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未来でタイムマシンが発明されたら貴方はどんなことをしたいですか?

作者: とまと

2018年10月10日午前9時頃その男は突然、俺の部屋に現れた。

「僕の名前はカケル。100年後の未来から来た君のひ孫だよ!」


「・・・・・・」

俺は無言でスマホをポケットから出し警察に電話しようとした。


「待って!警察には連絡しないでよ!今、証拠を見せるから!」


明らかに怪しいこの男。年は俺と同じくらいか?未来から来たって言う割には未来人っぽさもない。服だって普通だぞ。


しかし俺はその後、自分の目を疑う。

男がしていた腕時計らしきモノから封筒が出てきた。

文字通り出てきたのだ。あの小さな時計から手紙とか入れる封筒が・・・。


マ、マジック?でも仕掛けがあるようには見えない・・・。


「これ、君が書いた手紙だよ。山内 剛(やまうち つよし)さん。」


「は!?なんで名前知って・・・。」


「だから、この手紙読んでみて。」

白い封筒だったのだろう手紙は茶色に変色していて、年季が入ってる感じはある。

俺は恐る恐る手紙を受け取り、中から手紙を取り出した。

便箋も封筒と同じく茶色く変色してはいたが、字は読めた。


つーか俺の字・・・いやそっくりに書いたのか?


美佳子(みかこ)(いつき)(わたる)、カケル、そして俺へ

今から書くことを必ず実行してくれ。

山内 美佳子(旧姓 原田)は2018年10月10日午前10時28分、東京都◯◯の交差点で交通事故に遭う。そこを俺が助けるんだ。これが俺と美佳子の出会いになる。美佳子を助けなければ、俺と美佳子が結婚するという未来がなくなってしまう。それはすなわち樹、亘、まだ産まれていないがカケルが産まれるないことになる。

2118年に完成するというタイムマシンに乗ってこの事を必ず俺に伝えて助けに行かせてやってくれ。

山内 剛 』


このサインは・・・俺は名前の横に書かれていたサインを見て絶句した。

そのサインは俺が中学生の頃アイドルになるのを密かに夢見て考えたサインだった。

『Dice 剛』 と自分で考えたグループ名と名前を崩して他人が見たらなんて書いてあるか分からないようなサイン。

このサインを知っているのは俺しかいない。

これは・・・突然現れた男が未来から来たかどうかはさておきこの手紙に関しては俺が書いたと認めざる終えない。


「この手紙に書いてある美佳子と樹と亘って知らないんだけど。カケルはお前ってこと?」


「美佳子は書いてある通り君の奥さんになる人。樹は君の息子だよ。僕にとってはおじいちゃん。亘は君の孫。僕の父親だよ。」

嘘なのか、なんなのかこれは誰かが手の込んだドッキリでも仕掛けているのか・・・。


「とりあえずこの場所に行って美佳子を助けてよ。君達が出会わないと僕たち子孫は存在が消えちゃう。」


「確かにそうだけど、これが本当に未来の出来事ならわざわざ君が伝えに来なくても俺は助けに行くんじゃないの?」


「分かってる?俺がここに来れたってことは他にもタイムマシンで過去へ行ける人がいるって事だよ。」


「100年後は誰でも自由にタイムマシンに乗れるのか?」


「いや、100年後でも選ばれた人しか乗ることは出来ないよ。存在も一般の人は知らない。でも、その選ばれた一握りに、なりたい人なんてたくさん居るんだよ。誰かの陰謀で僕の存在が消されないよう、僕は確実に自分の未来を守る為にここに来たんだ。それは、言うなれば君のこれからの未来を守ることにもなる。」


