46話
『これから学校だよ(ノ_<。)』
電話に出なかったコウから、メッセが届いた。
『実はな、今北海道に来ててさ。北海道の天使と話したら、めちゃくちゃ強い魂喰らいがいるらしいんだ。週末まで滞在するから来ないか?』
コウなら絶対来るだろう。
俺はそう確信していた。
己が強くなる事に貪欲で、何よりも強敵と戦いたいという欲に勝てるわけがない。
『行きます(ゝω・´★)』
あまりに想像通りで思わず笑ってしまった。
「来るってさ」
「花ちゃんも来るかなー?」
「どうだろ? 千尋さん連絡してみたら?」
「そうするー!」
どんな魂喰らいなのかも分からないので、人数は多い方が良い。
今日は木曜日なので、コウは土曜日の朝北海道に来るとの事だった。
それまでは観光を楽しむか……それとも1度どんな相手なのか偵察すべきか……。
まず俺達は更に北上し、魂喰らいが居るであろう場所に近い所にホテルを取ることにした。
移動するだけではつまらないので、寄り道をして観光もしつつ。
途中で1泊し、土曜日にコウと花ちゃんと現地で待ち合わせををすることにした。
――土曜日
「おーい! 珪太さん、千尋!」
待ち合わせの駅に着くと、花ちゃんが手を振って出迎えてくれた。
どうやら2人の方が早く到着していたみたいだ。
「花ー!」
千尋さんと花ちゃんはハグをし、再会を喜んでいる。
「それで、どんなやつなの?」
コウは再会早々、魂喰らいのことを聞いてきた。
「実はまだ見てないんだ。今夜にでも行こうと思うが、大丈夫か?」
「勿論」
コウのことだ、この数週間で更に強くなっているだろう。
「取り敢えずお昼食べて、チェックインだけしちゃおうか」
「私お腹ペコペコ~!」
花ちゃんはお腹を押さえ、早く食べに行こうと俺達を急かしていた。
駅から程近い定食屋に入り、皆で海鮮丼を頼む。
「それよりさー! 2人は遂に付き合ったんだって?」
身を乗り出す勢いで、花ちゃんが俺達に聞いてきた。
「はは、まぁ……付き合いました」
恥ずかしそうに言う俺を、花ちゃんはニヤニヤとしながら見ていた。
「付き合うだろうな~とは思ってたけどね。なんだかんだ2人はお似合いだと思うよ」
「そ、そうかな?」
俺は嬉しくて、ついつい顔が緩んでしまう。
その後も色々な話をし、海鮮丼を食してホテルへと向かった。
「あれ? コウと花ちゃんは別の部屋なのか?」
チェックインするときにそれぞれ鍵を受け取っていた。
「うん、コウが嫌がるからさー」
「……だってイビキうるさいから」
「ちょっ!! 誰がよ!!」
花ちゃんは顔を赤くし、コウをベシベシと叩いている。
「まぁまぁ……。それより、後で俺達の部屋に来るか?」
「それより先に偵察しに行きたい」
花ちゃんの攻撃を受けながら、コウが冷静に言う。
「確かに1度どんな奴なのか見たいよな。じゃぁ20分後、外で」
「了解」
俺達はコウと花ちゃんと別れ、1度部屋に荷物を置きに行く。
「ねぇ珪太。旅行で疲れてるのもあるし、凄い強い相手みたいだから無理そうなら戦わずに戻ろうね?」
「ん? そうだな……」
正直、かなり強くなっていると思う。
今のところ負け無しだし、なんだかんだベヒーモスも倒せたんだ。
その頃よりも更に強くなり、今回はコウもいる。
心配する千尋をよそに、俺は正直負ける気がしなかった。
「約束だよ?」
「あぁ、分かったよ。何があっても千尋さんのことは守るから」
不安そうにする千尋さんを抱き寄せ、ギュッと抱き締める。
時間になり、俺達は肉体から離れ外へと出た。
その後すぐに、コウと花ちゃんが来た。
「確かに凄い気配だな」
皆、既に感じ取っているようで、先程までのほのぼした雰囲気から一変し警戒しているのが分かる。
「結構近いね」
「そのまま戦闘になりかねないから、俺が先に見てくるよ。隠密あるし」
「あ、私もあるよ」
花ちゃんはそう言うと、俺と共に偵察に行くことになった。
「じゃぁ行ってくる」
俺と花ちゃんは気配のする方へ猛スピードで向かった。
どうやら海にいるみたいで、陸から離れたが何も見当たらない。
「なぁ、この姿の時って……水中に入るとどうなるか知ってる?」
「えっ、入ったことないから分からない……」
「だよなぁ……」
息の問題もあるし、泳がないとならないのであれば完全にこちらが不利になる。
「試しに俺が潜ってみるよ」
俺は上空から海へダイブした。
……これは!!
息が出来る!?
魂の姿だから呼吸が関係ないと言えば関係ないが、息が出来ると言うよりも、しているフリに近かったのかもしれない。
普段無意識で行っている行動を、魂の姿になっても行っている……そんな感じだ。
次に、水の抵抗だが……
確かに地上と違い動きにくい。
泳がなくても良いが、移動する速度も少々遅くなり体力の消費も地上の倍程だ。
一旦海から上がり、花ちゃんに報告する。
「へー!! 息しなくても平気なんだ!」
「あぁ。でも水中で生活するモンスターを相手にするのは分が悪そうだぞ」
「確かにぃ……。地上に上がってこないのかな?」
「移動して人口の多い街にも行くようだし、可能性はあるが……。いつになるか分からないからなぁ」
「そっか……」
「1度2人の所に戻るか」
「そうだね」
こうして俺と花ちゃんは2人の所へと戻っていった。
◇
ホテルの前に戻ると、待っていた2人に状況を説明する。
「ってことなんだ。魂喰らいの姿は確認出来なかったけど、間違いなく海中にいる」
俺の話を聞いたコウの顔が険しくなる。
「それなら今から倒しに行った方が良いかも」
「今から? なんで?」
コウの提案に、花ちゃんは不思議そうにしている。
「夜になったら視界まで奪われる。広い海の中で、暗闇で戦う事なんて無理でしょ」
「なるほど……。言われてみればそうだな」
「昼間だって、深さによっては戦えないかも」
「ねぇ……やっぱ止めた方が良いんじゃない? いくら呼吸の必要もなく、泳がなくて済むとは言っても、敵の得意な場所で戦うなんてリスキー過ぎるよ」
今日の千尋さんは何故か異様に心配性だ。
「とにかく行くだけ行ってみよう。ヤバそうなら諦めて帰ればいいし」
――その時、魂喰らいの気配が更に強く感じる。
まるで俺達の方へ近付いて来てるかのように。
「これって……海から出たんじゃない?」
「だといんだけどな……」
「まずは行ってみよう」
この機を逃してなるものか、と俺達は一斉に魂喰らいの方へと向かった




