第五十三話 裏切られた重い
お久しぶりです! まさか次の投稿がこれほど遅れるとは思っていませんでした。ものを書くエネルギーを舐めていました――反省。
屋根を打つ雨音で目が覚めた。この数日の長雨でタリアの街が雨期に入ったことを実感した。異世界では年に二回、一日中雨が降る日が十日ほど続く。ここの季候は常春といって良いほど気温の変化が乏しく温かくて過ごしやすい。四季を自慢している日本人の一人だったが、常春を経験してしまうと四季など負け惜しみだと思ってしまう。
雨は冒険者にとって天敵に近い。冷たい雨は身体を冷やし、視界も悪くなり獲物の捕れる量が激減してしまう。山の中で雨に濡れながら猟をすることは可能だが、獲物を探しながらぬかるんだ道を進むのはかなり骨が折れる。しかも、火が使えないというのは暖が取れないと言うことだ。だから山を狩り場にしている冒険者たちは雨期には仕事を休むことが多い。俺も余程のことがない限り雨での薬草狩りはしない。
窓を覗くと横なぐりの雨が木々を大きく揺らしていた。このまま二度寝をしようと目を閉じたが、テレサがいつも通りの時間に仕事に向かうのを思い出し朝食の準備を始めた。大きなバケットを薄切りにして、その上に卵サラダを乗せる。味に関係ないのだが小さな赤い野菜を細切りにして色を加えてみた。朝食ならそんなバケット二枚とスープで一人前は完成するのだが、彼女たちがこれで満足するはずもないので、大量のバケットサンドイッチを皿に移す。料理を完成させてから卵サラダと野菜は、各自で乗せれば良かったと少し後悔した。出来る親父を見せたくて手間を掛けた自分が少し恥ずかしい。
テーブルの上に四人分の食事が並んだ頃、ルリとテレサが寝間着のまま椅子に座っていた。二人はボーとした顔をしながら俺に挨拶をした。俺はまだ起きてこない雛鳥を起こそうか迷ったが、冒険者を選んだ時点で規律ある生活など望んでいないだろう。
三人で朝食を黙々と食べる。夕食のようにテーブルに並べた料理に何の評価もなく彼女たちのエネルギーに変わる。おいひいの一言でもあれば救われるのだが、そんな思いやりの言葉は掛けてはくれない。登校時にテーブルで不機嫌そうだった母と自分を合わせてしまう……。作るのは一時間、食べるのは十数分――綺麗に無くなった皿を台所で洗いながらテレサの行ってきますという挨拶が小さく聞こえた。
ルリにこの後どうするか尋ねると、少し目を細めながら
「昼までお休み」
そういって自分の部屋に戻っていった。いつものようにべたべた張り付いてくるのもうざ可愛いのだが、素っ気なくされると物足りないと感じてしまう自分にうんざりする。食器を洗い終えたので、たまった服を洗濯しようと外に出たが雨脚が強すぎて諦めた。結局何もすることがないのでベッドで横になる。目をつむるが中々寝付けない。若い頃は腹が満たされれば幾らでも寝られた気がした。
天井を見上げながら元いた世界で一人暮らしを満喫していた事を懐かしむ。後悔しても詮なきことなのだが、この五月蝿い雨音が俺をセンチな気分にさせてしまう……。三十本入りのうまい棒をかじりながら、ラノベを読むことが出来ない今の自分に涙する。雨脚が弱まったらギルドの酒場にでも行こうかと思っているうちに眠気が襲ってきた。身体を眠気に預けると良い感じにまぶたが重くなる。
意識を手放し一番深い眠りに入ったときその悲劇は起こった……。誰かが鼻を突いて遊んでいる。
「おっちゃんお腹がすいたぞ!」
雛鳥が俺の腹に乗って身体を揺らす。ここでハイそうですかとご飯を作るほど大人ではない。俺はぷいと横を向き寝たふりをする。普通なら鼻を摘むとか身体をくすぐるとかされると可愛げがあるというものだ。しかし、うちの雛鳥は容赦がない。俺の顔にお尻を当てマウントを取る。
ある意味ご馳走と思われるかもしれないが、息が出来なくジタバタとベットの上で藻掻くおっさんが一人。
「あーねているからおきないなぁ」
向こうは完全に俺をおちょくっているのだが、顔の重しが全く外れない。頭の中に酸素が届かず永眠しそうになる。尻を摘んでやろうとするが腕も決められ藻掻くことも出来なくなる。さらにお尻をグリグリさせて顔が左右にひしゃげる。このまま彼女に平伏させられるのは流石に面白くない――俺は全力を込めてレイラを弾け飛ばした。
「ぶはーーーーーーっ」死のマウントが漸くほどけた。
「死ぬじゃねーか!」
声を荒げて怒鳴るとニシシと笑いながら
「寝たふりをするおっちゃんが悪い」
俺は明日からこの雛鳥を叩き起こすことに決めた。
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