王女様と柚子マーマレード(あるいはただの覚え書き)
さる王国王女の覚え書き。
柚子マーマレードの作り方。覚えておいて損はないけど、計量にお気をつけあれ。
冬至も終わり、お正月をちゃんと迎えて。
主な役割を終えたもの。
そんなもの、探せばいくつもあるのだろうけれども。取りあえず、目についてしまったのだから、仕方ない。
さる王国の王宮のお庭には、一本の柚子の木があります。ちいさな木だけどそれなりに年を経ているので、今年もたわわに実りました。
冬至にはお風呂に入れました。お正月に、なますに使いました。お雑煮にも。
残りは……ここからが、王女様の出番。柚子マーマレードを作ります。
ジャムと違って、マーマレードは手順が面倒くさいのですが、年に一度と思えば、それも醍醐味。今年も頑張ります。
柚子は綺麗に埃を洗い落とし、皮が汚いものは取り除きます。今回は五個。
布巾で拭いて、計ってみると、約二キロ。これは大事な事なので書き留めておきます。
ここからが、大仕事。
先ず、半分に切って実と皮を分けます。皮は水を張ったボウルに。実は別のボウルに。
これは、地味ですが大変な作業なのです。何故って、王宮の柚子は、「花柚子」。本柚子に比べてかなり小ぶりな柚子です。二キロと一口に言いますが、四十個以上あります。
その後、実の中から種を取り出し、白い筋を取りながら、実を袋ごと切り刻む。これも、それなりに地味で大変な作業。
そこに通りかかった次女のリッツに、皮が汚い柚子を預けようと思いました。
「これ、使わないから今度お風呂に入れて」
ですが、リッツは嫌な顔。
「えぇぇ。たったこれっぽっち渡されても困るんですけど」
でも、残りの奴は全部皮剥いてるし。
「中身だけ、使って下さいよ」
そんなわけで、中身だけ五個増えました。これ、試験に出るから覚えておいてね。
えーっと、皮を剥いて。どれだけ増えた? 200グラムぐらいかな?
「あ、王女。これも、これも」
声をかけた来たのは、王妃様。
「お正月のなますの、ほら、皮だけ使ったでしょ? 中身、一緒に使って」
もう、五個でも七個でも同じでしょう。
皮をきれいに取って、種も出して。
種は、少量の水(今回は100CCぐらい)で煮出します。柚子の種には高濃度のペクチンが含まれているので、お酒に漬けると簡単な化粧水が出来たりしますが、今回は全部マーマレードに使います。
煮出せたら実と汁に混ぜ。
さて、地味な作業は続きます。
皮ですね。大仕事。ひたひたの水で、三度、ゆでこぼし。(沸騰させた後でざるに開ける)
覚めたら、水を切って包丁で一ミリから二ミリぐらいに刻みます。(種と実を分ける作業よりは、楽)
やっと、地味に大変な作業が終わりました。
取り除いたものが、出ましたね。
不要な皮。筋、種。その重量を量ります。約、200グラム。
柚子2000グラム、不要なもの200グラム、差し引いた1800グラムの60%の砂糖と一緒に煮含めます。1080……一キロで良いか。
さる王国では、ジャムには氷砂糖を使っています。純度が高いから、雑味が少ないのだと思います。
一袋1kgでしょ? 80グラムぐらい、まぁ、良いかと。
弱火に近い中火で、砂糖が溶けて皮の回りが透明になるまで煮含め、かなり水気が多いけれども、覚めると固まると信じて、待つ。
はい。冬の寒さで、簡単に覚めました。
できあがり。
自信作を口にして。あれ?
いつもより、酸っぱい。
マーマレードとして、有りの範囲だけど。何でだ? ちゃんと計ったのに。
「美味しいですよ。今度、鶏のマーマレード煮に使わせて頂きますね。酸味があると、すごく柔らかくなるんですよ」
リッツが嬉しそうに言うから、まあ、良いか。
でも、自信のレシピだったんだけどな。
通りかかった王妃様にも味見してもらった。
「うん。いつもより酸っぱいけど、美味しいよ。さすが、王女」
やっぱり、酸っぱいんだ。
なんでだろ。ちゃんと計ったのに。
正解は、後書きで。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
手間をかけた柚子マーマレードが酸っぱかった原因は、中身が合計7個増えた+砂糖を80グラムケチったせいですね。(反省)
柚子マーマレード、手間はかかりますが、市販品とは違うと思います。濃度が。
ぜひ、お試しあれ