1話 始まりは騒然
―――嘘ならよかった
真実は時に残酷すぎる
過ぎ去った時はもう二度と戻らない
『ここはどこなんだよ……』
『お母さーん……どこぉ……』
『今は何時なんだ?』
目を開けるとたくさんの人がいた。数にしてみれば200人。
頬を抓ってみると痛かった。
痛いということは夢ではないということなのだが、どう考えてもこの状況は夢みたいだ。
しかし夢にしては、やけにはっきりしていた。
ここはどこなんだろうか?
クラッシックを聴いたり、劇を上演するようなホールに見えるが今までこんなきらびやかな場所に足を運んだこともないし、縁もない。
とりあえずこの座席に座っておこうか。
座ってみると自然と落ち着いて周りがよく見えた。
私の周りにいる人たちは知らない人たちばかりだ。
ここはどこなんだ?
「なぁ、お前、真由か?」
聞き覚えのある声だ。まさか
「エセメガネ?」
「やっぱ真由か。隣座るぞ。エセメガネって言うな。ここがどこかわかるか?」
「……分かってたら苦労しないよ。それに私がこんなところに来たことがあると思ってる?」
「思わない。一応聞いてみただけだ。俺達は一体なんでここに集められたんだろうな……?」
「知らないわよ。しばらくいれば何か分かるんじゃないのかな?」
「まぁ。それが妥当な考えだな。」
この男は私の幼馴染の啓太。
知り合いがいるならもっとマシな知り合いがいてくれたらよかったと思うくらいこいつの性格はめんどくさい。
―――ガチャンッ!
急にホール全体が暗くなった。
刹那、舞台にライトがついた。
さながら劇が始まるようだった。
舞台上には6つの影が並びその中の1つの影が舞台中央に躍り出た。
「レーディスアンドジェントルメン―!!!」