10話
全く眠れなかった……!
まだ少しダルい体から魂の姿になり、再び探索することにした。
「次は繁華街から少し外れた所でにしましょ」
「あぁ、そうしよう」
暫く探してみたものの、モンスターの気配は感じない。
「今回は不発だったかもね。この街はもう少し多いと思ってたのに」
確かに繁華街のある場所にしては少ない。
俺の住む町と差ほど変わらないではないか。
どこの場所もこんなものなのだろうか……。
千尋さんが、ふぅ……とため息を吐き、車に戻ろうか……となったとき、先ほどは全く感じなかった気配が押し寄せる。
「……っ!? なんだよ、これ」
「私も今まで何も感じなかったんだけど。なんか変じゃない?」
今まで感じていたモンスターの気配とは、なんだか少し違う。
「凄い沢山の気配がするな……」
色々な気配が同じ方向から波のように押し寄せる。
「取り敢えず探して、ヤバそうなら撤退しましょ」
俺たちは気配のする方へ慎重に向かっていく。
暫く行くと、河原が見えてきた。
どうやらそこにモンスターがいるみたいだ。
俺の感知範囲外の距離だったのに、何故感知出来たのかは謎だ。
土手の上から、モンスターにバレないように慎重に探して行くと…
「なっ……!?」
「凄い数……ざっと数えても2、30匹はいるわね……」
土手の下に、多くのモンスターが集まっていた。
街中にモンスターが少なかったのは、ここに集まっていたからなのか?
「種族はバラバラだし、群れって訳じゃなさそうだな」
暫く様子を伺っていると、とんでもない光景が飛び込んできた。
「っ!? あいつら…食ってるぞ!!」
モンスター同士で争って、事もあろうか共食いを始めたのだ。
「ねぇ……これって、ミカたんが言ってたやつかな?」
「あ、あぁ……そうかも……」
てことは……だ。
生き残っているやつらは強いヤツで、共食いの結果、更に強くなっているって事になる。
唸り声、雄叫び、悲鳴……
まさに地獄絵図そのものと言っても過言ではない。
様々な声が聞こえる中を呆然と見ていると、みるみるモンスターの数が減っていく。
壮絶な光景の末に、残るモンスターはあっという間に3匹までに減っていた。
これはヤバい……。
絶対勝てやしない。
そう悟るのに時間はいらなかった。
モンスター同士が争っている間に撤退すべきだ。
いや、もっと早くこの場を去るべきだったんだ……
千尋さんも同じように思ったらしく、互いに顔を見合せ、行こう! とジェスチャーすると、千尋さんはコクっと頷いた。
気付かれないように、そっとその場を離れようとしたその時。
背後から凄まじい気配を感じる。
ゾゾゾッと背筋が凍るような寒気を感じたと思ったら、まるで金縛りにあったかのように1歩も動けなくなってしまった。
「……っ! 珪太、避けて!!!」
千尋さんの声に反応し、慌てて後ろを振り向くと、そこにはもう、モンスターがいるではないか。
ヤバいっ!!
そう思い、咄嗟に剣でガードする。
が、次の瞬間、景色が逆さまになり、宙を舞っていた。
吹っ飛ばされた! そう理解したら全身に激痛が襲う。
「ぐっ……!!」
あまりの痛さに声にならない
ガードしてこれかよ……
無理だ、こんなの……。
そう思った瞬間、地面に体が叩き付けられ、俺は意識を失った。
――――……。
◇
「きゃぁぁぁ!!!」
――ハッ!?
千尋さんの悲鳴で目が覚めた。
俺、気絶したのか?
どれぐらい気絶してたんだ……?
力無く悲鳴のした方に目をやると、人のカタチに似た巨大な“何か”が千尋さんの、胴体を手で握り締めているではないか。
「ち……千尋さん……!」
体をよろめきながら無理やり起こすが、立っているのもやっとな程だ。
千尋さんとモンスターは俺に気付いたのか、俺の方を見ている。
パッと見ても千尋さんがボロボロなのが分かる。
素早い千尋さんなら逃げようと思えば逃げられたハズだ。
しかし俺が気絶している間、一人で必死に戦っていたのだろう。
「け……けーた……にげ……て……!」
千尋さんが声を振り絞ると、モンスターは更に千尋さんを締め付ける。
「ぎゃぁぁぁー!!!」
悲鳴をあげた後、千尋さんの頭はガクッ下を向く。
気絶したのか?それとも……まさか……!
モンスターは俺になど全く興味を示さず、反対の手で千尋さんの頭を掴んだ。
カーッと一気に怒りが込み上げ、全身が熱くなる。
その瞬間、俺の中で何かが弾けた。
「――なせ……離せよ……」
俺は無意識のうちに、右の手のひらをモンスターに向けた。
怒りで視界が歪み、自分でも何をしているのか分からなかった。
「離せって言ってるだろうがぁぁぁ!!!」
俺の手のひらから何かがモンスターめがけ凄まじい勢いで放たれたと思ったら、辺りが眩い光に覆われた。
そしてまた意識が遠退く。
何がどうなったのか自分でも分からない、もうそんな事を考える余力すら残っていなかった。
そのまま俺の視界はブラックアウトしていった――。




