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33話

 それから俺は……俺達は更に魂を強化するために今まで以上に邪心を狩るようになった。


 花ちゃんは東北に帰ってしまったが、コウは休みの間何日か俺の家にいることになった。

 そして昼間はコウと二人で、夜は千尋さんと3人で狩りに行っている。


 昼間は病院が非常に効率が良い。

 弱い邪心は、人に憑かねば食糧となるエネルギーが奪えない。

 なので、取り敢えず人に憑きたがる為だ。


 総合病院や大学病院など、大きな病院を片っ端からコウと回って歩いた。


「珪太さん、今日も賭ける?」


「勿論!!」


 俺とコウは1日につき、どちらの方が多く結晶を集められるか賭けをしていた。

 負けた方は、翌日の家事を全て担う!

 今のところ5勝4敗だ。


 今日は大学病院なので、昼間はここで手一杯だろう。

 何せ人も多い分、邪心も多い。


「俺は奇数の階に行く」


 じゃんけんで勝ったので、俺は奇数の階にした。

 1階は外来があるからおいしいんだ。

 このじゃんけんでその日の勝敗が決まると言っても過言ではない。


「じゃぁ……スタート!!」


 俺とコウは一斉に走り出す。


 まずは上から回ろう。

 急いで上に向かい、ナースステーション、病室と回っていく。


 早速一匹目発見!!


「うりゃぁぁッ!!」


 見つけ次第飛び掛かる。

 正直言って、もう魂喰らい(ソウルバイター)以外の邪心は雑魚と言っても良いほど、楽に倒せる。

 一撃で倒せるヤツも居れば、何回か攻撃しなければならない邪心もいるが、ほぼノーダメージでいける。


 倒した邪心から急いで結晶を拾い上げ、再び邪心を探す。

 その繰り返しだ。

 時々2、3個結晶を落とすヤツもいるが、まぁ稀だな。


 邪心が居なくなったら、上の階からどんどん下がって行く。



 早々に奇数階を回ってしまった為1階の邪心を狩っていると、コウも1階まで下りてきた。


「もう邪心いなくなった……」


 あぁ、もう狩り尽くしてしまったのか……。


 外来の待合室にはまだ邪心が何匹かいる。

 その時、コウの近くにいた邪心が、コウに飛び掛かった。


 ――スパッ!!


 コウは邪心の方を見ることもなく、刀をひと振りすると邪心は真っ二つに斬られてしまった。


「あー!! ここのヤツを攻撃するなんてズルいぞ!!」

 

「不可抗力だろ」


 コウは、しれっと結晶を拾い上げた。


「ていうか俺の階は邪心いないのに、フェアじゃないだろ?」


「……分かったよ。好きにしろ」


 俺がそう言うと、待ってましたと言わんばかりにコウは片っ端から邪心を狩っていく。


 や、ヤバイ狩り尽くされる!!

