黒塗り
部屋は赤く染まっていた。部屋一面が燃え、壁や床は抉れ所々に穴が穿たれていた。
部屋を赤く染めているのは炎だけではなかった。
お互いの返り血が、自分達の血を浴び体を染めて二人は対峙していた。
一人は壁にもたれ、もう一人はそいつを見下ろしていた。
「よく、この魔王を一人で討ち果たした。人間を我は侮っていた。人間とは群れそして知恵で互いを補い戦うから強いのだと、一人で突っ込んできた人間にやられるとは我では計り知れぬ種族だ。お前は何故そんなにも強い?」負けを完全に認めているのだろう、ただ純粋な疑問をぶつけたみたいだった。
「俺はお前が憎かった。ただ、それだけだ」
「それだけか?」
「それだけに我は負けたのか」
「俺の人生をかけたんだ。それだけとは侵害だが」
「そうか、それほど魔族が憎いか」
「俺の村を家族を滅ぼした奴らとそれを指揮していたお前以外の魔族はどうでもいい」
「...そうか、珍しい人間もいたもんだ...最後に頼み事をするのはお前がいい」
「頼み?」
「実はな一人娘がいる。ここは人間に占領され魔族は迫害を受けるだろう。だからどうか守って欲しい」
「家族を殺した奴の家族を守れと?」
「気に入らないなら殺してくれてもかまわない。お前なら一族もろとも滅ぼされるのも悪くない」
「...考えさせてくれ」
そして俺は疲れからか、不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。
後輩をかばいすべての責任を負った三浦に対し、車の主、暴力団員谷岡に言い渡された示談の条件とは…。