file:プロローグ
やぁ、君とこうやって会うのはじめてだね。
じゃあ改めて自己紹介からしよう。
僕の名前は異世界。
その名の通り、僕は【異世界】という実態のない存在のそのものであってだね。
ほら、僕の声は聞こえても、実態がないから君に僕の姿は見えないだろう?
でも僕は君のことを何度も見たことがあるんだ。
よく目をキラキラさせながら僕(異世界)の中を覗き込んでたの、見てたから知ってるよ。
ククッ…そう怯えた顔しないで。
取って食べたりはしないからさ。
ここがどこかって?
言っても君には理解できないさ。
理解しようとはしてくれるんだろうけど、それは無駄な労力ってやつだね。
それより、暇だったらちょっと僕とのお喋りに付き合ってくれない?
お喋りというか、少し愚痴に近いのかもしれないけれどね。
最近ね、僕の中に全然知らない野郎がぽんぽん投げ込まれてくるんだよ。
「異世界転生」って元世では言うらしいんだけど……ククッ、そんなこと知ってるって顔してるね。
転生してくるのは大半が無職の男。
でもその男達はやたら強かったり、特殊能力を持ってたいり、とにかく個性が強い人間ばかりなんだよ。
僕的にはもっと巨乳の美人とかが…っと失礼。
ゴホンッ
ところで、君はこんなに転生が頻繁になってる原因をしってる?
…………………………え?
流行り?
僕(異世界)の中に転生するのが元世の流行りなの?
はぁー…………なにそれ、嘘デショ。
そんなくだらない理由だなんて想像もしてなかったよ。
やれやれ…流石の僕も参ったなぁ。
そのせいで僕の中
今、大変なことになってるんだけどなぁ…。
ん?
何が大変なのか気になる?
いいよ、僕のお喋りに付き合ってくれている君にならトクベツに教えてあげよう。
実は最近、元世から僕の中に転生してくる人間達があまりにも多すぎて収集しきれなくなってきてるんだよ。
ククッ!
あー、そうだね、人間的な表現で言うと
「お腹いっぱい、もう食べられません」
ってやつかな?
………まぁこれって正直あんまり笑える話じゃなくてさ、最近の僕の中は新しくて強い生命エネルギーが入り込みすぎて【本来僕の中にいるべき人達】が僕の中が窮屈すぎて弾き出されそうになっているんだ。
【本来僕の中にいるべき人達】は僕の外に出ると魂、というか存在ごと消滅してしまうから、頑張って外に出さないように僕という「世界を受け入れる器」の容量を拡大したりして、弾けないよう制御はしているんだけどね。
え〜
なにその理解できてないって顔。
君、確か頭良かったような気がしたんだけどなぁ………やれやれ。
じゃあ、もっと簡単に説明するよ。
まず僕は人の想像によってできている存在ってことを理解してほしいかな。
君が生きている元世と同じ。
地球は神が創造したもの。
僕(異世界)は神(人)が想像したもの。
ね?同じデショ?
ここまではいいよね?
僕という存在は、数々の神が想像した世界を実態として受け入れる器みたいなもの。
で、神が想像した時点で元々存在する人が【本来僕の中にいるべき人達】なのさ。
例えば、神が想像した世界の中にいるパンの売り子や武器商人とか、帝国のお姫様とかね。
神が想像した世界は僕の中で本当に実物として「存在する生命」になっているわけ。
ま、神(人)は自分が想像した世界が実物として存在してるなんてことは知らないんだけどね。ククッ。
あぁ…話を戻すよ。
とにかく、そんな僕の中に入ってくる転生って本当にイレギュラーな現象なんだよね。
元から神の想像で転生してきた定で生まれてくる人物ももちろんいるけど…そんな存在はとても稀なんだ。
むしろ殆どいない。
分かる?
始めに神が想像した世界にいなかったわけだから、1人転生してくるのでも色々と大変なんだよ。
転生者なんて僕からしたら完璧な部外者共だしね。
でも、現状は僕の中には日が増すごとにそのイレギュラーが増え続けている。
しかも一人一人がとっても生命エネルギーに満ち溢れている、つまり個性的なんだよ。
ーね?そんなのがバンバンきたら僕の力(器)の容量をかるーく越しちゃうわけ。
僕の役割には【本来僕の中にいるべき人達】を中に入れて置くことも含まれているし、その人達は僕の外に出ると消滅してしまうからキャパオーバーは本当に困るんだよねぇ。
正直、転生者を受け入れる枠を広げて【本来僕の中にいるべき人達】が僕の外に出ないように制御してる僕の力も、最近の転生の頻度が続くともうすぐ効かなくなる可能性が大。
それにこれ以上に新しい転生者が必要以上に増えると、生態系のバランスとか諸々おかしくなって最悪の場合、僕の制御も無能化。
【本来僕の中にいるべき人達】はもちろん転生してきた人達も外界に飛ばされて全消滅。
元世の人達にもどーんな影響が及ぼされるか予想できないなぁ。
まぁ無事では済まないだろうけどねぇ…。
…ってゆう、大変な状態なのさ。
お分かり?