俺のこれからの未来・・・。

仮にこの女性と出会わなければ俺は、一生結婚できないかもしれないとか・・・。


「信じた訳ではないけど、取り敢えずこの場所に行ってみるよ。」


そろそろ事故が起こる時間だな。でも顔も分からないのにどうやって助け・・・

横断歩道を渡ってくる一人の女性。

あの人か?あと2メートルで横断歩道を渡りきるときに右折してきた車がスピードを緩めず侵入してきた。

俺はとっさに彼女の腕を掴んで、俺の方に引っ張る。俺はバランスを崩して彼女を抱き止めながら後ろへ尻餅をついた。

間一髪スレスレで車は横断歩道を過ぎていった。


ま、マジか・・・。

「あ、ありがとうございました。本当にありがとうございました!あ!手に血が・・・」

近くの公園のベンチに座って彼女が薬局から帰ってくるのを待つ。


実際たいした怪我ではないので治療する程でもないが、ここから恋が始まるのかと思うと緊張する。

名前、聞いてみないとな・・・。


「お待たせして、すみません。」

息を切らして彼女が小走りで戻ってきた。

俺のタイプの派手な感じではないが真面目で家庭的っぽい。結婚するならこうゆうタイプの方が上手く行くのかも。顔もまあ、可愛いし。


彼女は丁寧に消毒液を塗ると傷テープを貼った。

「今日は本当にありがとうございました。お怪我までさせてしまい申し訳ありません。」


「いえ、あなたが謝ることではないですよ。それよりあなたが事故に遭わなくて本当に良かった。」


そう言うと彼女はパッと俺の方を見て顔を赤くしながらモジモジと

「あ、あの良ければご連絡先とか交換して頂けませんか?お礼もちゃんとしたいですし。」


お、これは恋に落ちちゃった感じか!いいね!なかなかウブな感じ可愛いじゃん!


「良いよ!じゃあLI◯E交換しよ!俺、山内 剛。」

「あ、原田 美佳子です。」

ビンゴ!これで、俺の将来安泰!やったぞ!俺の子孫達!


それからはトントン拍子に俺と美佳子はお付き合いをし、結婚をする。

美佳子は最初の印象通り家庭的でよく尽くしてくれる妻だった。

子供にも1人恵まれ名前はもちろん樹にした。

その内、孫の亘が産まれ俺の人生、幸せだった。

そろそろ、その時がくるのだろう。


俺は美佳子と樹と亘とカケルに手紙を書く。

美佳子と樹には未来からきたカケルの事は話した。樹は嘘だと思ったかもしれないが、美佳子は信じると言ってくれた。

享年75才で俺は死んだ・・・。



「お義母さんはお義父さんのそばに居てあげて下さい。」

私が葬式の片付けで動いていると樹の嫁、紀子が気遣ってくれた。

「紀子さんありがとう。でも大丈夫よ。それに私にはみんながいてくれるから無理はしないわ。」

紀子は気遣いの出来るいい嫁である。

「でもお言葉に甘えて、少しだけ剛さんの所に行ってくるわね。」


私は剛の遺影の前に座った。

黒の着物の合わせ目に手を入れ白い封筒があることを確認する。

生前、剛が美佳子はに託したあの手紙だ。


「剛さん今まで本当にありがとう。あなたと結婚できて私とっても幸せだったわ。あなたが助けてくれなければ、私はあの事故で死んでいたんだもの。

あなたの手紙は確実に子孫へ受け継がせます。

そう、それが私の50年前からの願いだから・・・。」




その男は突然、私の部屋に現れた。

「パンパカパーン!!あなたは未来を変えられる権利に当選しましたー!!」


「は!?」

派手なマジシャンみたいな格好をしたおじさんがいる・・・。


「ドロボーですか?警察呼びますから。」


「あなた今、アンケートに答えましたよね?未来でタイムマシンが発明されたら貴方はどんなことをしたいですかっていうアンケート。」


「な、なんで知ってるの!?いつからそこにいたの!見てたの!?」

あんな事を書いた事が知られてたなんて恥ずかしい。


「違いますよー。僕はそのアンケートを依頼した企業の社員です。正確には100年後の社員ですがね。」


「は?なに言ってるんですか!?」


「ですから、100年後に実際にタイムマシンが完成したんです。」

タイムマシン?100年後?この人ヤバイ人じゃない?早く警察に来てもらわないと!!


「仮に100年後にタイムマシンが完成したとして私に何の用があるんですか?」

取り敢えず、相手を刺激しないよう話に乗ってみる。


「あなたの願いを叶えに来たんです。では、アンケートの質問とあなたの答えを読ませて頂きますね!

『未来でタイムマシンが発明されたら貴方はどんなことをしたいですか?』

『好きな人と結婚出来る未来を作りたい。』

ちなみに貴方の好きな人と言うのは大内 剛さんで間違いありませんか?」


その名前に私の顔は真っ赤になる。

「どうしてそれを・・・。」


「未来を変える権利には何人かの候補がいてね。誰が1番いいか決めるのに色々と調べさせてもらったんだ。それで、あなたに決まったんだよ。原田 美佳子さん!」


「名前まで!?どうして私なの!?」


「あなたは2018年10月10日午前10時28分に東京都◯◯の交差点で交通事故で死亡します。」


「は?なにそれ?」

私は怪訝な顔になる。


「だから、死んじゃうんです。」


「よく分からないけど、それで死ぬんなら未来も何もないですよね?」


「そうです。だからです。これは基本の時間軸から外れた場合どうなるかの実験なんです。」


「???どう言うこと?」


「基本の時間軸が1本の線だとします。基本の時間軸はA。今、あなたがいる2018年は基本の時間軸で2018年Aです。私が来たのはこの2018年Aの100年後なので2118年Aです。Aの時間軸では美佳子は2018年に事故で死ぬ。そこまでは分かった?」


