テムルナの異変
テムルナが今のようなよく分からない状態に陥ったのは訳があった。
テムルナは一度、カスマの命により帝国に帰還し、回復してからまた皇国に侵攻し、自らの願い、友であるパール・スラを殺してまでもやり遂げようとしたことをやるつもりでいた。
しかし、帝国に帰ったテムルナを待っていたのは残酷な歓迎であった。
テムルナはカスマの命令で一度帰還した後、あまりのダメージにゲートの魔法から帝国についても体が動かずにいた。
そこでダーランマがテムルナの体を持ち上げ、回復カプセルのある場所にテムルナは向かっているのだと思っていたが、結果は違う。
「す、まないな。俺のためにここまでしてくれてよ」
テムルナは担いでくれていたダーランマに礼を言う。普段のダーランマならきっとこんな面倒なことはしないからだ。
きっとカスマに言われて、やってくれているんだと、そう思い少し、申し訳ない気持ちでいた。
「いやいやなんのなんの。こちらとしてはカスマ様がお前をこちらに返してくれて助かったよ。目覚めたあのお方の最初の相手を誰にしようかと考えていたところにカスマ様がお前を使ってくれていいんだというのだから」
「へ?なんのこ、と。う!」
テムルナの意識はそこで途絶える。無理矢理ダーランマの魔法によって眠らされたのだ。
「最低限の回復はしてやるよ。こんな状態のお前じゃ目覚めたあのお方の初相手にしては失礼だからな。次に目覚めた時は君の最後だよ。ふ、ふふふ。あっはっは!」
ダーランマは高らかに笑い、回復カプセルのあるアワリオの研究所に戻る。
「やっときましたか。目覚めたこのお二人は早く戦いたいらしいですよ。準備運動がしたいと」
ダーランマが研究所に着いた瞬間アワリオは言う。
「悪いなアワリオ。でも少しはこいつを回復させねえとな。荒削りでいいから出来るだけ早く傷を治して体力を回復してくれねえか?」
「ああ。荒削りでいいならすぐに終わるよダーランマ様」
アワリオはテムルナの体を受け取るとすぐに回復カプセルに放り込み、起動させる。
すると瞬時に傷だけ回復していた。
「よし。これくらいで充分だ。どうせこいつはあの2人に始末される哀れな男だからな。さて。それじゃ前にバウラムを押さえ込んでいたあそこで戦わせるか。新たに目覚めた魔王将2人とこいつをな」
ダーランマとアワリオは回復したテムルナの体を見て悪魔のような顔で笑っていた。
そして次にテムルナが目を覚ました時には謎のリングが出来ており、反対側には知らない男が1人と女が1人立っていた。