表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/67

10話

 全く眠れなかった……!


 まだ少しダルい体から魂の姿になり、再び探索することにした。


「次は繁華街から少し外れた所でにしましょ」


「あぁ、そうしよう」



 暫く探してみたものの、モンスターの気配は感じない。


「今回は不発だったかもね。この街はもう少し多いと思ってたのに」


 確かに繁華街のある場所にしては少ない。

 俺の住む町と差ほど変わらないではないか。

 どこの場所もこんなものなのだろうか……。



 千尋さんが、ふぅ……とため息を吐き、車に戻ろうか……となったとき、先ほどは全く感じなかった気配が押し寄せる。


「……っ!? なんだよ、これ」


「私も今まで何も感じなかったんだけど。なんか変じゃない?」


 今まで感じていたモンスターの気配とは、なんだか少し違う。


「凄い沢山の気配がするな……」


 色々な気配が同じ方向から波のように押し寄せる。



「取り敢えず探して、ヤバそうなら撤退しましょ」


 俺たちは気配のする方へ慎重に向かっていく。



 暫く行くと、河原が見えてきた。

 どうやらそこにモンスターがいるみたいだ。

 俺の感知範囲外の距離だったのに、何故感知出来たのかは謎だ。


 土手の上から、モンスターにバレないように慎重に探して行くと…



「なっ……!?」


「凄い数……ざっと数えても2、30匹はいるわね……」


 土手の下に、多くのモンスターが集まっていた。

 街中にモンスターが少なかったのは、ここに集まっていたからなのか?


「種族はバラバラだし、群れって訳じゃなさそうだな」



 暫く様子を伺っていると、とんでもない光景が飛び込んできた。


「っ!? あいつら…食ってるぞ!!」


 モンスター同士で争って、事もあろうか共食いを始めたのだ。


「ねぇ……これって、ミカたんが言ってたやつかな?」


「あ、あぁ……そうかも……」


 てことは……だ。

 生き残っているやつらは強いヤツで、共食いの結果、更に強くなっているって事になる。


 唸り声、雄叫び、悲鳴……

 まさに地獄絵図そのものと言っても過言ではない。



 様々な声が聞こえる中を呆然と見ていると、みるみるモンスターの数が減っていく。


 壮絶な光景の末に、残るモンスターはあっという間に3匹までに減っていた。



 これはヤバい……。

 絶対勝てやしない。

 そう悟るのに時間はいらなかった。



 モンスター同士が争っている間に撤退すべきだ。

 いや、もっと早くこの場を去るべきだったんだ……



 千尋さんも同じように思ったらしく、互いに顔を見合せ、行こう! とジェスチャーすると、千尋さんはコクっと頷いた。



 気付かれないように、そっとその場を離れようとしたその時。

 背後から凄まじい気配を感じる。


 ゾゾゾッと背筋が凍るような寒気を感じたと思ったら、まるで金縛りにあったかのように1歩も動けなくなってしまった。




「……っ! 珪太、避けて!!!」


 千尋さんの声に反応し、慌てて後ろを振り向くと、そこにはもう、モンスターがいるではないか。


 ヤバいっ!!


 そう思い、咄嗟に剣でガードする。


 が、次の瞬間、景色が逆さまになり、宙を舞っていた。



 吹っ飛ばされた! そう理解したら全身に激痛が襲う。



「ぐっ……!!」


 あまりの痛さに声にならない

 ガードしてこれかよ……

 無理だ、こんなの……。


 そう思った瞬間、地面に体が叩き付けられ、俺は意識を失った。



 ――――……。







 ◇





「きゃぁぁぁ!!!」



 ――ハッ!?


 千尋さんの悲鳴で目が覚めた。

 俺、気絶したのか?

 どれぐらい気絶してたんだ……?


 力無く悲鳴のした方に目をやると、人のカタチに似た巨大な“何か”が千尋さんの、胴体を手で握り締めているではないか。


「ち……千尋さん……!」


 体をよろめきながら無理やり起こすが、立っているのもやっとな程だ。



 千尋さんとモンスターは俺に気付いたのか、俺の方を見ている。


 パッと見ても千尋さんがボロボロなのが分かる。

 素早い千尋さんなら逃げようと思えば逃げられたハズだ。


 しかし俺が気絶している間、一人で必死に戦っていたのだろう。


「け……けーた……にげ……て……!」


 千尋さんが声を振り絞ると、モンスターは更に千尋さんを締め付ける。


「ぎゃぁぁぁー!!!」


 悲鳴をあげた後、千尋さんの頭はガクッ下を向く。


 気絶したのか?それとも……まさか……!



 モンスターは俺になど全く興味を示さず、反対の手で千尋さんの頭を掴んだ。



 カーッと一気に怒りが込み上げ、全身が熱くなる。


 その瞬間、俺の中で何かが弾けた。



「――なせ……離せよ……」


 俺は無意識のうちに、右の手のひらをモンスターに向けた。

 怒りで視界が歪み、自分でも何をしているのか分からなかった。



「離せって言ってるだろうがぁぁぁ!!!」


 俺の手のひらから何かがモンスターめがけ凄まじい勢いで放たれたと思ったら、辺りが眩い(まばゆい)光に覆われた。


 そしてまた意識が遠退く。

 何がどうなったのか自分でも分からない、もうそんな事を考える余力すら残っていなかった。


 そのまま俺の視界はブラックアウトしていった――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