いやぁ、まったく参っちゃうよねぇ〜。
クックックッ。
あれ?
何でそんな青ざめた顔してるの?
あぁ、僕が元世にもどんな影響がでるか分からないっていったからか。
君は元世の存在だものね。
可哀想に。
異世界転生という現象の多用が、自分達の寿命をすり減らしてると知らずにのうのうと異世界ライフを楽しんで生きてる奴等。
そんな奴等の犠牲になる無罪な君。
か、わ、い、そ、う、に
どうにかして欲しいって顔だね。
でも残念。
僕はやる事やってこの状態だし、他にどうしようもできないしさぁ。
それに僕はただの【異世界という存在】
神が想像した世界を受け入れる器なだけであって、神様じゃないからね。
えぇ?お願い?
あのねぇ…変えられないものは変えられないんだよ。
それが運命なんだ。
君たち人類が何度だって捻じ曲げてきた
運命ってゆう路線。
それに反した事をするとロクなことがない。
そもそも僕の中に転生してくる人々はその運命ってゆう路線を捻じ曲げて入ってきてるんだよ?
まぁその行為で仮に、僕の中にある一部の英雄になって民衆を救ったとしてもだ。
自分を産んだ両親
自分を育てた環境
自分が生まれた故郷
自分の中の記憶
そして最終的には「自分という存在」すらも消滅させる危機に陥ってることにすら気づかない。
ほら、ロクなことがないデショ?
んー…
しかし、普段はなかなか表情を崩さない君のそんな焦った顔を見ることができたのはなかなか愉快だね。
そんなに僕の消滅を防ぎたい?
なに?……僕の消滅を防ぎたいんじゃなくて、元世を守りたいだけ?
なにか方法考えてどうにかしろ?
クックックッ…!
君はやっぱり正直で面白いよね!
姿もみえない初対面の僕の話を信じて、そんな必死な顔しちゃってさぁ。
僕だったら僕を信じないね。
凄く怪しいし、何より胡散臭い。
え?確かに胡散臭いって…ちょっと、正直に言われたら傷つくなぁ。
ま、いいさ。
折角あの君がそこまで思っているんだ。
気分を害する言葉はここらでやめておくよ。
で、だよ。
君が本当に元世の消滅を防ぎたいなら
僕が一つ策を提案してあげよう。
うん、僕がさっき言った通り運命は変わらないよ。
しかも僕にはどうすることもできない。
でも「変えられてしまった運命」を「元の運命に戻す」方法があるにはある。
どうゆうことか分かるかい?
僕はさっき、転生者は自分の運命を捻じ曲げて僕の中に入ってきてるって説明したよね。
それを元に戻すのさ。
そう、そうゆうこと。
元の世界に返してあげて欲しいんだ。
転生者達を、元世へね。
それが成功すれば僕の中の容量は軽くなって、元世にはなんの被害も出ずに済む。
簡単な話さ。
君は僕の中に入ってる迷子達を家に帰るように促す「送り人役」をしてくれればいい。
もちろん僕も協力はする。
この方法はまだ不確かな部分が多いし、君がなぜそんなに元世を守りたいのから知らないけど、そこを守るためにはやる価値のあることだと断言しよう。
あぁ…でもこの行為は本来君がするべき運命にあった事じゃないから、世界の運命はねじ曲げずとも君の運命は変わることになる。
さっき言った通り、運命の路線を捻じ曲げたら君にもきっとロクなことがない。
それを踏まえた上で、それでもやるって言うなら今から「息を止めたまま」目を閉じるんだ。
それが始まりの合図だよ。
あと……もう一つ言っておくけどね。
僕は助けてなんて言ってない。
大変なことにちょっと愚痴を言っただけ。
それを間に受けて、行動しようとしてるのが君。
君が自分の意志で選んで
君がやると言ってやることなんだ。
それが事実だからね。
もちろん……君が途中放棄なんて下らないことをしないって、信じてるよ。
…なーんてさ。
いやぁ嬉しいな!
本当にただの暇つぶしのお喋りなつもりだったんだけど、とてもいい時間だった。
え?まだやるとは言ってない?
ククッ、そうだね。
でも君はやるよ。
最初に言ったデショ?
君のことよく見ていたから知ってるんだ。
世界中の人にやめとけと言われても
君はやるって僕は知ってる。
あ、もうすぐ朝だね。
少し喋りすぎたね。
僕のおしゃべりに付き合ってくれてどうもありがとう。
君が僕を信じて、今から息を止めたなら、また僕から君に声をかけるから。
さぁ
目を開けて。
柴目 灯君。
ーーー頼んだよ
ーーーー僕にはもうーーが無いんだ




