63話
俺、千尋さん、リョウ、ナナちゃんは白銀のドラゴンと戦い、楓さんと他の見知らぬ2人はそれぞれ別の魂喰らいを食い止めてくれている。
白銀のドラゴンがブレスを吐き終えると同時に、ナナちゃんはドラゴンの脳天に弓矢を撃ち込む。
距離も有りパッと見では分からなかったが、幾つ矢が重なり……凄まじい速さでドリルの様に回転しているではないか。
どうやら風魔法を弓矢に付与して回転をかけている様だ。
キーンッ……!! と、歯医者の様な音が響き渡るも、表面が削られているのかドラゴンの叫び声でかき消される。
「ギュウルルァァ!!」
頭を振り回し、矢を振りほどこうとするドラゴン。
これは案外イケるんじゃないか!? そう思った俺達は、一斉にドラゴンに飛び掛かる。
金属音があちら此方で鳴り響き、激しさを増していく。
やはり普通の攻撃では通らない……ッ!!
俺は光魔法を剣に付与し、何度も何度も切りつけた。
「ギュアァァァアァ!!」
「うっ……!!」
ドラゴンが咆哮をあげると、覇気の様なモノがドラゴンの体から発され、俺達は吹き飛ばされてしまった。
鱗は欠け、いくらかはダメージを与えられた様ではあるが……まるで手応えがない。
このまま地道に削っていくしかないか……そう思ったが、次の瞬間予想外の出来事が起こった。
「う、嘘だろ……」
ドラゴンの傷が徐々に癒えてるではないか。
欠けたハズの鱗は再生され、あっという間に無傷の状態に戻ってしまったのだ。
「あ~俺、もうパス。これは無理だわー」
リョウは手をヒラヒラとし、やる気無さそうにドラゴンとの距離を取る。
「お、おいッ!! 勝手な事ばかりしやがって!!」
「命あってのもんでしょー? ちょっと他のにするから頑張って。あっ……ソイツの結晶はいらないぜ」
当たり前だ!!
誰がお前になんてやるか!
「いいよ、私たちだけでやろう」
「ですね。やる気のない人は邪魔なだけです」
千尋さんも、ナナちゃんも無表情だ。
だが逆にそれが怒りを表していて、俺はゾッとした。
「と、兎に角……どうやって倒すかだ。硬さもヘビー級なのに自己再生持つなんて……」
「アイツの弱点、見つけたよ」
千尋さんはそう言うと自分の胸の中心を指し、話を続けた。
「ここ。でもかなり深い……って言うより、氷の鎧を纏ってるみたいで……その奥って言うのかなぁ。ちょっと表現しにくいんだけど……」
そもそも攻撃が通らないのでは、弱点が分かったところでどうすることも出来ない。
俺達の表情は曇ったままだ。
ドラゴンの攻撃を受けぬように、細心の注意を払いながらも頭を張り巡らせる。
どうすれば……。
「千尋さん、火魔法使えましたよね?」
ナナちゃんが千尋さんに問いかける。
「うん、使えるけど……流石にアレを溶かせる気はしないわ……」
「私の魔法は風なんです。私と千尋さんの魔法を掛け合わせれば、火の威力上げられませんか?」
「えー……どうだろう。私今事情があって、それなりの魔法を使うとなると一回が限界かも。失敗したら次は無いけど……」
千尋さんはそう言ってるが、正直俺としては全力魔法など一回でも使って欲しくないのが本音だ。
「ナナちゃん、申し訳ないんだが……」
俺はナナちゃんの作戦に反対するべく口を開いたが、言い終える前にナナちゃんがそれを遮った。
「私と千尋さんでドラゴンの表面を溶かします。珪太さんは弱点が露出したらそこを狙って攻撃してください。自己再生される前にやらないと、次は有りませんよ」
あ、あれ? ナナちゃんてこんなに強めな子だったか?
俺の記憶では、守ってあげたくなるような女性ってイメージだったんだが……。
一体、彼女になにがあったんだ? と俺は彼女の変わり様に驚きを隠せなかった。
「千尋さん、大丈夫? 無理なら無理で……」
「やるわ。他に倒せる方法が見当たらないし、やるしかないでしょ」
「お、おう」
いざとなれば俺が千尋さんを抱えて肉体まで戻れば良い。
一か八か、ナナちゃんの作戦に賭けるしかないのだ。
――まずは千尋さんとナナちゃんが意識を集中させる。
その間俺はドラゴンの気を2人から離す為に、注意を自分に向くように仕向けた。
「お前、ホントに綺麗だな。モンスターを仲間に出来るのなら、絶対お前なんだけどな……!!」
俺はあまりにも綺麗な白銀のドラゴンに敬意を払いながらも、適度に攻撃していく。
ドラゴンの攻撃には、防壁を展開し受け流す。
防壁を張っていても重いし痛い。
攻撃を繰り出してからの動きも速いので、全て回避するのは無理がある。
「珪太! 準備出来た!」
千尋さんが大声で知らせてくれた。
その声に反応し、俺はドラゴンと距離を取った。
その瞬間、激しく燃え上がる音と共に蒼い火柱がドラゴンを呑み込んだ。
ナナちゃんの風魔法の力により、リヴァイアサンと時と負けず劣らずと言えるほどの威力だ。
「ギュウルルァァァアァ!!!」
ドラゴンの悲鳴が辺りに響き渡る。
超高温の炎に、身動きを取ることも出来ずに苦しみ悶えているではないか。
俺は意識を集中させ、ほぼ全力とも言えるほどの巨大な魔力を集結させる。
弱点一点狙い……もしも氷が溶けきらなければ貫通力のある形が良い。
巨大な槍に形成し、強度、威力共に今の俺が持てる全てを注ぎ込む。
「も、もうそろそろ……限界……」
時間にすれば5分程だろうか。
俺は魔法を完成させるのに十分な時間だが、ドラゴンの氷を溶かしきれたのか?
だがひたすら高エネルギーを流し込んでいた千尋さんは、限界を迎えていた。
火柱の威力が弱まり、ドラゴンの姿が見えてきた。
俺の目に飛び込んできたのは先程までの美しい姿出はなく、随分と貧相な姿になって……。
「ギュ……ル……」
どうにか体勢を保っているが、白い皮膚は焦げつき、肩で息をして今にも地に落ちそうだ。
「これでトドメだッ!!」
俺はそう言い放つと、巨大な槍を露出した胸へと投げ放った。
――ビュンッッ!!
「ギュ……ルァァァァアァ!!」
放たれた槍はドラゴンの体を貫通し、大きな爆発音と共に消滅した。
最期の叫びと共にドラゴンもその場で霧となり消滅し、地面に大量の結晶が落ちる。
「や、やった……」
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、俺はハッ!! と千尋さんの方へと目を向けた。
「千尋さん!!」
ガクッと下を向き、項垂れる千尋さんの元へ駆け寄った。
「だ、大丈夫……自分……で、戻る、から」
「それぐらい甘えてくれよ」
俺は千尋さんを抱き抱え、部屋へと戻る事にした。
「ナナちゃん、千尋さん送ってくるから。すぐ戻る」
「はい、分かりました!」
俺は千尋さんを部屋へと連れていき、肉体の前で下ろした。
「ごめ……戻って良いよ」
「あぁ、大丈夫。すぐ終わらせるから」
俺はそう言うと、再び外へと向かったのだ。