 俺も負けじと邪心を倒しまくった。



 日が沈んでくると、外来患者も随分減った。

 既に邪心は狩り尽くしており、ベンチに座り邪心を連れてくる人を待ってる状態だ。


「さてと、そろそろ帰るか」


 コクりとコウは頷き、俺達は家に帰る事にした。

 そろそろ千尋さんの仕事も終わりそうだしな。




 ◇




 家に帰ると、俺達は結晶の数を数えた。

 不正が無いように同時に数えていく


「「48」」


「「49」」


「50!51、52……と!」


 コウが49個、俺が52個。


「よっしゃぁー!!連勝!!」


「……」


「明日も旨い飯、期待してます」


 ふはははっ、と高らかに笑う俺を、コウが悔しそうな目で見ている。

 何とも大人げないと言われそうだが、勝負は勝負だ。


「さて、ミカを呼ぶか。ミカー!」


 フワッと風が吹き、ミカが現れる。


「連日連日……キミ達は凄いねぇ……」


 ミカは俺達の結晶を浄化し、効果の説明までしなければならないから大変だと思う。

 嫌な顔をすることは無いが、終わる頃になるといつも顔が疲れている。


「なぁ、どうだ? ここ最近の成長は凄いと思うぞ? そろそろルシファーにも対抗出来そうか?」


 ミカは、じとーっと俺を見ると、フッと鼻で笑われた。


「珪太さ~、それ毎日聞くけど……。全然まだまだ足元にも及ばないよ」


 ミカは呆れながら、1つ1つ結晶を浄化していく。


「いいかい?ルシファーに対抗するには後数千個は必要だよ。近道があるとすれば、ベヒーモスの時のように特殊効果のある結晶を手に入れることだね」


「そうは言っても魂喰らい(ソウルバイター)は簡単に見付からないだろ? いたとしても毎回俺が結晶を貰える訳じゃないしな」


 まぁ結局のところ、地道に行くしかないのだ。



 ――ピンポーン



「おっ、千尋さんだ!」


 意気揚々と玄関のドアを開けると、千尋さんは差し入れを持ってきてくれた。

 まぁミカのプリンなんだけどな。


「お邪魔しまーす。今日もコウ君と行ってたの?」


「あぁ、流石にミカもぐったりみたいだ」


 リビングのドアを開けると、ミカが千尋さんに抱き付いてきた。


「ちーちゃん!ボクを癒して~」


「ヨシヨシ。ミカたんにプリン買ってきたよ」


 ミカの頭を撫で、手土産のプリンをミカに見せる。


「うぅ~。ボクを労ってくれるのはちーちゃんだけだよ」


「おいおい、そんなこと言うなよ。ミカの仕事だろ」


「だからって1回に多すぎるよ~。あまりにも非効率過ぎる。何か対策練らないと、ボクの体が持たないよ」


 トボトボとソファーに戻り、ミカは再び結晶の浄化を始めた。


「確かになんとかならないのかな? 邪心も増えた分数も多いし、実際自分に取り込んだ効果を何がどれくらいかなんて、私覚えてないよ」


「そう言われると俺も覚えてないな。体感で分かれば良いって思ってるからなぁ……」


「俺はメモってるよ」


 コウがヒラッとメモ帳を取り出す。


「まじかよ!? コウは本当にマメだよなぁ……。尊敬するわ」


「近々、天使同士の会議があるから、その時に話してみるよ~」


「へぇ、会議なんてしてたんだな」


「してるよ~!!これでも月1でしてるんだからね!」


 天使の会議なんて、一体どんな会議なんだろうか。



「ねぇ、今日は相談があるんだけど……」


 突然、千尋さんは話を切り出した。


「どうしたの?」


 千尋さんが俺に相談だなんて珍しい。


「実は……仕事辞めようと思って。今のままじゃ、みんなとの差が開く一方だし。平和になるまでお休みしようかなって」


 意外だった。

 ここまで辞めずにやって来た千尋さんから、そんな言葉が出てくるとは思ってもみなかった。


「千尋さんはそれでいいの?」


「まぁ、それもアリかなって」


 決めるのは千尋さんだし、俺がどうのこうの言うのもなぁ……と思っていたら、コウが口を開いた。


「別にいんじゃない? 千尋さんて姉ちゃんと同い年でしょ? 珪太さんなんて30歳手前で無職だし」


 グサッ!

 と、コウ台詞が思いっきり胸に突き刺さる。


「お、おいおい……確かに俺は無職だが、世界を救う為に昼夜問わず働いてるぞ……」



「千尋さんが無職になったところで、珪太と違って若いんだしこの後いくらでも好きな事出来るじゃん。今しか出来ないことをやるのって俺は良いと思うよ」


 俺の事はスルーかーいぃ!!

 しかも俺を比較対象にするのはやめてくれぇぇ!!


「そう、だよね。今しか出来ないことをやらないと、きっと後悔するよね」


 千尋さんもスルーかーいぃ!!!

 俺だって……

 俺だってルシファー討伐の為に頑張ってるのに……

 泣きたい……。



「じゃぁ、ミカたんに二つ目の願い叶えて貰おうかなぁ」


「良いよ! 何にするの~?」


「珪太と一緒で、私も宝くじ一等にしようかなぁ。仕事辞めたら生活出来ないしね」


「分かったよ、任せて!!」


 ミカが目を閉じ祈ると、千尋さんは綺麗な光に包まれる。


「はいっ! 後はちーちゃんの好きな宝くじを買うと良いよ!!」


「そういえば、コウはガブリエルにどんな願いを叶えて貰ったんだ?」


「俺も金だよ。姉ちゃんと二人で住む為に必要だったし」


 まぁそうなるよな。


「そういえばコウ君、そろそろ学校始まるから東北帰るんだっけ?」


「……ッス」


 そうなのだ。

 本当は学校が始まる前日まで居たがっていたが、新学期の準備もあるから余裕持って帰って来なさいと、花ちゃんから御触れが出たらしい。


「ここ最近、邪心狩りしかしてないからなぁ。帰る前に何処か行きたいところあるか?」


「……マウスランド」


「それは勘弁してくれ……」


「じゃぁ邪心狩り」


「「……」」


 俺と千尋さんは最早言葉を失う。

 まったく、コイツはその二つ以外に興味はないのかよ……。



 ――ピロリンッ♪


 ん? メッセ?

 一体誰だ?



『ナナちゃん』




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