2話 籠の鳥なんて可愛らしいものではない
「紳士、淑女、それ以外のみなさーん。ホテル シックスにようこそ!!
あなたたちは選ばれた人間だ」
1つの影が芝居じみたわけのわからないことを貼りつけたような笑顔で言いながら、被っていたフードを外した。茶髪でホストのような軽薄そうな男だと思った。
ホスト男を見た瞬間、あきらかに場の緊張感が崩れたと感じた。瞬間、次々と怒号が上がる。
当たり前だ。正直、不安でいっぱいな中であんな薄っぺらい男が出てきたら、どんな聖人でも文句くらい言いたくなるだろう。私も言いたい気分だ。
「うるせぇな。今の自分の状況わかってやってんのか?」
嘘っぽい笑顔が消え、めんどくさそうな表情をしているがどこか楽しそうな雰囲気が滲み出ている。
「お前こそ、ふざけているのか!なんだここは?!元の場所に戻せ!明日は朝イチから会議なんだ!」
40代後半のサラリーマンのような風貌の男がいかにもなことを叫んだ。
「ふざけてるわけないだろ?めんどくさいな……。Delete。」
「何を言っている……?ふざけてないでさっさと……。あ、あああ…ああ、あ。」
サラリーマンが徐々に消えた。まさにdeleteだ。跡形もなく消えた。
「おやおや、先ほどまであんなに囀っていたのにいきなりだんまりか?
まぁ、当たり前か。お前らの目の前で人が1人消えたんだもんな。そら驚くか。」
驚かないわけにはいかないよね。人が消えちゃったんだから。日常生活でそんなこと起こるわけがないからね。
「まぁ、いつも通り、計画通りだからこのままルール説明をしまーす。」
いつも通り、計画通りなんてさらっと言ったけど、このゲーム?がこれまであったってこと?
「まず第1ステージはその名も
“鬼ごっこ” だ」
この場にいる全員が動揺した。
当たり前だ。ふざけてるじゃないか。鬼ごっこなんて小学生がするようなものだろう。
この年になってまさか鬼ごっこをするなんて思いもよらなかった。
こちとら体を動かすのなんて体育の授業のみだぞ。
「今、ふざけてるって思いましたよね?」
心読めるのか?あのホスト男……。まさかね……。
「そりゃ、ここにお集まりのみなさんは老若男女様々な人がいますよね~。能力差に不安がありますよね~。でも、安心してください。このホテルにいる間は皆能力に差もなく、一定ですから。」
どこかの嘘くさいショッピング番組みたいで、現実味のない話おもったが、そもそもここにいる時点で現実味がないと気付いた。
「皆さん、納得されたようで、す、ね~。じゃあ、ルール説明に入りますね~。
ルールはいたって簡単。ゲームマスター3人が鬼となり、皆さんがこのホールから出てから5分数えてから捕まえに行きます。
以上です。」
普通の鬼ごっこと変わらないみたいだ……。
「ちなみに、鬼のほうはちょっとした道具を使いますから、あしからず~。
それと捕まることは死を意味しまーす。皆さん頑張ってくださいねー。」
普通の鬼ごっこと違った……。命を懸けて鬼ごっこするなんて小説やドラマみたい……。
頭の中パンクしそうだけどここはとにかく逃げるしか選択肢がないみたい。
「それでは、ゲーッムスタート!!!!」
扉が開き、ホールにいた人全員が駆け出した。