吸血鬼の部下
「面白いことを言う。まぁ貴様は知らぬだろうな。最初から魔王様の経験値となるべくその恩恵をもらっていたことをな」
「な、んだと。ば、かなぁ。そんな、ことない、は、ずだ」
カスマは吸血鬼の放った一言を聞くと、そんなはずはと思う。
「嘘ではないさ。誰だって封印され長年眠っていれば復活した時、本気を出せないであろう。その為の融合の恩恵さ。これを魔王様に渡せば魔王様は最初からフルに実力を発揮できる。貴様がただその恩恵を返すにしても融合の恩恵はナンレかアベがある方法で取らなければ剥がれないし、死んでしまえば恩恵自身がこの世をさまよう」
「ナ、ンレ、がそんな、ことを、く。ならば、私は・・・」
「抵抗しないでよー。殺しちゃったらどうするのさ。私がナンレに殺されちゃうじゃないか」
カスマは黒炎でまた手を作り、手のひらから黒炎を吸血鬼のいる、黒い球体に向かって放つ。
「黒炎・波!」
「はぁ。私は殺したくないからな。こいつに相手してもらおうかな。出て来い!吸血部下1号」
黒い球体から黒いもやを纏った助成が現れる。
「燃え尽きやがれ!・・・ぐぉ!」
カスマの黒炎で作った両手は急に切り裂かれたかのように切れる。
「な、ん、だとぅ」
「こいつはガイアラーの森にある川を見ていたらたまたま流れてきてな。こいつの能力。どうやら相手の傷口を開く能力らしい。今の貴様にはかなり聞く能力だろう?」
「き、ずぐちをひ、らく、だとを」
「そうだ。たとえそれが特殊な腕であれなんであろうと切断したという結果さえあれば傷口になる。だからお前が腕から黒炎だっけか?私が一度腕を切断したから何度生やして攻撃しようと無効化される」
「な、らば。これ、でえ!」
カスマは背後に黒炎の小さな塊を何個も生成する。
「黒炎・小玉砲!」
「無駄だ!」
吸血鬼が出した女性が自分の前に黒い球体を盾にする。
「な!」
「ふ。これは見事なことなのだよ。その黒炎、触れれば恐ろしいがこの球体には特殊攻撃無効が振ってあってな。これに当たれば貴様の攻撃などあっさり消えてしまう」
カスマの放った黒炎小玉砲は黒い球体の前であっさり消滅する。
「く、そ。私は、こんな、ところで、せっかく、これから、この体を自由に、扱える、というのに」
「融合という貴様には似合わない恩恵をもらったことを呪うといい」
最後に吸血鬼は黒い何かをカスマに放つ。
カスマにはもう対抗するだけの力はなく、それを受けて気絶する。
「任務完了と。さて回収回収」
吸血鬼は黒い球体に部下の女性とカスマを取り込むとガイアラン皇国からフッと消えた。