帝国王女を護衛せよ
「それでなんで奴から逃げられるようになったカルナク?」
抱えられながら運ばれているアワリオはカルナクに聞く。カルナクは
「私の履いている靴を強化して自動歩行できるようにしたんです。だから私は動けている。これがなかったら逃げきれませんでしたね」
アワリオはカルナクの足を見ると、かなり震えていた。
「そうか。やはり貴様にもダメージはあったのだな。ありがとうな。奴から逃がしてくれて」
「当たり前だよ。もう仲間が死ぬのはごめんだ」
カルナクがアワリオにいうと、アワリオは少しうしろめたくなっていた。
記憶をなくしているとはいえ、一度は帝国に、アスラスに氷漬けにされたのを覚えていないのをいいことに利用しているからである。
「ん?どうした?なんか私に申し訳なさそうな顔してるが」
「どんな顔だよ。とりあえず、私はアスラスに受けた指令をもとに行動する。アスラスが言っていたのは女王を帝国の魔の手よりすくうことだ」
「帝国王女・・・、おう、じょ?」
カルナクは頭を抑え始め、アワリオは急に頭を抑えてしゃがんだカルナクを励ます。そして可能性を探る。
「どうした急に頭を抑えて、何かあったか?」
「帝国王女って聞いてあ、頭が・・・」
「なら考えるな。とにかく、魔王が復活するとなれば真っ先に始末されてしまうであろうからな。王女にはダーランマ様が与えたある能力がある。異能力とは別のものを」
「そうなのか。なら必ず今の帝国から救わなければな」
アワリオは少し騙しているような気分であったがもはやダーランマの支配していない帝国には興味はなく、せめてダーランマが帝国に残したのもは全て奴らの手に渡らないよう管理したいと考えていた。
「魔王が目覚めるのもおそらく近い。ダーランマ様を助けられないのは悔しいがヘビガメまでやられてしまった今私に価値があるのはこの知能だけだ」
「それを自分で言うのがすごいな。それより早く向かおう。今はもういつ目覚めてもおかしくないんだろ?魔王」
カルナクとアワリオはチリーのいるであろう王の間へと向かった。
その頃、アワリオたちを逃してしまったアベはナンレのもとへと戻っていた。
「アベさん。無事に帰って来たのか」
「ナンレ様。すみません。アスラスの残した奴らを逃してしまいました」
アベはナンレにアスラスの残したものたち、アワリオとカルナクについて言う。
「逃したのか。しかしそいつらは逃すほどの強さだったのか?」
「いえ。私とナンレ様なら普通に実力差があります。アワリオの自慢の魔物とやらも私がやりましたので大丈夫です」
「そうか。ならば捨て置けば良い。それよりそろそろ父上を目覚めさせる儀式を始めるわよ」