バイセン
ガイとイナハルがダーラスのもとに向かう中、パルアンにいっぱいくわされ、奴隷にしようとしたパルアンの娘を奪われたバイセンは、記憶の困惑に苛立ちを感じながらパルアンを探していた。
「く、そ。あいつだけは絶対にゆるさねぇ。この私をコケにしたんだ。絶対見逃すわけにはいかない。やつだけはどんなことをしても破滅の道を歩ませてやる!僕をこんなまた悪党の道に戻したあのテムルナみてぇによう!」
バイセンは人通りの多い道を何も怪しまずに歩く。それほどまでに彼は頭に血が上っていた。
「はぁはぁ!」
「ミィーツケタ!」
バイセンは急な声に正面に現れた人物を見る。
「だ、誰だ!貴様は!」
「オレヲワスレタノカ!バイセン・アクトー!」
「見たことなどないわ!貴様みたいやつなど!」
「ハハァ!ソンナンジャ、フクシュウニ、ナラナイジャネェカ、ヨウ!」
バイセンの前に現れた男は淡々と語るが、バイセンは全く興味を示さず、ただただパルアンのことだけを考えていた。
「ったく。どいつもこいつも絡みやがってめんどくせぇ。どこの誰だかしらねぇがざこに用はねえ。早く僕の前から消え失せろ!」
「ハハァ!ナンナラ、イマ、オモイダサセテヤルヨゥ」
男は手を刃物のように扱い鋭い勢いでバイセンに襲いかかる!
「ラァ!」
シュ!バイセンの頰に男の攻撃はかすり、バイセンは驚き、そして気づく。こんな手を刃物のような鋭い攻撃をする奴は奴しかいないと。
「お、お前まさか、テ、テムルナなのか?バカな。こいつはこんなに自分の手を鋭利にできないはず・・・僕より弱いはずだ!お前は!」
「イツノハナシヲ、シテイルノカハ、シラネェガ。オレハモウ、オマエナンカ、コワクモナントモナイ!サァ!キョウフヲ、カカエテ、シヌトイイ!」
テムルナはバイセンに手刀のラッシュを繰り出し、バイセンはそれを何とか避け続ける。
「オラァオラァ!ドーシタ!ドーシタ!アハハハハ!」
「くっ!能力を使おうにも接近しなければ・・・。くそ!当たれば必ずこの状況を打破できるのに!」
「ハハァ!オワリニシテ、ヤルヨ。オレハ、ヤサシイカラナ!ハハハハ!」
「優しいなら見逃して欲しいね!」
「ソレハ、ナイナァ。オレハ、オマエヲコロシタ、アトノミライ、ガ、ミエネエ!」
テムルナが叫んだ後、大きく、思いっきりバイセンの心臓をめがけて手刀を放つ!
「オラァ!」
「くっ!舐めるなよ!僕がこの程度で!」
バイセンは腰にかけていた剣を抜き、切っ先でテムルナの手刀に対抗しようとしたが・・・
バキッ!
「な、にぃ」