「は、はい。」私はゴクリと唾を飲み込む。


男は頷いて話を続けた。

「でも2118年Aから来た私の助言により美佳子は事故に遭わずに生きることになる。ここで2018年10月10日Aの途中から新しい時間軸Bが出来るわけだよ。」


「え?なんで?」


「だって、Aの時間軸には2018年からずーと先の未来まで美佳子が事故で死んだ世界が続いているから。でも美佳子が死ななかった訳だから美佳子が死なない時間軸Bが平行して進んでいくって訳だよ。」


「なんだか分かったような分からないような。でもそんなものを作って大丈夫なんですか?」


「問題ないよ。パラレルワールドは無限に作られるから。」


「パ、パラレルワールド?」


「そう。基本の時間軸以外を総称してそう呼ぶんだよ。ちなみにこの世界もパラレルワールドだからね。」


「え?え!?なんだか頭が混乱してます。」


「まあ、難しく考えず、君は死なずに済んでしかも好きな人と結婚できる。どう?いいでしょ?」


「まあ。でもあなたへのメリットがやっぱり良くわからなくて。上手く騙されてるだけのような・・・。」


「私はパラレルワールドが作られた事によって起こる問題を調べたいんだよ。だって今後一般化したときに、みんなが自由に自分の過去を変え出したら大変でしょ?」


「私はいいんですか?」


「だからさ。美佳子は本来死ぬ予定だったから基本の時間軸から大きな変化があるが誰かに迷惑がかかる可能性も低いだろうという事さ。」


「迷惑がかかる可能性が低いって事は、本来、山内 剛さんと結婚する予定の人とかもいないんですか?」

男は鋭い目をして睨んできた。


「そんなの君は気にする必要ある?」

これ以上は何も聞いてくるなということかな・・・。


「何を悩んでいるのか分からないけど、この世界自体パラレルワールドだからね。君はすでに別のパラレルワールドで事故から助かり山内 剛と結婚するという未来を手に入れているんだよ。」

ほ、本当に?でもこのままだと私は事故で死んでしまう。山内さんの本来の結婚相手・・・。産まれて来るハズの命・・・。私が生きることを望んだらその人達は・・・でも・・・。


「フフ、ハハハハハハ!!」

なんだか今までの人生で1番黒い笑いが込み上げてきた。

私の答えを察したのだろう。男もニヤリと笑う。


「分かりました。この話受けましょう。」


それから男は本当の私と山内さんのひ孫『カケル』に私を助けに行くように説得してもらうこと、私が事故当日どうすればいいかなど細かい指示をした。それから自分が来て話した事は絶対に他の人に特に山内 剛には言ってはいけないと事、山内が死ぬ前に必ずタイムマシンが完成したら美佳子を助けに行くように伝える手紙を預かるようにと言った。その手紙が山内さんを説得する重要なアイテムだと・・・。


そして男は助けられた時は知らないフリをするようにと念を押して、腕時計らしきモノを操作すると私の部屋から消えた・・・。


指定された日時、時間、場所で指定された通り横断歩道を渡っている最中にグイっと腕を引っ張られ、突っ込んできた車に轢かれずにすんだ。


助けてくれたのは私の好きな人だった。


私がバイトしている食堂にたまに食べに来てくれる彼は、いつも私が作るご飯を美味しそうに食べてくれていた。

たまたま、ホールに出ていた日にカバンにぶら下がる彼の定期を盗み見て名前を知ることが出来た。

でも地味な私が彼の眼中にないのは分かっていた。


彼に助けてもらえる日に合わせて私は少しでも可愛いと思ってもらえるようにイメチェンした。

傷の手当てをして、勇気を出して連絡先聞いて、少しでも彼の印象に残るように・・・。


私は死なずに好きな人と人生を共に歩むことが出来た。

この幸せを次の私へ繋ぐため確実に手紙を子孫へ受け継ぐ。

美佳子はそっとほくそ笑んだ・・・。


その様子を物陰から派手なマジシャンみたいな格好をした男が見ていた。

「ふー取り敢えず10回目成功。さて協力してもらったカケル君には悪いけど、次は山内 剛の本来の結婚相手と結婚してもらってパラレルワールドから基本の時間軸に戻れるのかの実験だな。」

そう呟くと腕時計らしきモノを操作しその場から跡形もなく消えた・・・。


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