第五十六話 今夜は修学旅行のように【中編】
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いつもより夕食を食べるスピードがやたら早い。食べ終えた食器を洗っているときその答えが分かった。
「早く洗って遊ぼうぜ」
居間からレイラの大きな声が聞こえる。それならお前も手伝えよという言葉を飲み込み、雛鳥の希望に沿えるように手を早く動かし台所を後にした。居間では三人が車座に座りトランプの準備をしていた。俺はルリからトランプを受け取りカードを配り始めた。
「手札の中に7があったら出してくれ」
場に四枚の7が並ぶ。
「ルールは簡単、この次の次に前後の同じマークの数字6か8を順番に出して並べていき、手札が無くなったプレイヤーから勝ち抜けしていくゲームだ」
俺はハートの5を場に出してゲームを進めた。四周りほどしてルリが悲しそうな顔を浮かべた。
「並べる手札がなければパスをする。特に罰則はないが三回パスをして四回目に出す札がなければ自動的に負けになる」
ゲームは淡々と進み一番最後まで手札が残ったルリが負けた。
「あんまり面白くないゲームだな」
レイラが退屈そうな顔をしながらカードを集め配り始めた。ゲームは先ほどと同じ様に静かに進んだが、前回と大きく違うことにパスをする場面が多くなってきた。
「おい! まだダイヤの8が出ていないぞ」
レイラが三人の顔をのぞいた……。
「誰かがわざとカードを止めてますね」
テレサが静かに呟く。
「俺じゃねえぞ」
「私も違う……」
場の空気が変わった。このゲームの本質を彼女らは理解した。札が止められたままゲームは進み、俺は勝利を確信しダイヤの8を出した。
「き、汚ねェェーーーーーーー」
「ヌフフフ、お嬢さんがた、汚いのではない年の功というものだよ」
俺の発言が場を凍らせたがここから本当の七並べが始まった。各々が数字を止めたり牽制のパスを出す。最後までハートの9を止めていたレイラがどや顔をして札を並べた。しかし、一番最後までカードを握っていたのは彼女であった。俺は不思議な顔をしているレイラの手札を見て吹き出す。
「ハートの|K(13)を持っていて止める奴がいるか!」
テレサとルリが手を叩いて笑い転げる。しかし、レイラだけが自分のした失敗に全く気がついていない。
「ハートの9を止めていても、ハートのKが出せなければ止めるのは失策だな」
テレサが丁寧な説明をする。
「止めるだけしか考えられない脳筋」
ルリはさらりとディスル
ムカー! 頭から煙を出しながらレイラは手札を配り始めた。結局、彼女が一抜けをするまでかなりの時間を要することになる……。
ゲームが一区切りついたので俺は席を立ち、大皿につまみを乗せて場に戻る。
「おっ! 気が利くじゃねーか」
レイラは皿に乗ったつまみを鷲づかみにする。俺は彼女の顔を見ながら本当に残念美人だとため息をついた。酒を飲みたかったが、まだゲームが終わりそうにないので、氷を浮かべた果実水を出した。お代わりを想定して別の容器に入れた果実水も用意した自分は、この家の主夫だと自覚した……。
「いよいよ、うすのろをするか!」
レイラの目が爛々と輝く。
「いや、次はカードオブカード『大貧民』というゲームだ」
三人の期待値はかなり上がるが、俺はこの鉄板ゲームがそれ以上に彼女らを楽しませる事に自信があった。
「 弱い手札から 3→ 4 → 5 → 6 → 7 → 8→ 9→ 10→ J → Q → K → A → 2→ ジョーカーが基本だ。3が一番弱く2が一番強い札で、ジョーカーはそれ以上に強いが、どのカードにも化けて使えると言うことを覚えて欲しい。配った手札から一枚だし、順番に手札より大きな数字を出していく。手持ちの札が出せなくなったらパスで次のプレイヤーに回すことが出来る。全員がパスをすると最後に一番強いカードを出した人(親)がまた一から好きなカードを場に出し、手持ちのカードが無くなると一抜け出来る。最初に出すカードは一枚ではなく同じ数字なら、二枚、三枚だすことも有りで、次に出すプレイヤも同じ枚数の札があれば出すことが可能だ。カードの2と8とジョーカーは最強なので、自分の手札が最後の一枚になったときこの3つのカードで終わってはいけない。」
「最後に、同じカードを四枚出すと『革命』と言って今まで弱かった3が一番強いカードで逆に2が一番弱いカードとなる――すなわちカードの強さが反転する。ただし四枚のカードの上にまた四枚カードを被せれば元に戻る。8のカードは八切りといって出した人は強制的に場を流し親になれ、一番にカードが切れるのでかなり強いカードだ」
「まあ、説明は難しそうに聞こえるが、やってみると簡単なので始めるか」
弱い札から順にカードを出し始める。場に出たカードがKになったとき、これより強いカードはあるが駆け引きでわざとパスをして手札を残したり、自分の出番が有利にするために2やジョーカーを出して全員からパスを貰い、自分が一番最初に手札を出すというのもありだ。
「なるほどな! Aを使って2を出されればAの出し損になり、Aが残れば自分の手札から一番弱い札が出せると言うことか」
テレサが分かりやすく補足説明してくれた。カードを流しながらこのゲームのルールが飲み込めてくる。
「はい、ハートとスペードの6のカード」
ルリが二枚の札を切る。三人がパスをしてまた彼女が親になった。
「うわーこんな低いカードでまた親かよ!」
「Aが二枚でも宜しかったんですよ♪」
テレサはレイラにウインクを飛ばした。
「持ってね―し……」
レイラの目が泳ぐ。分かりやすい女だ――。ゲームはテレサが一番に勝ち抜けレイラ、俺、最後にルリが手札を残して負けた。
「ここでこのゲームの一番の肝がある。負けたルリは次のゲームで一番強い手札を二枚テレサに渡し、テレサは自分の手札の中から、いらない二枚のカードをルリに渡す。俺はレイラに自分の手札の中から一番強いカードを手渡し、レイラは俺にいらないカードを一枚俺に渡す」
「上から、大富豪、富豪、貧民、大貧民と位が分かれる訳だ。強いカードを二枚渡すので大貧民は上のクラスには中々あがれないこのゲームの怖さがある。」
ルリはエーーという顔をしたがこれは練習だと言うと、ほっとした顔をした。レイラもエッという顔をしていたが見なかったことにした。
異世界でドロドロのカードゲームが誕生した――
次回、激熱カードバトル!www
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