。天使の羽ははその人に最も適した武器に変わるんだ」
「そうなのか。俺はてっきりその羽1つ1つランダムなのかと思ってたよ」
「天使の羽から出来たら武器は、君たちの魂の強さに比例するように強くも弱くもなるんだよ。見た目も少し変わったりするしね~。」
そうなのか。
今は量産型のロングソードと言ったところだが、いつかめちゃくちゃカッコ良くなったりもするんだろうか。
そんな事を考えいると、千尋さんが口を開いた。
「ねぇミカたん、結晶って今すぐ取り込まなくても大丈夫なの?」
「ん? 大丈夫だよ~!」
「それならもし飛道具の人と会ったら、その人にあげるわ」
そう言うと、千尋さん結晶を鞄にしまった。
「じゃぁ私少し仮眠取るから。珪太も少し休んで」
再びシートを倒し、千尋さんはそのまま目を閉じた。
「じゃぁボクは行くね~!」
ミカもそう言うと、ふっと消えてしまい、車内はシーンと静まり返っている。
俺も寝よう。
そう思って目を閉じるも、体は疲れているのに頭は妙に冴えてしまっている。
飛道具の武器……
魂を削る辺り、魔法に少し似ているのだろうか。
と言うか、魔法っていつ使えるんだよ……。
千尋さんも使えそうな気配ないし。
魔法も結晶から得るのか、それとも経験値から得るのか。
早く使えるようになりてぇー!!
それに、俺たちのような人間はどのぐらいいるんだろうか。
千尋さんと俺は、わりと家も近いからな。
案外、他にも近くにいるのだろうか。
いや、でもそんなポンポンと人の願い叶えていいのか?
あっ!2つ目の願いはいつ叶えてもらえるのだろう……
なんて……
どれも今考える事じゃないのにな。
一度考え出すと、あれこれ脱線しつつも延々と考えてしまう。
だが、この時しっかりと休んでおかない事を、俺は後々後悔することになる。