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第十一話 消える命

ブックマーク、評価ありがとうございます。楽しんでもらえていますか。

「俺がおっちゃんに依頼を届けるよ!」


シュージは明るい声でギルドを飛び出す。


「おっちゃんさんの住んでるとこ知ってたの?」


ローラは目を丸くしながらシュージの顔を見る。


「二人だけで穫りに行くんだよ」


「だめだよシューちゃん、人の依頼を盗ったりしたらギルドに叱られちゃうよ!」


「あんな簡単な仕事、誰が片付けても文句は言われないさ。あいつも嫌がったからこそ、俺らをヘルプに使ったんだし」


「そう言われればそうだけど……」


 シュージは彼女の手をつかみ森に向かった――。


*     *    *


  湿地帯に近づくにつれ、化蛙の鳴き声が大きくなる。その大きさに比例して彼らの足にまとわりつく化蛙は増えていく。最初はローラがサイチュウ草を刈り取り、シュージが蛙を追い払うという連携がとれていた。しかし、その連携は一時間もしないうちに崩れ始める。


ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ


「こいつら超うぜぇーーー」


 鞘に入ったままの短剣を振りながら化蛙を飛ばし出す。


「シューちゃん! そんなことしたら化蛙が死んじゃうよ」


「大丈夫だって、噛まれる前に追い払う剣の修行さ」


 シシシと悪戯っぽく笑いながら剣で化蛙を飛ばす。その言い草にローラは呆れ返る。


「そうだ、二人で草を採ったほうが早く終わるよな!」


 妙案を思いついたかのように、シュージもサイチュウ草を狩りだした。少し文句を言ってやろうと思った彼女だが、早く終わるに越したことはないと口をつぐむ。


ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ


 湿地の奥に進むにつれ、化蛙が更に増える。


ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ。ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、


 草を狩り歩くたびに化蛙が踏まれてグワワと悲鳴を上げる。足に噛みついた大量の化蛙を雑に払いながら採集を続ける。


 ケロケロという鳴き声の中にブモーブモーという低い音が混じる。最初は小さかったその低音が次第に大きくなる。


ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ブモーブモー、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ブモーブモー、ケロ、ケロ、ケロ

  

「変な鳴き声が聞こえるよ」


 少し青ざめた顔をする彼女をみて明るく


「変な鳴き声をする化蛙もいるさ!」


ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ブモーブモー、ブモーブモー、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ブモーブモー、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ブモーブモー、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ケロ、ブモーブモー、ケロ、ケロ、ケロ、ブモーブブモー、ブモーブモー、ブーモーブモー、ブモーブモー


ケロケロという鳴き声が少しずつ消え、ブモーブモーという薄気味悪い低音が増えてくる。お互いに顔を見合わせ集めたサイチュウ草を見る。


「これだけあれば十分だ」


「そうよね……早く帰りましょ」


 そういって顔を上げた瞬間


「キャアアーーーーーーーッッ!!」


 彼女が悲鳴を上げる。その見上げた数メートル先に巨大な化蛙がいた。ヒグマを二倍ほど大きくした化蛙が、のそのそと泥を這いずりながら近づいてくる。二人はぬかるんだ土に足を取られながら逃げた。ローラはシュージの背中を必死で追いかける。少し後ろを振り返ると化蛙の姿が小さくなってきた。化蛙の追い足がかなり遅いのでほっと息をなで下ろす。

 

 突然、バシャーン! バシャーン! 泥を弾く大きな音が向かって来た。あっという間に彼らと化蛙の差は埋まる。


「シューちゃんどうしよ」


ガタガタ震えながらシュージにすがりつく。


 「殺ってやる!」


 鞘から短刀を抜き身構えるシュージ。大きくてもただの蛙の魔物――これぐらいなら切り抜けられると彼は確信する。ローラも落ち着いた彼の姿を見て安堵した。


 大きな口から青い舌が伸びる。シュージはそれを上手く交わして短剣で傷をつける。ウゴゴグゥゥ低い唸り声を出しながら後退りする化蛙。このまま逃げ帰れる彼らはそう思った――。


 ブモーブモーと絶望の重奏(アンサンブル)が聞こえた……彼らの背後から。


 湿地にケロケロと魔物の声が静かに鳴り響く


 二人の冒険はここで終わった……。

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