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第八十七話 エルフ皇国【其の六】

 夕食を終えた後、エルゾナ皇妃から連絡を貰う。転移魔法でラミア国に送り届けてもらえる事が決まった。これで何の憂いもなく出発が出来る。ベッドで横になるが、身体は疲れているのにどういう訳か中々寝付けない。


 寝酒を飲もうとベッドから立ち上がる。テーブルに置いてある酒をグラスに注いだ。今日の疲れを流すよう、一気に酒を飲み干す。体中にアルコールが行き渡るが眠気は一向にこない。二杯、三杯と酒を飲み続ける。いつもなら美味しい酒の味が、全然しなかった。


 突然、扉からコンコンとドアを叩く音がした。最終日なので、エルゾナ皇妃がまたテトラの様子を聞きたくて訪れたと思いドアを開いた。


 扉の前にはテトラが待っていた。


「今日で最後だから遊びに来ちゃった」


 小さな口から舌をペロッと出す。


「まあ、中に入れよ」


 テトラは部屋に入るや否や 、椅子ではなく俺のベッドの上にちょこんと座った。そして、俺を見つめながらポンポンとベッドを二回叩き、隣に座るように促す。


 俺は彼女に促されるまま横に座る。二人の距離が自然に近づく。


 旅先では彼女に密着する場面は幾度もあったが、不覚にも、彼女の隣に座っただけでドギマギしてしまった。


「明日で最後だね……」


「ああ……」


 まだ、酔ってもいないのに上手く口が回らない。


「また、遊びにいっても怒らない?」


「……」


 どう答えて良いか分からず返事に窮する。


「あのね、私、父とは早くお別れしたの……」


 もらわれて行く子犬のように寂しげな顔をする。


「皇妃から聞いたよ」


「私が働いて初めて買ったプレゼント」


 彼女は俺に小さな包みを手渡した。

 

「開けてもいいか?」


「うん……」


 包装紙を破くと中から木彫りのカップが出てきた。


「おっちゃん、お酒が好きだから……気に入らなかった?」


「凄く気にいたぞ、明日から使わせて貰うな」


 そう言って、俺は彼女の腰に手を回し、優しく抱き寄せていた。彼女の心音が直に伝わる。


 俺の心音の高鳴りも相手に伝わる……。


 テトラは俺の目を覗き込み、にっと笑う。


「おっちゃんと一緒に寝るのは今日が最後だよね」


 小さな口をゆっくり近づけ、耳元で囁く。


「覚えている? 旅の途中で雷が鳴ったこと……」


「ああ、覚えていぞ、テントが雷光で明るく光ったよな」


「私、凄く怖かったのを忘れないわ」


 彼女も俺の身体に手を回して背中をギュッとつかむ――


「実は俺も怖かったのよ」


 二人でクスクスと笑った。


 しばらく思い出を語り合い、いつの間にか静かになった彼女を見ると、すやすやと寝息を立てていた。


 サラリとした金髪を優しく触りながら、俺は寝付けない意味が分かったような気がした。

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