49話
―――翌日の日曜日。
皆、日常生活を送れる程に回復したのは昼過ぎだった。
俺が苦労して海底から拾い上げた結晶は、数えるのも億劫な程大量で、色違いの大きい結晶も2つもあるのだ。
俺と千尋さんの部屋にコウと花ちゃんに来てもらい、分け前を相談する。
「私は殆んど気絶してたし、配分はみんなに任せるよ」
花ちゃんは申し訳なさそうにしていた。
千尋さんも普通の結晶を多めに貰えたらそれで良いとの事だったので、結局俺とコウが色違いの結晶を……。
女性陣には普通の結晶をかなり多めに配分した。
さて、浄化の問題なのだが……バラキエルを呼ぶのは気が進まないんだよなぁ……。
かといってリヴァイアサンレベルの結晶の効果が気にならないと言えば嘘になる。
それに今回は量も多い。
俺達の浮かない顔に、コウと花ちゃんは不思議そうな顔をしていたが、覚悟を決めてバラキエルを呼び出した。
暫くして、弱い風と共にバラキエルが現れる。
「お疲れさん。他の管轄から助っ人を呼ぶなんて、なかなか図太い奴だなぁ」
バラキエルはノリの軽い挨拶と共に、ドスッとソファーに腰かけた。
「倒したんだからいいだろ。それよりこれ浄化してくれ」
「そうだな、文句を言うつもりはないぜ。おい、ザン! 浄化しろ」
バラキエルは眷属獣を呼びつけると、何処からともなく鷹がやって来た。
と言っても、俺達の知る鷲よりも大きい。
鋭い眼光に、鋭いクチバシ。
立派な翼に思わず息を飲む。
「カッコいいだろ? ザンだ」
バラキエルは口角を上げ、自慢気にザンを腕に乗せた。
コウの目がキラキラと輝いているのを俺は見逃さなかった。
「あ、あの……俺の腕にも乗せれませんか?」
俺と千尋さんは、ギョッ! とコウを見た。
なかなか勇気のある奴だ……。
「そうしてやりたいが、人間の腕になんて乗せたら切り落とされるぞ。止めといた方がいいぜ」
バラキエルは笑い、コウの背中を叩いた。
案外、コウは誰とでも上手くやっていけるのだろうか。
ザンが俺達の結晶の上に降り立ち、浄化を始める。
待っている間、バラキエルは部屋に居座った。
正直早く帰って欲しいんだが……。
「これでお前達は、この地の邪心を好きにしていいぜ。て言っても今いる邪心はそれほど強く無いけどな」
「俺達も近々帰る予定だから、暫くは来ないと思う」
「そうなのか? そりゃ残念だな」
そんなこと微塵も思っていないだろうに。
「ところで、お前が東北のエースか?」
バラキエルがコウに尋ねた。
「俺? ……分からないッス」
「分からない? 把握してないのか?」
「東北の他の人は、俺と姉ちゃん……あと1人しか会ってないです」
「なんだぁ? 全然連携取れてないんだな。まぁリヴァイアサンを倒せた位だからエース級なんだろうな」
やっぱりアイツはリヴァイアサンだったのか……。
その後、暫くしてザンの浄化は終わった。
バラキエルはコウとよく喋っていたので、思ったよりも気まずい雰囲気ではなかった。
「それじゃ、ミカとガブによろしくな」
バラキエルはザンと共に部屋から出ていった。
浄化の終わった結晶を、それぞれ取り込む。
大本命、色違いの結晶の効果は……
“魔法自動照準、自動追撃” 効果……自動で弱点へ照準を定める。正し弱点が分かっている時のみ効力を発揮する。
狙いを定めた場所へ自動で追撃する。
おぉ!!
これはめちゃくちゃ嬉しい!!
狙いを定めるのもエネルギー消費する。
大事なエネルギーを削る分、避けられて無駄になることが何より困る。
これで魔法の幅がまた広がった。
チラッ……とコウの方を見る。
「なぁ、コウの効果はどんなやつだったんだ?」
普段はあまり聞かないが、やっぱりリヴァイアサンレベルだと気になってしまう。
コウの表情からも、当たりだろう。
「“水属性魔法吸収、水属性魔法覚醒” 効果はその名の通り水属性の魔法を吸収と、もう1つは……水属性の魔法が使えるようになったみたいだ」
「マジかよ!?」
2属性の魔法使えるなんて羨ましすぎるだろ。
俺のも十分嬉しいが、隣の芝は青く見えるものだ。
その他の結晶も取り込み、気付けば良い時間になっていた。
「私達そろそろ帰らないとー!」
花ちゃんとコウは明日から学校があるので帰らないとまずいらしい。
ホテルをもう一泊分取っているのに勿体ないと思うのは、今だに貧乏性が抜けていないのだろうか。
「じゃぁ駅までお見送りに行こうよ」
「うわーん! 千尋と離れるの寂しい! もっと遊びたかった」
花ちゃんは千尋さんに抱き付き、別れを惜しんでいる。
「ほら、早く行くよ」
そんな花ちゃんを、コウが引っ張り外へと連れていった。
――最寄りの駅に着き、俺達は2人を見送った。
「早く東北にも来てね~!!」
「分かったよー! 気を付けてね! バイバーイ」
2人が見えなくなるまで俺達は手を大きく振り続けた。
「私達も明日には帰るんだよね」
「あぁ、でも良い旅行だったよ」
予想外とは言え、リヴァイアサンの報酬は大きい。
何よりも千尋さんと2人で初めての旅行。
そして仲も深まった訳だし、良いことずくめだ。
「次は東北?」
「そうだなぁ!」
じぃちゃんにも会いたいし、改めて母さんにも千尋さんを紹介したい。
……こうして俺達の初めての旅行は幕を閉じた。
関東に帰り、とんでもない出来事が起こるなど思いもよらず。




