皇国の影の知恵者
アルディンがナンレたちによって送り込まれたテムルナと争う中、ババランの部下の1人、クウはババランによって与えられた使命を果たすために、アルムの屋敷前に訪れていた。
「ここがアルムの屋敷、少し時間はかかったけどやっと着いた。そこらへんにいた人に聞いても知らないかでかい屋敷とかざっくりとしか教えてくれないからな。見つけるの大変だったぜ」
アルムの屋敷前にまで着いたクウはブツブツ言いながら、屋敷の前で大きな声で言う。
「おーい!アルムの屋敷だと思うですけど誰かいませんかー!」
クウが叫ぶと黒い服を着た礼儀正しそうな1人の老人がクウの前まで走ってくる。
「どこの誰だか知りませんが非常に迷惑なので叫ぶのはおやめくださいませ。それで、何か御用でしょうか?今屋敷の主人、アルダス様は外出のため、アムライ7であるアルナラ様を代わりにお呼びしますが」
「いや、そのアルナラとかいうやつに用はない。用があるのはバーラン・クレイという女なのだが」
黒い服の老人は一度クウの身なりをみると、質問する。
「失礼かもしれませんが、あなたは皇国の、王様から派遣された情報の提供者でしょうか?」
「情報の提供者?それについては知らないが用事があるからきた。それじゃダメか?」
「わかりました。では質問を変えましょう。あの穀潰しのご友人でございますか?」
「・・・」
バーランのことかは分からないが酷いいいように驚愕し、少し唖然とするクウ。
「は!そうやって油断させようとしても無駄だ!とにかく、バーランに用事があるから呼んできてくれ!」
「残念ながらお会いさせることは出来ませぬ。穀潰しとは私めは思っておりますが国からの情報提供者がくるということは皇国によって役立つ人間だということ。あなたはそれに初対面の様子、しかもこんな時に限って。明らかに怪しい。ですのでお通しすることは出来ません。どうかお引き取り願います」
ぺこりと黒い服の老人はクウに一礼した後、クウの前から去って行く。クウは黒服の老人が背中を向けた瞬間、黒服老人に異能力を使う。クウの能力で急に黒い服の老人の顔は消え、体だけが残りその場でばたりと倒れる。
「黙って通しておけば死なずに済んだものをまあいい。こうなった以上穏便には済まないだろうからな」
クウは屋敷に入る柵を壊して中に入る。そのまま屋敷の園内をまっすぐに歩き、屋敷の扉の前に立つ。
「さてさっきのやつがかえって来ない以上、多分屋敷に入れば戦闘になるだろうな。はぁ、めんどくせぇや。ザコが群がるほど悲しいもんはないからな。まぁいいか。みんなまとめて相手してやるか」
クウが屋敷の扉を開けると案の定、黒服の男、メイドたちが中で掃除用具という武器を持ち、クウを待ち構えていた。