21話
翌日、俺と母は観光地で1泊することにした。
平日ということもあり、ホテルはを簡単に取れたのは幸いだ。
旨い物を食べ、有名スポットを回り久しぶりに心休まる時間だった。
本音を言えば彼女と来れたら問答無用の100点なんだが、そもそも彼女もいないので仕方ない。
ホテルに戻り、風呂に入って何時でも行ける準備をした。
すると、携帯が鳴った。
ディスプレイには“千尋さん”と出ていた。
「もしもし」
「もしもしー? そっちはどう? 元気?」
「あぁ、元気だよ。実はこっちの管轄の天使に頼んで、今夜こっちの人の戦いを見せてもらう事になってるんだ」
「マジでー? 良いなぁ。私も見たかった。てか明日帰ってくるんだっけ?」
「それが……もう何泊かするようなんだ」
「マジでー!? 早く帰って来てよぉ。1人で戦うの飽きたよー」
「あはは、飽きるなんてあるのかよ」
その後も他愛ない話を30分程電話で話していたら約束の時間が近い事に気付いた。
「やべっ! そろそろ約束の時間だ」
「おけー! 帰ってきたら話聞かせてね。バイバイ」
「あぁ、また」
電話を切り、ベッドに横になる。
肉体から離れ、いざ新境地へ!!
◇
まだ人の多い駅前で、分かりやすいようにと宙に浮き現地の人を待っていた。
どんな人なんだろうか。
悪い人じゃなければ良いが……
なんて考えていたら背後から女の人が声をかけてきた。
「こんばんは。貴方が珪太さん?」
後ろを振り向くと、男の人が1人と女の人が1人。
「あ、初めまして。佐伯珪太です!今日はよろしくお願いします」
「初めまして! 私、幸村花です。ガブリエル様からお話は聞いてます。よろしくお願いします」
元気があり愛想の良さそうな可愛らしい子だ。
俺よりも全然若くて、まだ10代かな?
ほんわかした雰囲気にショートボブが良く似合ってる。
チラッと男の人の方を見て、挨拶をした。
「どうも! よろしくお願いします」
「……ども」
花さんとは対照的に、全く愛想がない。
見た目は大人びているがまだ大学生ぐらいか?
顔はカッコ良いし、身長も高くてスレンダー!
モデルか何かやってそうだな。
クールボーイで絶対モテるタイプの人だ。
「ほら! ちゃんと挨拶しなさいよ! ……すみません、この子ちょっと人見知り強くて」
「……コウっす」
「あー……。コウ君と花ちゃんね! 改めてよろしく!」
「今日は私達の戦いを見たいって事ですけど、珪太さんも戦いますか?」
「うーん、取り敢えず見学メインで! 俺が行った方が良いタイミングなら行くし、その時の場合で!」
「了解しましたー! 早速行きましょう!」
花ちゃんが先行し、俺とコウ君は後をついていく。
大きな駅だけあり、駅の近くは居酒屋が連なり街中も賑やかだ。
その分邪心の気配も多い。
「こっちの方に数匹まとまってるので、そこに行きますね!」
移動速度をあげ、グイグイ進んでいく。
目的地に着くと、そこには5匹ほどのモンスターがいた。
「まさか、この数を相手にするの?」
「そうですよ! まぁ見ててください!」
花ちゃんは自信満々に敵の中へと飛び込んで行った。
武器は……ハンマー!?
しかもネコちゃんヘッド!!?
「うぅりゃぁっ!!」
凄い勢いでモンスターをぶっ飛ばしていく。
見た目とのギャップが凄すぎる。
すると先程まで俺の横に居たコウ君も加わった。
コウの武器は……刀!?
おいおい、武器までカッコ良いなんて反則じゃないか。
千尋さんがこの場にいなくて良かった……って! 俺は何を考えてるんだ……っ!!
気を取り直し、二人の戦いを見させてもらった。
正直5匹もいたら俺も参戦すべきだろうと思っていたが……。
二人の連携は素晴らしいもので、あっという間にモンスターは殲滅させられていた。
「珪太さん、どうでしたか?」
「二人とも強くて驚いたよ! 凄い連携取れてるね。いつも二人で戦ってるの?」
「実は、私達姉弟なんです!」
「えぇっ!? 全然似てない!」
「よく言われるんですよ。でも仲は良いので連携取れてるのもそれでかなぁと思ってるんですけどね」
なるほど……。
「でも姉弟で選ばれるってなかなかの確率じゃないか? 凄いな」
「私が最初に選ばれたんですけど……。1つ目の願いでコウも一緒にってお願いしたんです」
「え、それってアリなの?」
「どうなんでしょう? 大丈夫だったからアリなんじゃないですかね?」
天使も案外適当なのかもしれないな。
しかし本当に仲が良いんだな……。
俺は一人っ子だから少し羨ましい。
それにこの二人は連携無しにしても個々に強いのだろう。
出会った邪心自体は物凄く強いわけでもなかったが、ここまで楽に倒せるとは思ってもなかった。
その後も順調に戦い、二時間程で10匹以上倒していた。
「さて、今日はこの辺で!」
流石に疲れたのだろうか。
花ちゃんの息が上がっている。
それに比べて、コウ君は全く息が上がっていなかった。
戦っている最中に全く無駄な動きが無いからだ。
花ちゃんは少々力任せなところがあるが、コウ君はは冷静に……そして流れるように、正確にモンスターを斬り倒していた。
どちらかと言えば俺は花ちゃん寄りの戦い方なのでコウ君の動きは非常に勉強になった。
しかも同じ剣士ときた。
俺は見ていただけだが、十分に収穫があったと言っていいだろう。
まぁ同じように戦えるかは怪しいが……。
その後一度肉体に戻り、二人と連絡先を交換した。
祖父の家と二人の家は少々離れているので、滞在中に共戦する事は難しいだろうけど。
またいつか……いや、次は俺も一緒に戦えたら良いな。




